失われた食材をもとめて。
師走も中旬なのである。そこそこに忙しいのである。
ぽぽぽぽーん
(某震災の時のCMではない。)
アンちゃんを探していたら、トランポリンでジャンプしているではないか。
ぽぽぽぽん、ぽん。
(こだまでしょうか。いいえ。)
かろやかなジャンプに宙返り。
いつ見ても黒豹のように美しい身のこなしだ。
「アラァどうしたの?レイカちゃん?やだワ。ワタシに見とれちゃった?」
「ウン。」
隠す事も無いので即答する。
「もうっ!何を言うのよ、昼間っから。照れるじゃ無いの〜」
えええ?何か昼ではまずい発言をしたのかしら。
「ウン。」と頷いただけよ。
「ヤーダー。ワタシが誰よりもカッコよくて良い体をしてるだなんて。」
頬を染めてトランポリンから降りてきた。
そんな事は言ってないけど。良い体ではありますね。
「もしかして。年末のコンサートでまた踊るの?」
「それがね、打診はされてないのよ。だけどさ『アンディ?踊りなさいよ。出来るわよね、オホホホ。』っていつおっしゃられても良いようにね?
調整したり振り付けを考えるてるの!
備えあれば熟れる梨なのよ!」
それ、備えあれば憂い無しでは。
「パーパ!」「おとさん!」
娘達が来て一瞬にぴょんぴょん跳ねはじめた。
平和である。そして身体能力が半端ない。
さて、ここは忍びの詰め所のトレーニングルームである。みんなが遠巻きに見ているぞ。
「アンディ様。」
「おや、ゲン・ノジョーか。お子さん生まれたんだろ?おめでとう。」
「はい、先日は結構なものをいただきまして。
早速仕立てることに致しました。」
頭を下げている。
「それに龍太郎様のウロコのおかげでオ・ツナもみるみる回復しまして、もう退院してお屋敷の自室に戻っておりますよ。」
「良かったな。龍の字の奴、子供は男の子だから絡まないって言ってなかったか?」
「いえいえ。」
手を振る
「龍太郎様は良く見にこられますよ。ヘエエ。可愛いジャン!と言って。」
あら。実は子供好き?
「そうだ、メリイさんの所にサードさん来る?」
「はい。昨日も。」
「お正月の材料に色々欲しいのよ。ダイシ商会に頼もうと思ってたけど。グローリー商会の方が早いかしら。」
そう、色々頼もうと思って、ダンさんに口を聞いて貰おうと思ってアンちゃんを探していたのだった。
「うーん、レイカさん。メリイさんのところに遊びに行かれたらどうですか?
きっと喜ばれますし、サードさんは明日までいらっしゃいますよ。」
「あっハイ。じゃあ行くわ。」
昆布はグランディの名産だ。在庫切れだから取り寄せたい。鰹節はエリーフラワー様が復活させたから、こちらで手に入るけど。
あとは…うーん、ダンさんにだったらソバの話をしたらわかるかな?と思ってたけど…。
でもまあ、メリイさんに会いたいし。
大福をこさえて会いに行くか。龍太郎君にも約束したしね。
というわけで小豆を炊いたりしよう。
「明日、会いに行きますわ。連絡してね。
サードさんにお会いできなくても龍太郎君に約束の大福を持って行く、と。」
ふうっ。
アンちゃんのため息が聞こえる。
「レイカちゃん、私も行くワ。
ゲン・ノジョー。サードさんに伝えて。
そしたらあのタヌキもくるでしょ。
いっぺんで話が進むでしょ。」
口元を引き攣らせながら、アンちゃんは言うのだった。
その通りでした。
「アンディ様!お久しぶりでございます!今回ウチの商会に御用とか?」
満面の笑みのダンさん。
ここはメリイさんのお家の応接室である。
アンちゃん大好きの圧が強い。
流石のアンちゃんもタジタジである。
「ああもう。他人んちで仕切るんじゃないよ。
サードさん、サリーさん、お久しぶり。
式の準備は進んでるか?
メリイさん、体調はどうだい?
龍の字、先日は世話になったね。レイカさんが大福をたんと持ってきたから、食べてくれ。
オ・ツナ、無理して顔を出さなくていいよ。ゆっくりしてなさい。
ところでハイドは留守か?」
アンちゃんは気配りの人である。
オ・ツナさんは頭を下げて引っ込み、龍太郎君は飛んできてアンちゃんの肩に乗った。
「ええ、アンディ様。ハイドはリード様に呼ばれてるのです。」
メリイさんが眉尻を下げる。
「ソウダヨ。こないだマタ、リードサンに化ケタデショ。
ソレヲ聞いたリードサンが衣装をクレルッテ!」
へええ。また次の機会があるのかしら。
「ワアイ、大福。ウン!まだ柔らかいネ。食べル!
ソウダ、産婦さんには餅がイイって婆ちゃんが言ってタヨネ!オ・ツナさんに分けてアゲヨウ。」
それは昭和の常識だよ、龍太郎君。
やはり爺婆に可愛がられて来たんだね。
龍太郎君は片手にひとつずつ、大福を持って飛んで行った。早速渡しに行くのか。
三十個持って来たけど。
龍太郎君はいくつ食べるつもりかな。
産後に餅ねえ。今は乳腺炎になるとか詰まるとか言うけど。
小豆入りだと防いでいい、とかも。でも低栄養の人とかはお餅推奨らしいし。
オ・ツナさんはどちらかというと、いや、はっきりいうとガリガリタイプだから、お餅はいいかもしれんね。
放っておこう。
さて本題だ。
「あのう、ダンさん。こちらが欲しいもののリストなんです。」
「ほうほう、拝見いたします。なるほど。
大体のものが揃いますよ。このクワイとか八頭ですね、マナカ国にあります。
それから蓮根もあちらで沢山栽培されてます。」
ありがとう!以前いた、マナカ国の前世日本人(多分福岡出身)のお人よ!あなたがもたらしてくださったのですよね。
「そうなんですか!メリイさん、おせちができたらおわけしますね。」
「まあ、嬉しい。ウフフ。王妃さまのご依頼なんですか?おせち。
お裾分けしていただけるなんて嬉しいですわ。」
「あと、ダンさん。
ソバって聞いたことありますか?どっちかというと痩せた土地に生えるんですけど。」
ちょっと望みうすいかな?
九州はソバよりうどん文化だものね?
「…うーん、聞いたことがあるような、無い様な?
」
「どっちだよ。」
アンちゃんが突っ込む。
「私の記憶が正しければ…」
おや、鹿○丈史?
「私の灰色の脳細胞が…」
エルキュー○ポアロ?
ぶつぶつと頭を抱えるダンさんだ。
「うーん、うーん、なむさんだ〜」
一休さんだろうか。
(たった二文字を伏せ字にすると、わかりにくくなるのでしない。)
頭を撫でまわして考えるダンさん。
ポクポクチーン!
「はい、ひらめきました。多分それはメンドン国の国二つ向こうにある、コハク国にあったかと。」
「コハク国かあ。グランディとの付き合いはあまり無い所だもんな。遠すぎて。」
アンちゃんは腕組みをするのだった。
失われた時をもとめて。という小説があったような。
読んだことはありません。




