世紀の?結婚式。披露宴編①
誤字報告ありがとうございます。
ホテルの大宴会場に入る。神獣の間だ。
あれ?確か聖龍の間と白狐の間と二つあったはずだが?
わっ、ぶち抜かれてひとつになってる。
「王妃様、リード様、アキ姫さま。本日はご来席を賜りまして、誠に光栄でございます。
それからアキ姫さま、先程は合唱団の指揮もありがとうございます。」
ネモさんがロイヤルズにあらためてご挨拶&お席へのご案内に来た。
「では、王妃様、リード様。アキ姫さま。お席はこちらでございます。」
「オホホホ。レイカと一緒よね?」
あー、やはり指名されたか。
「ええ、もちろんですよ。ハイバルクご夫妻もご一緒に。それからアキ姫さまはディックさんとご一緒にお座り下さいませ。」
おや、ディックさん。いたのか。
「わ、私のようなものがこんな席に。」
ディックさんの声が震えている。
「だってもうお二人はご婚約なさったと伺っておりますよ?」
ネモさんがニッコリと微笑んだ。
なんと。いつの間に。
「オホホホ!そうね。アアシュラ様から聞いていてよ!おめでとう。」
「王妃様、ありがとうございます。」
アキ姫さまがふんわりと微笑む。
「うん、大層お喜びだったよ。おめでとう。
ディック君、第一騎士団の立ち上げ順調みたいで嬉しいよ。コレからもこの国に尽力してくれたまえね?」
「はい!リード様。」
そこへそっと寄ってきたのは。
「王妃様、ご無沙汰しております…」
「まああ!アリサ!」
「アリサかあさん!」
ネモさんの母君のアリサさんだ。
リード様が少年のような笑顔を見せる。
乳母だったアリサさんのことをアリサかあさんと呼んで慕ってるんだな。
「アリサ、マーズの結婚、本当におめでとう。」
「勿体ない事ですわ。これで肩の荷が降りました。」
それを皮切りに色んな人が王妃様とリード様に挨拶に来られた。
あら、エリーフラワー様にカレーヌ様も来られたわ。
王妃様達の後こちらにご挨拶をしてくださる。
「レイカさん!アンディ様、おめでとう!
サマンサさん綺麗だったわ!」
「ええ、やはりモスマンシルクは永遠の輝きね!」
「お二人ともありがとう。」
ほとんどこちらが花嫁の親状態である。
(父や母は離れた所で見ているだけだ。まあ気持ちはわかるけど。)
そして、
「王妃様。フィフィ・ヤーン先生がご挨拶をと。」
ネモさんがエメリンを連れてきた。
そっと距離をとってそのまま立ち去るカレーヌ様。
「おお、そうかえ。エメラーダよ、久しぶりじゃな。」
「グランディの華の中の華、そしてブルーウォーターの星の中の星の御方様方にご挨拶申しあげます。」
二人に騎士の礼を取るエメリンである。
「ほほお。見事な男装の麗人じゃの。」
「そうですね、母上。ウチのヴィーには及びませんが。
……おや、レイカさん?鼻血が出ているよ?」
えっ、嘘。
「リード様。揶揄うのはおやめくださいな。」
アンちゃんの苦味走った表情に、我にかえる。
良かったっ!顔にあてたハンカチには何も付いてなかった!
「オホホホ。似合うではないの。その格好。フィフィ・ヤーン先生ことエメラーダよ。
この式ではそなたの新作の詩集が引き出物として配られると聞く。楽しみにしてるぞえ。」
「ははっ。生まれて初めて参加した華燭の典。
インスピレーションがどんどん湧いて参ります。
これからの詩作の糧となりましょう。」
エメリン。これ、普通の式じゃないからねっ?
普通は小鳥がコーラスしたり、ドラゴンが新郎新婦を乗せたりしないから。
「ホホホ。それは楽しみじゃ。ホラ、生徒達が待って居るではないか。その席に座って、存分に見聞を広めると良い。
それに新しいバージョンの『幸せであるように』期待しておる。」
「ははっ。」
「母上、私も少年合唱団と歌いますからね。楽しみになさって下さい。」
リード様も満面の笑みである。
そこだけ黄金色のスポットライトが当たっているようだ。
会場中からため息が漏れる。
披露宴には、ネモさんの所のスタッフが大勢招待されている。
動物園だったり、不動産業だったり、牧場だったり、サーカスだったり。
普段リード様を近くで拝見できない人達には眼福であろう。
ウチの方の影や忍の人達はリード様には慣れている。
今更うっとりさんはいないな。
ん?
「素敵……」
母よ。頬を染めているのね。
…ハハハ。
アレだけイモを貪り食う御姿を、いつも見ているだろうに。
会場にはシンゴ君の力作の氷のクマさん。
カレーヌ様のスタッフ、ベルナさんの手による、龍太郎君、キューちゃんの飴細工が飾られている。
ま!それにこれは?
グラッシーじゃないの!
あの王妃様のスケッチでここまで!
ベルナさんったら、仕事ができる子!
三代神獣の揃い踏みである。
光に当たって煌めく飴細工。水晶のように美しい。
「うわあ。凄い。舐めてみたい。」
ミルドル、気持ちはわかる。
ごくり。
うわあ。キューちゃんが生唾ゴックンだ。
獲物を見る目で見ているよ。
「トカゲ野郎が飴細工を貰ったから、自分も欲しいと言ってるでごわすな。」
エドワード様の解説だ。
「まああ、白狐様。気に入ってくださって何よりですわ。
でもこちらは式の後は新郎新婦にあげる約束なんですの。
でも、こんな事もあろうかと。
コレよりミニサイズになりますが、別室に飴細工がございましてよ。ウフフ。」
カレーヌ様が微笑みながら現れた。
「もちろん、ケーキもお付けしてますわ。」
キュー!
おお、キューちゃんのご機嫌がなおった。良かった。
…うん?
目の端にエメリンが映る。カレーヌ様をガン見してるね。
アンちゃんの目配せでショコラさんとイリヤさんがさりげなくカレーヌ様を隠す。
シンゴ君がにこやかに、
「ミルドル。お友達と会ったか?ほらエメリン先生にも挨拶してこいよ。」
ミルドルをエメリンの方に押しやる。
「エメリン先生!その姿も素敵です!」
「あら、ミルドル君。新婦はあなたのご親戚だったわね。」
「ええ、一緒にお爺ちゃんちに住んでたんですよ!
お姉さんがいなくなるみたいで、寂しいです。」
「まあ、そうなの。ね、貴方も一緒に歌ってみる?」
「えっ。ええと…練習ナシでもいけますか?」
ヨシヨシ。エメリン先生の教師心に火が着いたようだ。
「さあ!皆様。新郎新婦の入場です!拍手でお迎えください!」
ネモさんの声とともに、ドアが開いた。