何で、なんで、なーんで?そんな間の悪さ。多分ツラいだけ。
誤字脱字報告ありがとうございます。
十二月になった。
母の家に行くとミルドルが父母に捕まっていた。
「えっ。また今週末と来週末に、手伝いにいかなきゃなの?」
「ミルドル。実家の手伝いは必要よ。カニ缶を年末のプレゼントや、帰省の時の手土産にする人がいるんですからね。
お友達と一緒にお手伝いをなさい。」
「そりゃバイト代がでりゃ、ザックは喜ぶだろうけどさあ。」
ミルドルはため息をつく。
「リッキーとドンは年末のコンサートの練習で忙しいし。」
ああ。またやるのか。年末のコンサート。リード様やアキ姫さまや少年合唱団が歌うのだな。
「ねえ、あの女の子は来るの?」
「ケイト?来ねえと思うよ。カレーヌ様の工房も忙しいらしいし。サンクスさんケーキやクッキーの製造や売り子のバイトの募集が張り出されてたからさ、学校に。あっちに行くんじゃないの?」
「あら、じゃあ男子のみなのね、では漁船に乗ってもら……」
「お祖母ちゃん、聞いてみるから、ね?ケイトに。
ちょっと待ってね?」
慌てるミルドル。走り去っていった。
女生徒がいれば漁船乗りはナシだからね。冬の海は辛かろう。
「お義母さん。カレーヌ様の所の時給は1225ギンでしたよ。」
良く知ってるな、アンちゃん。
(ちなみに1ギンは1円と同じです。)
「アラ。じゃもう少し色をつけないとね。都でケーキ売るより倉庫作業だから大変だもの。カニ缶のラベル付け、箱詰めに、包装。
配送先の伝票チェックとかお願いするつもりだけど。」
「そして時給も高くするし、メシもつけるし、泊めてあげるんでしょ。
ザックは喜ぶでしょう。それにアイツは実家に帰らない方がいいんです。学費が足りなくてバイト三昧と思わせておいた方が。」
ザック君。おウチ大変なんだものね。
下手すれば犯罪に巻き込まれるかもしれないとか。
何とか、早めに手を切れないかな。
「それよりレイカちゃん。今度の週末。学校の休みの日ね、エリーフラワー様がカレーヌ様とエメリンを約束通り対面させるんだって。」
「えっ。」
何でまた。
「こないだの式で約束してたでしょ。」
真面目だな。
「でね、」
うわあ。嫌な予感がします。
「レイカちゃんにも同席してって。」
何で、なんで、なーんで??
「とっても嫌。…同席したくないです。」
面倒くさいことこの上なしだよ。
「うーん、気持ちはわかるけど。」
アンちゃんも困り眉だ。
「エリーフラワー様とカレーヌ様から是非連れて来て欲しいと頼まれてるのよ。」
「まあ。レイカ。行ってきなさいよ、お友達が困ってるんでしょ。」
うーーん。
「でもね、私はカレーヌ様の味方しかしないけど。何かお役に立てるかな。」
どう考えてもエメリンが不利である。
エリーフラワー様だって、カレーヌ様の味方でしょうに。
「ええとね。こんな事を言うのはなんだけど。」
アンちゃんが頭を掻く。
「エリーフラワー様もエメリンもどっちかというと激情型でしょ。以前よりは落ち着いてるけど。」
「うん。」
「で、カレーヌ様の口撃は結構、キツイ。」
それは否定しない。
「彼女がエメリンの心をグサリと折る展開なんでしょうけどね。
でも、エメリンの言動は読めないし。語彙力は素晴らしい。
痛み分けになるかもね?」
それで一件落着となるのかな。
良くある少年漫画のように。
ボコボコに殴りあった後、
「へっ、良いパンチ持ってるじゃねえか。」
「ふっ。オマエもな。」
といって親友になると言う展開になるのであろうか。
(いや、そんなことはない。反語的表現。)
「でもネ。二人とも、もしかしたらエメリンも。レイカちゃんが好きなのよ。ストッパーにはなると思う。
だからご両人ともレイカちゃんの同席を望んでるワケ。」
はああああっ。わかったわよ。
「じゃあ、せめてキューちゃんを忍ばせて。エドワード様に頼んで。」
流血沙汰になったら物理的に離してもらおう。
「それから、もちろんアンちゃんも来るんでしょ。姿を消していてもいいから。同じ部屋にいてね。」
「…うん、わかったワよ。」
しかし、エメリンはまだレプトンさんに未練があるのかなあ。
やれやれ。
ブラックビスケットの「タイミング」から。




