神獣として軸(キャラ)がブレている。
誤字報告ありがとうございます。
「それでね、そのロクデナシ王子は自分達が海竜様の子孫だと信じてるけども、それは無いってわかったわ。ひと安心かしら。」
わあ。とうとう王妃様はロクデナシ王子と言い切ったぞ。
「ええ、神獣様達が断言されましたから。人間との間に子供は出来ないと。」
私も口添えをする。
「やはりねえ。フフ。尊き神獣様の血筋ではないのね。
では遠慮はいりませんわね、煮湯を飲ませられたお礼をしますわ。
あの島にはエリーフラワー印のものは何も売りませんわよ。化粧品も!家電も!お薬も!」
あら、それは結構な痛手では。
「合格祈願の御守りも!素敵なお洋服も!
カップ麺も!」
あ、うん。
「知育玩具や水遊びグッズに抱っこひも!ベビーカーに車イス!」
多岐に渡ってるなあ。
「アレもコレも!みんなみんなよっ!
まったく粗悪品のブレスレットのせいで迷惑を被ってるのですからね。」
ふん!と鼻息を荒くするエリーフラワー様だ。
あーあ。敵に回してはいけない人なのに。
「多分、これからアランかネモが仲介してロッキー王子達を海竜様と対面させると思うわ。
彼等、グランディの安宿に泊まっているのよ。
そろそろ路銀も尽きると思うわ。
そして現実を突きつける。貴方達は神獣の子孫でもなんでもないと。」
王妃様が二つ目のゼリーを食べながらおっしゃる。
「アラ、美味しい。これはワインゼリーね。
うん、上のホイップクリームも良いアクセント!」
顔を綻ばせる王妃様だ。
「お口にあいましたか。光栄ですわ。」
「ねえ、エドワード。」
「はっ。」
「シードラゴン島の王子達と海竜様との面会。
その時は貴方とキューちゃんが同席してくれるかしら。」
「了解でござる。」
なるほど。ロクデナシ王子がグラッシーくんを怒らせても、キューちゃんがいれば押さえられるだろう。
神獣様の怒りのパワーは凄いからね。
そしてそのキューちゃんを押さえられるのはエドワード様と言う訳だ。
「あの王子様達はその後シードラゴン島に強制送還かしら。裕福な家のお嬢さんがうっかり騙されて結婚してしまわない内に。」
コーヒーを飲み干して王妃様はにこやかに微笑まれた。
「カレーヌ、エリーフラワー。
第三の神獣はシードラゴンで、グラッシー様というの。名付け親はレイカよ。」
「アラまあ!」
「まああ!」
声を上げる二人。
「たまたまですよ。消去法かな。
というか、これからグラン湖に住むとおっしゃってるから。グラン湖のグラッシー様。」
「え、ではグランディ在住なの?」
「ええ、カレーヌ様。時々シードラゴン島に戻るんですって。
キューちゃんや龍太郎君と違って身体の伸び縮みは出来ないらしいわ。
その代わり、いろんな石を作り出すお力があるの。
シードラゴン島のラピスラズリは彼が作ったものが主かな。」
「宝石を作り出す?」
エリーフラワー様の眉があがる。
「すごいわ。金もかしら?」
手を合わせて目を輝かすカレーヌ様。
「そうらしいでござるよ。キューちゃんから聞いたのでごわすけど。」
エドワード様が答えた。
「無から作るわけではないらしい。溶岩からラピスを。金属から金をみたいな感じでごわすよ。
でも、金を作ったら人間達の目の色が変わって、もっと!と言ったからムカついて10年くらいおこもりしたらしいですな。
それから作ってないとか。」
「それは、恐るべきお力ね。金相場が変わっちゃうわよ。
それに鉄なんかを無尽蔵に出されたら、武器も沢山作られたりしてね。」
エリーフラワー様は腕組みをして考えこむ。
「ねえ、レイカ。そのグラッシー様はどんな御方なの?」
カレーヌ様の目は好奇心で輝いている。
難しいなあ。彼を何と例えれば。
テルーの唄みたいなフレーズが頭に浮かぶ。
「クジラみたいに大きくて。お身体の色は濃い青。
目は青くて。お顔はウミガメみたいで可愛くないことはないわ。
そしてお首がとっても長いのよ。全体的に流線型で優美なフォルム。首長竜といってもわからないでしょうが。」
「ほほほ。こんな感じよ。」
王妃様がサラサラとお描きになる。流石元超売れっ子漫画家であらせられる。
「まあ!素晴らしいですわ。良くわかりました。」
カレーヌ様、エリーフラワー様が拍手をする。
「それでどんなご性格なのかしら?」
「エリーフラワー様。そうですね。
性格は…キャラがブレブレで。ブレまくっていて。
最初ね?名前をブレブレ太郎にしようかと思ったくらいで。」
「…キャラがブレブレ。」
「そうなの。いきなり古代の貴族みたいな言葉を使うし。いと痛しとか、いと嬉し。とかみたいな。
それで麿の助って名前にしようかとも思いましたよ。」
「それはちょっとわかんない。」
ああ、麿はわからないか。
「そうかと思うと教育ママみたいなザマス言葉や、医者の助手みたいな幼児語を使ったり。
そして流暢な江戸っ子言葉にありんす言葉。
ちょっと掴みきれなかったわ。」
「まあ。人格?神格?が幾つかあるのかしら。」
エリーフラワー様の指摘に
「そうかもしれないわね。ビリー・ミリガンかしら。」
王妃様も同意する。
「と言うか変な言葉を使いたい年頃でござろう。
それがカッコイイと思っておるのでしょうな。」
「あら、エドワード。鋭いわ!
ねえ、お前のごわす言葉も厨二病からなの?」
薄く笑って突っ込む王妃様。
エドワード様は眉尻を下げた。
「王妃様、御勘弁下され。拙者は一族でこの様な言葉使いでございますれば。」
へええ、薩摩武士?みたいだね。
「それにグラッシー殿はキューちゃんや龍太郎君に弱い。
まだその点もお子様みたいでごわす。」
なるほど。
……1500才のお子様かあ。
「まあ、ダーリンの説明で良くわかったわ。ありがとう。」
エリーフラワー様が強引にまとめる。
「では、このグラッシー様たちの件はアランに任せることにして。
私はマーズとサマンサの式が楽しみよ。おほほほ。」
王妃様は優雅に微笑まれるのであった。
式はあと四日後である。
アンちゃん帰ってくるかなあ。
「さよなら絶望先生」のオープンニングですね。
好きでした。コミックも全部持ってます。