哀(あい)…藍色の石。今は残るだけ。
さて、ここは我がレストランである。
とりあえず皆さんにお茶をお出ししよう。
それからカレーヌ様にゼリーを配達してくれるようにお願いをしたら話が通っていたよ。
なる早で用意してくれるって。
実はアンちゃんがあの時、他の王家の影(現地集合)に耳打ちしていたらしい。
気がつかなかったわあ。そんな人いたのね。
マーズさんから届けられた飲むヨーグルトを皆さんに出す。妊婦さんにも安心。
でもなんかメリイさん、しんどそうだな。
あ、もしかしたら王妃様に緊張してるのか。
「メリイさん、大丈夫?帰宅してもいいのよ、キューちゃんに送ってもらう?」
「そうじゃな。今回は色々と驚いて疲れたであろうし。腹の張りがあったりしたらいけないぞえ。
自宅で休むが良い。」
「王妃様。では、お言葉に甘えて。」
「ハイドさんも、もういいでごわすよ。拙者が付いており申す。キューちゃん、頼むね。」
エドワード様の言葉に肩のチカラを抜くハイドさんだ。
「そうですか、では失礼いたします。」
だよねえ、私やエドワード様は王妃様には慣れているけど他の人はね。
キュー。
メリイさん達は消えていった。
「さっきキューちゃんから聞いたでごわすが、あの神獣様は石が好物なのです。」
「まあ、そうなの?」
追加のお茶を二人にお出しする。生クリーム一杯のレイカ珈琲だ。
「おお、拙者はこれが好物でしてな!」
顔を綻ばせる。甘党だったな。
「他は土もいけるとか。金属も。植物や動物はお口に合わないと。」
コーヒーを啜りながら続けるエドワード様だ。
「それでですな。
お腹の中で別のものに生成して吐き出すのですと。
例えば、トンネルを掘る時は掘った土を腹の中で固く、粘度も強くして吐き出して、壁や天井を固めているのでそうでごわす。」
自家製のセメント?
「それじゃ、1人で土木工事が出来るのね!凄いわ。」
手を叩いて喜ぶ王妃様だ。
「はい。あのシードラゴンの島は瑠璃の島と言われておりまして瑠璃ことラピスラズリがそこそこあったらしいのでごわす。
それであの島の湖が気にいったグラッシーは、そこに住むことにしたのですが、他の石を食って腹の中でラピスにして、どんどん出した。
それで瑠璃一色になったそうで。
統一感を出したんですな。」
「まあ。1人地方再生?1人親方と呼ぼうかしら。」
…何か違うと思います。
「それに神殿は彼自身が作ったようなものでごわす。
生成したラピスラズリの塊をですな、口から風を出して切って形を整えて。
念じれば石を浮かせて組むことも出来たそうなのであります。
もちろん石には守りの加護もたっぷりと付いていた。他所の国が攻めてこないように、とか。豊作になるようにとか。
波避けの効果もあったとか。
それを私利私欲の為に壊したんですからな。
怒り心頭に発する、でありましょう。」
「なるほどねえ。」
王妃様も生クリームたっぷりのコーヒーを飲みながらため息を吐かれた。
「そりゃ、キューちゃんも怒るわね。」
「そうでごわすな、キューちゃんは時々神殿作りを手伝ってやってたそうなんですよ。
キューちゃんもモノを浮かせることも出来るし、手足も器用だ。
上陸ができない神獣仲間の新人のために地上で微調整していたと。
キューちゃんは情け深い良い子なのでごわす。」
え。意外。仲良しさんだったのか。
そりゃ、そんなに密に付き合ってたんなら、お気に入りのエルメ王子を無視したら怒るだろうなあ。
「ふうん、まるで錬金術師じゃないの。彼の加護が知れ渡ればどの国も欲しがるわね。」
王妃様の眉間にシワが。
「でも、ま、グランディに腰を据えてくれるなら良かったじゃないですか。」
「そうね、レイカ。後はシードラゴン島の王子達にどれほどの加護を与えるか。」
「そうですねえ。長い付き合いだったでしょうし。」
「でも、自分の神殿を壊されたんでしょ。腹立つわよね。シードラゴン島民と再会したら頭から食ってもおかしくないわよ。
あ、ナマモノはお食べにならないか。」
ひええ。怖いこと言わないでくださいよ。
そこにショコラさんが来た。
「カレーヌ様が、ゼリーをお届けに来られましたよ。」
ぱあっと王妃様の顔が明るくなる。
「ゼリー!楽しみにしてたわよ!
さ、カレーヌもお茶会に混ざってもらいましょうね?」
あ、そうだ。
「王妃様、エリーフラワー様も呼びませんか?
多分、後で聞いたら私もみんなとお茶したかった!と言うと思いますわ。」
「うむ、そうでごわすな!是非呼んでやって下さいませ。」
エドワード様も頷く。
カレーヌ様は王妃様にビビるが、エリーフラワー様は平気のへいざである。
それに、
「そうね、レイカ。第三の神獣の事はエリーフラワーには知らせておかないと。」
その通りです。
「そろそろメリイさんのところからキューちゃんが戻ってくるでごわす。
エリーフラワーを迎えにやりましょう。
うん、ちょうど帰ってきたようですな。
……キューちゃん、悪いけど…」
ニコニコして神獣を使役するエドワード様だ。
やはり凄いな。
キューちゃんも文句ひとつ言わずに迎えに行ったわ。
「まあ。キューちゃん偉いわねえ。帰ってきたらヨーグルトをあげなくっちゃ。昔から乳製品が好きだったわ。」
王妃様にびびって給仕に徹していた母だが、いそいそとキューちゃん用の貢ぎ物を用意する。
こういう気配りの人達がいるから、世の中が上手くまわっていくのだろうな。
「哀戦士」の一節から。ガンダムはファーストしかまともに見てません。