三すくみか、三位一体か。
「ネエネエ!王妃サンは今日泊まって明日カエルノ?」
「ええ、龍太郎君。その予定よ。」
「フウン。アンディサンが護衛?」
「そうだね、もう1人シンゴか、ハンゾーも同行させるか。セピアはもうあっちに行ってるし。」
アンちゃんが腕組みをする。
「ジャアサ、ジャアサ!
オイラも行くヨ。レイカさんも来なよ。そのままシードラゴン野郎の所に行コウゼ。」
「あら、まあ。早速なのね?」
王妃様が食後のデザートの、大学芋を召し上がりながら目を丸くなさる。
ウチの大学芋はサラサラの蜜を上からかけるやつではなく、ガチに飴状に、固くしたものを絡めてます。
300グラムの芋に大さじ四杯60グラムの砂糖を使ってます。
歯にくっつくタイプだね。
黒ゴマ入りだよ。アクセントになってます。
「あー、レイカちゃん。大丈夫?お義母さん、悪いけど子供達を頼みますね?」
アンちゃんがチラリと母を見る。
「わかったわ。アンディさん。」
おや、私を置き去りにして話は進んでいくが、まあ、いいでしょう!
泣く子と王妃様と神獣には勝てないこの世界。
「ねえ、龍太郎ちゃん。」
「ナニ?オッカサン。」
「龍太郎ちゃんが行くならメリイさんも行くの?じゃあ、キューちゃんに頼んだら?その方が楽でしょ。」
「ア、ソウダネ。パイセンも呼ブカ。」
「ホホホ!三大神獣の揃い踏みね!お金取れそうだわ!」
王妃様ったら。何をおっしゃるの。
「怪獣大作戦!ッテ感じダネ。東宝かナンカの映画ミタイ。」
良かった、龍太郎君は怒ってないか。
「ねえ、龍太郎ちゃん。こないだ海竜さまのお話を聞いてたんだけども。」
「ウン?」
「海竜さまは石とかを食べるのよね?」
「ソウダネ、オッカサン。」
「じゃあ、ウチのルビーを差し上げたらどうかしら。」
「エッ。そんな勿体ナイ!アイツにはズリで充分ダヨ。」
「ズリって何?」
「王妃サン、鉱山デ宝石トカ掘った跡の残土とか原石の削りカスとかダヨ。小さなカケラも入ッテタリスルネ。」
「そういえば、水晶を鉱山跡のズリから拾って来た先生がいたわね。生物を教えていた。」
「ソウダネ、一ノ瀬。田村先生カ。原石が好きだったヨネ。」
いきなり思い出の高校生ムーブになる二人だ。
一ノ瀬はメリイさんの前世の名前だよ。
みんな、覚えてるかな?
「フム。じゃあ炭鉱のボタ山のボタのことね。」
流石、九州出身の親をもつ王妃様である。
そっちに発想が行ったか。
「青春の門」を思い出すわー、ボタ山。
山○ハコの歌。
しんしゅけしゃん、オリエも大人になりましたってか!
「ソウソウ。王妃サン。その発想でアッテルヨ。
ダカラサ、パイセンにオッカサンの所のルビー鉱山のズリを運んで貰おうヨ。
きっと喜ぶゼ、アイツ。」
「まあ、そう。じゃあサンドに連絡しておきましょう。ある程度まとめて置いてってね?」
そんなもの喜ぶかなあ。
……喜んでいる。
「美味い!うまい!ウマイ!」
どっかの柱のようである。
「この時々入ってるルビーの小粒が!ジャリジャリとした本物の歯応え!」
グルメレポートはいいが歯が欠けないのだろうか。
「それに白狐殿の加護もあって素敵なスパイス!」
フン!とキューちゃんが横を向く。
つまり。
私達を運んでくれる前にキューちゃんはモルドール領に行き、
スゴゴゴッ!
吸引してズリをお腹に入れたのだそうだ。
「大丈夫?お腹壊さない?」
サンド兄がオロオロしてたとは付き添っていた母の言葉である。
その後、私とアンちゃんを連れてメリイさんと龍太郎君とハイド君と合流。
(母も流れで付いて行く事に。子供達はショコラさんとオー・ギンさんに頼んだよ。
キューちゃんと龍太郎君のおさえになるからね。)
王妃様をリード様の所にお迎えに行った。
「フフ、レイカさん。お久しぶりです。」
うわあっ、ヴィヴィアンナ様がお顔を出してくれたよ!
「ヴィヴィアンナ様っ!お元気でいらっしゃいましたか!お会いできて嬉しいですぅ!」
「相変わらずだね、レイカさん。私もいるんだけどね。
母上を頼みますよ。」
苦笑されるリード様。
美貌のお二人に見送られてグランディに出発だ!
そして、グラッシーを見て、キューちゃんがズリを口から出したのである。
ドドドド!
「わっ、白狐殿、これは?えっ?土産!」
驚くグラッシー。
心なしかキラキラ青く光っているようなズリというか残土。
「あ、なんか美味しそう。今まで海の土ばっかり頂いてましたからね、山の土はお久しぶりですわい。」
そしてジャリジャリと頬張るグラッシー。
「ふうう。結構なお味でした。」
「良カッタな。シードラ野郎。レイカさんの実家のモノナンダヨ。」
「龍太郎さん、私はグラッシーですって。
おお、お久しぶりです。名付け親殿。
お会いしたかったんですよ。」
「アッハイ。こんにちは。元気そうね、グラッシー。」
ずいいっと私に寄ってくる。
碧い目は丸くて可愛いよ。やはりウミガメの目に似てるな。まぶたが少しかかって眠そうな感じ。
ウミガメ。シーパラダイスで良くみたな。ゆっくりと泳いで可愛いかったわ。
「可愛いねえ。グラッシー。」
「エッ。」
目を丸くする龍太郎君。
キュー?
目を大きく見開くキューちゃん。
「いやだよ、この人は。照れるじゃないの。」
ヒレで顔をおおって照れるグラッシー。
あら、赤くなってるわ。やはり神獣も赤面するのね。
そうだ。
足元に落ちてる比較的綺麗な石を拾って、手のひらに乗せる。
「食べる?」
「レイカちゃん!危険よっ!」
アンちゃんが叫ぶ。
「大丈夫よね、ハイ。」
パクリ。
私の手から石を食べるグラッシー。
あら、餌付け体験成功?
グリグリ。
私の手に頭を擦り付けてきたわ。
可愛い。懐いてるじゃないの。
「うっうっ。」
何故泣く?
「わ、私に食べさせてくれる人間なんて……今までいなかったでござんす。
みんな私にお宝をねだるばかり。」
「そうなの?ハイ。」
次から次に食べさせてみる。
「うう。美味しい。」
「レイカ、コレなんかルビーの原石のカケラが混じってない?」
母も良さそうなのを拾ってくれる。
「そうね、ハイ。」
「うっわ、流石にレイカさんと御母堂様だ。」
ハイド君の声が掠れている。
「本当にすごいのう。怖くないのかえ。」
王妃様、冷や汗かいてるんですか?
「龍の字。危険じゃないのかっ!」
「大丈夫ダヨ、アンディサン。アイツ、ナマモノ食わねえカラ。」
十個くらい食べさせた所で終了だ。
「フウ。満足、満足。
コレを原料にして神殿を建てますわい。」
お腹をポンポンと叩くグラッシー。
わあ、膨らんでるう。
「そうなんだ。頑張って!」
「ネエ、名付け親殿。」
「レイカでいいわよ。」
「レイカさん、何の神殿がいいかリクエストありませんかい。
金でも、ルビーでも、サファイアでも。
ご希望にお答えするのは、やぶさかではないでござるよ。」
「えー、特にないなあ。
あ、そうだ。普通に大理石では?盗難の心配もないでしょ。」
「欲がナイネエ。」
龍太郎君が飛んできて私の肩に乗った。
「大理石ならアンモナイトの化石が含まれたりするのかしら。」
メリイさんがつぶやく。
そうか、メリイさんは化石や恐竜好きだったな。
「化石かあ、私も割と好きですよ。」
「なるほど。腹ん中で化石は生成できませんが、エエのが海底にありましたら、嵌め込みましょ。」
「うん、楽しみにしてるね。」
そして私達はグラン湖を後にしたのだった。




