世紀の?結婚式。新婦も入場です。
そして再び扉が開いた。
バサバサバサバサ!
花嫁の入場?ではなくて、目の前を横切る色とりどりの集団。
羽音を立てて、大小様々な鳥達が入ってきた。
「ルリルリちゃん?」
マーズさんが差し出した手に乗ったのはルリルリちゃんだ。
「ミンナ!ウタウヨ!ジュンビオーケー?」
片足を上げてポーズを取る。
可愛いぞ!
「ピイイイイ」
「ギュルルル!」
「ピチクリピ!」
他の鳥さん達が一斉にお返事をする。
ネモさんやマーグさんの肩。学園の子供達の肩に止まっている。
セキセイインコ、オカメインコ、コンゴウインコ等、歌うインコちゃん達が勢揃いだ。
ヨウムやオキナインコもいるかな。
「ジャンジャジャジャンジャアーン♫」
まず、ルリルリちゃんがソロで歌い出す。
響く声。喉が膨らんで波打っている。
凄い声量だ。マーズさん耳大丈夫かな。
あっ、片耳に耳栓を入れたぞ。
「まあこれは!オペラ界の○人!」
王妃様の顔が、ほころぶ。
花嫁の入場にこれを選んだか。
「ラーラララ♫ラ、ラーララ…♫」
あとは全ての鳥さん達がラララで合唱だ!
著作権も怖くないっ!
チャペル内は魅惑の○キルームと化した!
そこにサマンサちゃんと父がゆっくりとバージンロードを進んでくる。
ベールガールとボーイはウチの娘たちとガルドル君である。
ひときわ大きな拍手が上がると思ったら、ウチのランド兄ではないか。
スピーチのプレッシャーから解放された彼にはもうなんの憂いもないのであろう。
隣はメアリアンさん。うちの母、そしてサンド兄も来ていた。いいなあ。私もそっちに混ざりたいよう。
私は王妃様達と最前列に座っている。
そしてその後ろ二列は護衛の方たちなのである。
(あら、スケカクさん。黒スーツだからわからなかったわ。いつもは忍び装束なのに。)
親族はその後ろなのである。
大きな声で言えないが、有り難すぎてちょい迷惑です。
ところでなんで王妃様が新婦側にいるのか。
ネモさん側でも良いではないか。
と、ぼやいても仕方ないことを脳内でぼやいてみる。
それにしてもサマンサちゃんは美しい。
輝くばかりの希望と若さに満ちた花嫁さんだ。
頬は薔薇色に染まり、濃い緑色の目はきらめいている。
ドレスは最高級のモスマンシルクで、正面には素晴らしい刺繍が施されている。
ベールは長く。真珠のビーズが縫いつけられて。
あら?ティアラなんかダイヤが散りばめられてないか?
もちろん秘宝・ブルーウォーターは美しく光っている。
「モスマンシルクはともかく、ベールとティアラはマーグの式の時に用意したものを使ったんですよ。」
ネモさんが私の視線の先を見ながらささやく。
彼は進行係と警備も兼ねてるのでチャペル内を行ったり来たりしている。お忙しいことだ。
「そうなんですか。」
「ええ。可愛い弟達はなるべく公平にと。
マーグの時は身内だけで簡単に挙げてしまったのですけど。」
眉尻を下げるネモさん。
ああ、今回は王族も来たしね。
他所の国の王族のアキ姫さまもおられる。
「今回、マーズの式がこんなに大掛かりで、ちょっとマーグに気の毒かなと思ったのですが、本人達は目立ちたくなかったようで、あれで良かった、とさっき言われました。」
そうだよね。うん。気持ちはわかるよ。
周りを見回す。エリーフラワー様ご一家。
そしてカレーヌ様。
マーズさんの仕事関係の人達。動物園や牧場やサーカスの人だな。あら?イリヤさんじゃないか。久しぶり。
あ、それからサマンサちゃんの猫カフェ仲間もいるね。
(みんなクノイチだが)
シンゴ君とラーラさん。
それから、ウチの若い忍びたち。
護衛の為かサマンサちゃんを祝ってのことかしら。
おや、ヤー・シチ義父さんに、オー・ギン義母さん。
ご無沙汰してます。
この御二方は護衛なのか、縁戚なのか、微妙な所です。
うん!ウチの関係者って(アンちゃんを含め)割と目つき悪いなあ。ハハハ。
さて。鳥達の美しい囀りは響く。どこまでも透明な音の響きは聞く者をうっとりとさせる。
まさしく天上の音楽だ。
「マーグの時も鳥たちに歌わせたんですよ。少年合唱団はいなかったんですけど。」
いえいえ。鳥の合唱団の方が何倍も凄いですから。
荘厳な調べの中を進んでいく。
美しき花嫁と固まりながら引率する我が父。
お父さん、尋常じゃない汗かいてますよ。
そして花嫁を花婿に手渡した。
ふうっ。肩の力を抜くのが見えます。
さあ、これから誓いの言葉に指輪の交換に誓いの……
「あの。王妃様。」
「なあに?レイカ。」
「今回はキーッス!キーッス!コールは辞めて下さいね?お子様沢山いますからね?
思春期真っ只中の学園の生徒とか。」
「まあ、オホホホ。」
口元を扇子で隠して上品に微笑む王妃様。
「やっぱりダメ?ワン・コールも?ホホ。
レッツ・キッス・頬よせてっ!も?」
「駄目ですっ!」
「仕方ないわねえ。貴女の顔を立てておくわ。」
ふうう。
横でアンちゃんもほっとして、額の汗を拭ってる様だ。
「その代わり、このあと三つの坂の話と三つ袋の話をするわよ?オホホホ。ダブル・メッセージよ!」
「最高です!母上っ!素晴らしいお話にみんな心から感じいるでしょう!」
目を輝かせるリード様。
アッハイ。ご存分にどうぞ。
ダブル・メッセージでも、ダブル・ファンタジーでも。
(いや、逆にダブル・ファンタジーの方が過激か。)
誓いの言葉も厳かに。結婚指輪は煌めいて。
リングガールや、ボーイも得意げに。
式は滞りなく進んでいく。
ああ、良かった。
ダブル・ファンタジー。
ジョン・レノンとオノ・ヨーコのですね。