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新しい年があけたよ。とりあえずおめでとう。

 年も明けた一月の五日。

ちりりりん。

猫カフェのドアが開いた。


カレーヌ様がひょいと顔を出された。

ひょっこりはん?


「やっほー!レイカ。去年はお世話になりました。

大量注文もありがとうね。 

こちら新年のご挨拶とお礼。」

カレーヌ様がキャンディの瓶詰めをくれたよ。


「あら、カレーヌ様!そんなご丁寧に。

まあ、そちらはお母様ですね、

いらっしゃいませ。」

カレーヌ様に良く似た綺麗な貴婦人が後ろで微笑んでいらっしゃった。

こないだのコンサートの時チラリとお顔を拝見したけども。

やはり高位貴族のご婦人という感じがする。


護衛かな。ペー爺さん付きだ。ビレイーヌちゃんを抱いている。

あら、ビレイーヌちゃん、寝てる?


「貴方がレイカ様ですね。

お噂は常々。カレーヌが大変お世話になりまして。」

頭を下げられるカレーヌママ。


「いいえ。こちらこそお世話になっております。カレーヌ様、もうお母様と暮らせるの?良かったですね?」

「そうなのよー!嬉しい!みんなのおかげよー!」


目を潤ませて抱きついてこられた。


よーし、よしよし。良かったね。


「まあ、本当に良いお友達なのですね、カレーヌがこんなに素を出して甘えてるなんて。」

口をおおって驚くカレーヌママ。


目がうるんでいる。


「この子は同性のお友達があまり出来なくて。

心配していたんですのよ。

まああ。本当に仲良しですのね。」


「うん、だってレイカはお菓子のヒントもくれるし。おかげで大儲け。それでお母様を引き取れたんだもん。」

「いやいや。だってほとんどは王妃様ですよ。

私はそれに補足をしてるだけで。」

「王妃様に意見を言える貴女がいるからこそよー!」


それもそうか。


「え!まああ!そうなんですの?」

「そうよ、このレイカは王妃様のお気に入りなの。」

「まあああ。」

……ハードルを上げないで欲しいなあ。


奥からメアリアンさんと母も顔を出した。

「ようこそ。カレーヌ様のお母様。レイカの母でございます。」「義姉のメアリアンですわ。」


「ま、まあ!これは!ご母堂様に巫女姫様!」


ほう。メアリアンさんのことは知ってるのか。

有名人だからな。

「あら、レイカのお母様にメアリアンさん。

お久しぶり!

おかげ様で母と暮らせそうなの。」

「良かったわああ。」

つられて半泣きの、人が良い母。


「ううん。私は何も。お母上をご招待されたリード様のお力と、この国を守る神獣様達のお力ですわよ。」

微笑むメアリアンさん。



すっ。


そしてアンちゃんが影から姿を現して深々と頭を下げた。


「――ご無沙汰しております。奥方様。」

「アンディ!あ、あら。立派になって。」

目を見開く公爵夫人。

硬い表情のままアンちゃんが、

「宜しければ奥へいかがですか?お茶でも。」

と言えば、

「うん、ありがとう。でもね、これからまだエリーフラワー様のところにも回るから。」

カレーヌ様はお断りになった。


ほお。本当に忙しいのだろう。私達に遠慮するカレーヌ様ではない。


「左様でございますか。」

アンちゃんは消えて行った。


うん、なんか苦手意識があるんだろうな。慇懃無礼だぞ。


「エリーフラワー様のとこに行かれるなら、キューちゃんに迎えに来て貰えばどうかしら?」

母が明るい声で言う。

「ねえ、ビレイーヌちゃんも寝てるみたいだし?」


カレーヌ様が青くなる。

「い、いいえ。こんなことの為に神獣様を呼ぶのはとんでもないですわ。」

「そうお。」


母が指輪を擦り合わせてキューちゃんを呼び出そうとするのを止めるカレーヌ様。

そうだよ。タクシーじゃないんだから。

「カレーヌ様、もうお母様の移住手続きは終わったの?」

「うん。あのコンサートの2日後ね。お兄様と手続きに行ったら、奥からレプトンさんが出てきてね。

2日間でものすごーくやつれていたけどさ。

手続きを手伝ってくれたのよ。」


あら。


レプトンさん、愛しいカレーヌ様のチカラになってあげたのね。


そこでカレーヌ様は眉を顰めた。

「フィフィ先生。相変わらず凄いわね。ちょっとレプトンさんが気の毒になったわ。

気持ちはわかるだけに。今度はもう少し優しくしてあげようかしら。」


あら。


「リード様にもお骨折りいただいたわ。ほんとあちこちに感謝している。お父様は納得してないかもだけども、どうせこの国には入れないわ。

連れ戻しにはこれない。」


カレーヌ様はすっきりとした表情になった。


「レイカ、またね!今度サンクスさんケーキの感想を聞かせて?」

「うん、わかった。」


待たせておいた馬車に乗り込んでカレーヌ様は出て行った。

新春の柔らかい日差しが外に満ち溢れている。


「良かったじゃないの。」

いつのまにかアンちゃんが横に立っていた。

「うん。」


「ま、奥方様にしろ、ジャスティン若様にしろ、いつまでも俺は馬番の子で、カレーヌ様をさらって逃げようとしたやからなのさ。

なるべく関わりたくないだろうね。」

「あー、そう言えばそう言うこともあったね。」


アンちゃんは目をまるくした。


「あれ、レイカちゃんは気にしてないのネ。」

「私もカレーヌ様も忘れてるよ。というかカレーヌ様、キッパリと断ったじゃん。」


「そうか。」

アンちゃんはくしゃっとした顔で笑った。


「グジグジ考え過ぎか。」

「うん。」

アンちゃんは口笛を吹いてどこかへいった。


まったく繊細なんだからなあ。

そんなのいちいち考えてたら胃潰瘍になっちゃうよ。

まあ、確かにヴィトー家の、奥様やお坊ちゃんはアンちゃんを元使用人だと下に見るからも知れないのか。

(と、アンちゃんは考えている。)

高位貴族としての意識が骨まで染み込んでいそうだからね。

くだらないなあ。


ま、ここに入って来られたのだからお母様も根は悪くないんでしょ。


不快なことは深く考えない。

それが私のモットーである。

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