名前、名前、キミのなーまえ。
誤字脱字報告ありがとうございます。
「ウウウウっ。ずびまぜんでした。
白狐殿お。少し調子に乗ってましたでござるで、ござるでござる。ぐすすっ。」
懐かしの「ちょんまげマーチ」のフレーズのようだ。
(by みんなのうた)
「グランディの王族様あ。少しここに御厄介になり申す。わちきを宜しくでありんすよ。」
半泣きになりながらペコリと頭を下げる海竜様。
言葉がぐちゃぐちゃだな。
「段々江戸時代になってきたわね、言葉。」
王妃様が口元を扇子で隠してささやいてくる。
「あー。そのうちヤバイぜ、ヤバイぜ、とか言いそうですね。」
「すまねえな、アランサン。コイツはまだ千五百年しか生きてネエ餓鬼ナンダ。
ちょっと無礼で変な言葉を使うクセがあるけどよ、ま、置いとけば魔除け厄除け、悪者の侵略よけ、にはならァな。」
そんな。尊い神獣様を虫除けみたいに。
ええと、龍太郎君は結局三千年は生きてるみたいだったっけ。
「火龍殿、久しブリにアニキと呼んでいいかえ?」
「お断りでえ!何が、久しブリダ。テメエにアニキ呼ばわりされた覚えはねえ!」
「ねえ、龍太郎君。その方男性なの?女性なの?」
「 ? 王妃サン。オレらは一応雌雄の別はナイヨ。オレの気持ちはオトコダケドネ?」
「じゃあ、この方の子孫とかいないのね?」
「ウン。オレらは別に卵や腹から産まれるンジャネエモン。長く生きたキツネが白狐のダンナになったと言う説はアルガ。」
キュールルル。
「オイラは火山のエネルギーで出来たんだト。ワシやトカゲやコウモリなんかを飲み込んだ集合体?ジャナイカとパイセンは言ってル。デモそれは定かじゃナイッテ。」
キューコーン。
「この海竜ハ、クジラや昔の恐竜の念が海底に沈んでイテ、固まって、海底火山のチカラでちょっとずつ大きくナッタらしいネエ。やっと千五百年前に形を取れたンダ。
もしかしたらゴジラみたいに放射能を含むものの影響カモシレナイケド。」
「エエ。ドンナ石でも美味しく頂いてます。」
舌舐めずりをする海の神獣。
「ふうん。」
リード様が考えこむ。
「じゃあ、人間との間に子供が産まれてたりしてないのかい?」
「エッ。綺麗な王子様。それは無い無い。無理無理無理!!サイズ的にも、構造的にも!わたしゃ、この身体より小さくはなれませんよう。
それに人型?アリエナーイ!」
ヒレを顔の前に出して左右に振る海竜様だ。
そしてアランさまが近づく。
「龍太郎様、ご存知か?シードラゴンの王子がこの海竜様の子孫と名乗って好き勝手やってるって事を。」
「「何だって!!」」
龍太郎君と海竜様の声がそろう。
「ハッピーアイスクリームだぜ、チクショウ!
て言うか、何だよソレ。」
「シードラゴンの王子が?
あの我が神殿をグチャグチャにした恩知らずではないか!」
怒りの海竜様だが、
……ぐちゃぐちゃにしたのはキューちゃんでは。
「それでね、あちこちの王族に婚約を打診しているみたいなんだよ。
私と結婚すると海竜様の加護が付いてくると。」
「何と!」
目を見張る海竜様。
「ナント!スイチョーケン!(南斗水鳥拳)だぜ!」
……龍太郎君、細かすぎてわかりにくいギャグです。
「…龍太郎、何言ってるのよ、このシリアスな場面に。」
頬を染めるメリイさん。いたたまれないんですね、わかります。
「オホホホ!面白いわあ!龍太郎君!」
王妃様は大爆笑。流石元漫画家である。
「母上がお喜びなのは何よりだが。神獣様達。キミたちと人間は交配可能ではないんだよね?」
「もちろん!ダメだよ、チクショウ!」
メリイさんの、背中に縋りつく龍太郎君。
キュー。
多分同意してるね、キューちゃん。
「ウン、勘違いして何人か乙女が神の嫁になる!と身投げしてきたざますが。
ちゃんと、保護して返した筈でざまあす。」
海竜様。スネオのママになってますね。
「では、騙りか思い込みか。」
アラン様は腕を組む。
「もちろん、グランディは貴方様を歓迎いたしますよ。でも他の国に、その王子様について行かなくていいのですか?」
「…あたしゃね、身体を縮められないから、ある程度の大きさがあって、出来れば火山性の湖が良いんです。
少しお肌がピリピリするかんじのね。
お水のお色が青ければなお結構です。
こことシードラゴン島の湖がバッチリピッタリ、ウットリなんですよ。」
ふーん、今度の語り口調は落語家あたりの人みたいだな。
「ヘエエ。PHが低い酸性の水質が良いんダナ。寝床にはな?普段は海底を泳ぎ回ってルンジャナイカ。」
龍太郎君の指摘だ。
「だから他の国でもそう言う湖なら住めますけどね、なかなかこれが無いんだ。
わたしゃ、地上は歩けませんのでね、地下トンネルを潜っていくしかないんですよ。ええ、海底からね。
時々、瑠璃の島にはトンネルを通って帰るくらいはしますけどね、
出来ればコッチで御厄介になりたいンで。
流石に散々加護を与えてきたのに。神殿より宮殿を大事にしてきたのにはがっかりなんです。」
「ウンウン。」
「そうですか。それなら我が国は歓迎いたしますよ、海竜様。」
アラン様がうやうやしく頭を下げる。
「ねえ、縄張りは平気なの?重なったりしないのかしら。」
王妃様の問いかけだ。
「ウーン。ブルーウォーターの結界はパイセンだな。
オイラもメリイから離れないから。メリイがいるところなら何処デモ。
でもオッカサンとも離レタクナイシ。
二人でブルーウォーターにイルヨ。
海竜はグランディを守れば?あと、飛び地でシードラゴン島を。」
「それでいいかな?キューちゃん。」
キュー。
ネモさんに良いお返事をするキューちゃんだ。
「では。我、良い名前を欲す。誰ぞ付けてたもれ。」
あら。また言葉が古代に。
もじもじしている海竜様だ。
「白狐殿はキューちゃん。
火龍殿は龍太郎。
私は?ねえ?私は?何かナイ?」
コールミー、プリーズ。ってか。
やれやれ。
あゆみお姉さん達がいた頃の、お母さんと一緒にこんな歌があったような。