教えて下さい。恋とはどんなもの。
私はレイカ・ハイバルク。(一応伯爵夫人)
どこにでもいる21歳の若妻である。
ブルー・ウォーター公国に夫のアンディ・ハイバルク伯爵ことアンちゃんと、ランとアスカという娘と住んでいる。
ただひとつ違うことは、奥様は転生者だったのですー。
と懐かしいTVドラマ風にやって見ましたよ。
これまでのことは、思いこんだら、思い込んだらの後、グランディ王国物語、続グランディ王国物語に詳しいです。
読んでくれると嬉しいなあ。
まあ、今までをざっくりまとめると。
○私は前世日本人。50代で亡くなった。
そしてグランディ王国の王妃様もそうである。
前世は大衆食堂の女将だったので、日本の味を求める王妃様にご飯を作ったらお気に入りになる。
会員制レストランを開く。
○何故か元オネエの王家の影のアンディと結婚。
ブルー・ウォーター公国に引っ越し。
虹のじゃなくて、二児の母となる。
双子の娘達だよ。可愛いよ。今、ひとちゅ。
そして、三人目の転生者、メリイさんと出会う。
ついでに龍太郎君と言うドラゴンとも知り合い、
彼も転生者だった。何ですとー!
(この辺は「ずっとあなたが好きでした〜に詳しいよ。)
○なんのかんのと色々あって才女のエリーフラワー様、毒舌のカレーヌ様、麗人のヴィヴィアンナ様と仲良くなる。
そして、父と母が引退してウチの近くに移住してくる。
夫のアンディはそこそこ強い忍びで出世して伯爵になっていた。
そのアンディこと、アンちゃんは、若い忍びに慕われていたり恐れられていたりする。ついでに、シンゴという若者を養子にした。
まあ、こんなところだろうか。
で、ここは父母の家である。
「レイカ叔母さん、オレ、恋をしたかも。」
いきなり色ボケ発言をしているのは、甥っ子のミルドル12歳だ。
私の兄、サンド・モルドールの息子で、来春からここのブルーウォーターにある、ブルーウォーター・ゴージャス学園に入学することに決まっている。
それで祖父母の家であるここから通うことになっているのだ。
今はまだ10月の末だが、早めに慣れるために引っ越してきた。
「へえ。いきなり面白い事をいうワね。今日は学園に見学に行ったんでショ。」
この黒目黒髪の青年が我が夫アンディである。
コーヒーを飲みながら、ジロリと見てくるが、
オネエ言葉を使うときは比較的安全なのである。
「あ、はい。アンディ様。エドワード様が一度見にくるようにと、おっしゃって下さいました。」
エドワード・ゴージャス様。
ブルーウォーター・ゴージャス学園の創立者である、エリーフラワー・ゴージャス様の夫である。
ちなみに私とエリーフラワー様はマブダチである。
二人にすぐ、紹介しておいたのだ。
「ふふん。ボウズ。敬語を使えるようになったなあ。以前は傍若無人だったのにネエ。」
「す、すみません。アレから更に、黒魔さまのご活躍を聞きました。すごい人なんだなあと。」
アンちゃんは黒い悪魔とか、黒魔とか呼ばれた、三羽烏と言われた伝説の忍びだったのだ。
名付け親はグランディのルララ王妃様だが、恥ずかしいね!
「そおねえ、あの時ミルドルは生意気盛りだったもの。いきなりアンディさんに手裏剣打ってみせて!だったものね。」
母がダージリンを啜りながら言う。
「もおお、お婆ちゃん、やめてよ。」
「で、誰に恋したのかい?」
父が優しく聞く。孫の恋バナに興味があるのだな。
「はい、今日学園に下見に行ったんです。
受付でレイカ叔母さんの名前を出すと、エドワード様はいらっしゃらなかったんですが、若くて赤茶けた髪でそばかすのお兄さんが出て来てくれました。」
「ああ、ハンゾーくん?」
「そうだな。ハンゾーだ。」
ハンゾー君は若い忍びである。今日は学園の見回りをしてたんだな。
「話は聞いてるよ、見学に来たんだね。と、言って案内してくれたんです。
まだ、建設中なところもあるけどね、あちらが初等科で、こちらが次の春オープンする中等科だよ、と。」
体育館や、図書館を見て回って。食堂でソーダをご馳走になったそうだ。
「美味しかったです。アイスとさくらんぼが乗っていて。」
ああ。王妃様好みに開発したメニューだ。
「それでひととおり見て、お手洗いに行こうとしたんだけど。初等科にしかなくて。」
まあ、中等科は工事中だからね。
「トイレを済ませて戻ろうと角を曲がったら、
やっばあああーい!遅刻遅刻!
とパンを口に咥えた
女の人とぶつかったのです。」
「……。」
ベタすぎて声も出ねえ。
「すぐにハンゾーさん?に助け起こしてもらったんですけど、そのお姉さんが。
大丈夫かい?見知らぬ少年!
と声をかけて来たんです。
覗き込んできた顔がめっちゃ綺麗で。赤縁メガネ越しの青い色の目なんか、もう。」
ん?メガネに青色の瞳だってえ?
「良いニオイがして、白っぽいブロンドに白い肌で。…ぶつかった拍子に俺の上に乗ってきて、
柔らかいし、そのあちこちが。」
赤くなるミルドル。
えっ。ラッキースケベだったのかい?
「右耳にでっかいハートの形のイヤリングが揺れていました。
そして胸には、おおきな天眼メノウ?目玉っぽい石が下げられていて、僕の心もお見通しだ!ってかんじで。
ああ、シビレるう!」
そのファッションセンスってさあ!まさか?!
それにシビレるう!って昭和を思い出すぞ!
「すると廊下の向こうから、メガネの男の人が、
【フィフィ先生!いくら三時限からの授業と言っても!
ちゃんと間に合うように来てくださいよ!
私の理科の授業はもう終わりましたよ!】
と、困り顔で現れました。
【いっけなーい♫アラエル先生!すぐ行きます!】美しいお姉さんは風のように走りさりました。」
やーはーりー!
フィフィ・ヤーン先生かっ!
「お、おまえ。」
アンちゃんも、びっくりだ!
「その人が落とした?イヤリングを拾ったんです。」
それはハートの形をしたパーツが付いていた。
「きっと左耳のを落としたんですね。」
右耳にもハートが揺れてたと言ってたな。
「なんか、オレの心も撃ち抜かれちまって。」
「…そうか。言いたいことは色々あるが、フィフィ先生は中等科でも国語を教えると聞いている。
入学試験に受かるように良く勉強するんだぞ!」
「はい、アンディ様。」
「そうよう、ミルドル。最低限の学力がないと、いくら知り合いの学校でも受からないわよ。」
「わかったよ、おばあちゃん。
入学したら、このイヤリングを返すんだ。
それまでお守りにする。」
お、おう。
イヤリングを見せてもらったら、裏にバッチリ名前が。エメリンと。
うん、名前を書いてるのか。初等科の生徒にはいうよね。持ち物に名前を書きなさいと。
前世。小学校に入学するとき、算数セットに名前を書くのは親がどんなに大変だったか。
何と言っても、おはじきだよ!おはじき!
アレに名前を書くってさあ!
我が子の時代にはお名前シールが出てきた。
それをちまちま張ったものだ。
「ああ、本人のに間違いないわ。フィフィはペンネームだものね。
本名は、エメラーダ・パアル・ダイアーン、
通称エメリンよ。」
「そうなの?レイカ叔母さん。」
頷いて、アンちゃんと顔を見合わせる。
ミルドルはあのロージイを見て美人だと言っていた。
その身内で良く似たフィフィ先生にも一目惚れか。
うーん。まあ、とにかく勉強頑張れ。
天馬ルミ子さんの、「教えてください神様」の歌詞から来ています。タイトルのネタ。




