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202/206

食べたい時が、美味い時。

誤字報告ありがとうございます。

 師走はカレーヌ様もお忙しいのである。

「サンクスさんケーキやクッキーの予約がいっぱいなんだけど…ツワリがね。」

「あらあら。」

「それでケイトちゃんにバイトを。冬休みになったら、ずっとお願いすることにしたの。

さっき店頭にいたでしょ。」

「なるほど。それでミルドルはひとりっきりで領地でバイトなのね。ザック君はお姉さんから離れたく無いみたいだし。」


今頃、ミルドルは荒海に揉まれている事だろう。

ざぶんざぶんと。

沖のカモメも鳴いているって感じでね。


とは言っても大事な跡取りだ。みんなも気を使って危険が無いようにしてるみたいだ。頑張れ。


 今日はツワリで食欲がないカレーヌさまの為に、差し入れに来たのである。

「うう。エリーフラワー様がレイカのうどんで乗り切ったって言うから。私もお願いね。」

「わかってるわよ。カレーヌ様。材料持ってきたからね、作るわよ。

作り方は砂漠の娘さん達?覚えてね。

乾麺のうどんを用意いたしました…」


乾麺は時間通りにゆでてもらえばいいから、後は出汁と具なのである。

「美味しいわ!レイカ。この甘じょっぱいお揚げが。

そしてやはり私は生卵より、落とし卵と言うか、ポーチドエッグがいいわ!」

キツネうどんの卵いりに、天かすもいれてタヌキだ、化け比べだ。

気分はバケラッタ!である。


「私は肉うどんが良いですな。」とぺー爺さんがいい、

「私はごぼう天うどんがいいです。」と砂漠の娘さん達もいう。

「わた()はかきあげ。」

ビレイーヌちゃん、可愛いわよ。


「私はエビ天ですね。」

「レプトン、貴男も覚えるのよ。エドワード様もエリーフラワー様のために作ったそうよ。さあメモは取ってる?」

「はい、カレーヌさん。」

そうだよ。レプトンさん。

料理ができる男はカッコいいよ。

(エドワード様はうどんを打つところから始めたけど、とりあえずは乾麺で。)


実はレプトンさんはマメなのだ。

それに料理をすることに抵抗も無さそうだ。

メリイさんの結婚式の時も率先して走りまわっていたし。

…花嫁の兄としてみんなにお酒をすすめられて、へべれけになってたサードさんとは大違いである。


サードさんなあ。貴族の長男と言えばそんなもんなのだろうが、これから商会を引っ張っていかなきゃならないのだろうし。

他人任せの所があったらいけないよね。

いくら先先代からの優秀なブレーンが付いていても。


でも、ダンさんとサリーさん親子がいれば安心か。


「ねえ、レイカ。アンディの口聞きでサリーさん、モスマンシルクを手に入れられたらしいわね。」

天かすをいれたうどんをすすりながらカレーヌ様が言う。

「良くご存知ですね。」

「うん、こないだ会ったから。こっちからグランディに行くのは大変だからあちらから来てくれるの。」

カレーヌ様はサリーさんに色々と貴族社会のことを教えてるのだものね。


「サードさんは少し融通がきかないと言うか。殿様商売でぼんくらのところがあるからね。

良いご縁だわ。」


相変わらずの毒舌である。

レプトンさんは眉尻を下げるだけで何も言わない。

やはりドーン!と構えているだけの兄に思うところかあるのだろう。


「あとね、カレーヌ様。雑炊は食べられるかしら。

昆布や鰹節で出汁をとったらね、野菜をくたくたになるまで煮てね。そこにご飯を少し入れるのよ。」

とりあえず玉ねぎ、ニンジン、きのこやキャベツをくたくたに煮るよ。

良く煮えたらそこに、ご飯を少しいれた。

「鮭をいれたら鮭雑炊。卵いれたら卵雑炊。味付けは醤油や少しのお塩、みりんね。」


とりあえず作ってみる。

少し味見をどうぞ。

「ああー!これも胃に優しいっ!」

「そうでしょう、そうでしょう。キャベツや玉ねぎやニンジンは煮たら甘くなるから食べやすいよね。」

「リゾットとは違うんですね?」

「レプトンさん、リゾットは生米から作るの。

それに牛乳やトマトスープのお味かもね。

でもこれはね、私の母の味なのよ。前世のね。」

要は鍋の後の汁にご飯を入れたようなものである。


…母の味か。


小さい頃は卵かけご飯が好きだった。

もちろん、のりたまが好きな子供もいた。

納豆もね。

それと味噌汁。朝はかんたんに。

昭和の家庭ではそんな朝ごはんがあったりした。今ほど食育が熱心に言われてなかったからね。


 前世で、人生最後に食べたいものは何か?と言う話を友人としたことがある。


私は卵ご飯。と答えた。

ほかほかのご飯に卵を落としてまぜる。

そして醤油をちょっとだけ。

しかもね、卵を二つ使うの。卵黄のみで。

その濃厚な味。それだけでいい。


多分ね、小さいころ高熱を出したときに食べさせてもらったような…。

(残った白身は多分味噌汁に入ったと思われる。昔の人は食べものを粗末にしなかった。

魚の煮汁なんかも残ったら濾して、冷蔵庫に入れて次の野菜の煮付けに使ったりしてたね。)


「レイカ。ありがとう。お腹いっぱいになったわ。

ああココアも飲みたいわ。レプトン、お願い。」

「ええ、カレーヌさん。」

ニコニコしてレプトンさんが運んでくる。

「ね、レイカ。こないだのグラッシークッキーやチョコの話なんだけど。」

「あら。もうカレーヌ様の所に話がまわってるの?」

「ええ。ダンさん親子が張り切っているの。

それで頼まれてね、試作品のチョコレートを作ったわよ。お腹のところにピーナッツを入れてるの。」


ピーチョコかあ。

美味しそうじゃない。


おや、試作品をペー爺が持ってきたぞ。

「最近は私も包装を手伝っております。」

本当に商売繁盛で忙しいのね。

「あら!可愛い!」

ツヤツヤとした美しい光沢のチョコレート。

3センチくらいの板になっていてレリーフの様に盛り上がっている。その形はグラッシーである。

「お腹の所が盛り上がってるのね?」

「そそそ。良く出来てるでしょ。」

パキン、ゴクリ。

説明しながらもカレーヌ様はパクパクとチョコレートを食べている。

「レイカのうどんのおかげで食欲が戻ったわ!」

それは良かった。

「だから、二人分食べなくっちゃ!」


…ほどほどにね?




ククレカレーのCMだったかな。

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― 新着の感想 ―
レプトンさんは、料理をするのに抵抗(対抗ではなく抵抗ですよね)がないどころか、尽くしたい人なんでしょうね。 うどんと雑炊。胃に優しいけど、私は乾麺をゆでるにおいがちょっとダメでした。 出来上がったもの…
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