目を閉じれば幾千の光。1番光る神獣(あなた)がいる。
目を開けたらそこは白い建物の前だった。「グランディ国境病院」とある。
「病院?」
「そうですね。パティさんはここにいます。」
ネモさん良く知ってるな。
「おしゃべりスズメが教えてくれるのですよ。」
なーるほど。おや。肩にも一匹とまっているよ。
小鳥はとっても歌が好きってやつか!ピチクリピ!
建物に入って行く。
「ネモ様!それに、皆さんも?」
「ロイド君か。ここの警備に来てるんだね?」
入り口の騎士が駆け寄って来る。
「この光、もしかしてキューちゃんが来てますか?」
「うん、姿を消しているがね。」
「国境病院という事は、キューちゃんに弾かれた人も運びこまれるのですね。」
「そうです。レイカさん。
さて、ネモ様。まずは院長先生にお会い下さいませ。」
ロイドさんが目配せをすると事務員さんが走って行く。
そうだよね。一国の主だもの。
そして。
「ここのね、パティと言う患者に会いたいんだ。それだけなんだがね。急に押しかけてすまない。」
ネモさんが応接室でお茶を啜りながら言う。
「はい。…彼女も弾かれたモノ達の1人ですね。何かネモ様のお怒りを買って?」
小太りの院長が上目遣いでネモさんを見る。
「うーん、原因のそれはね、九尾の神獣が裁いたからいいんだ。この子は彼女の子なんだが、」
今はランド兄さんに抱かれているガルディ君だ。
相変わらず寝ている。疲れてるんだな。
薄く青い光がまとわりついてる。
キューちゃんの仕業か。ああ、あえて眠らせてるのか。
「こちらで引き取る事にしたんだ。それで母親のパティさんの許可を貰おうとね。
ま、彼女は孤児院にこの子を置き去りにしたから気を使うことも無いんだろうが。きっちりと縁を切らせておこうと。」
「失礼。」
院長が難しい顔をした。ガルディ君を抱き上げて、服をめくりあげて背中を見る。そうか、この人も医者なのか。先生と呼ばなくては。
「 ! 」
そこには青アザがあった。
うわ、酷い。お尻ならさ、蒙古斑みたいな感じだが、
(蒙古斑を見て虐待だと勘違いされた話は聞くけど)
ここは背中だよ。涙が滲んでくる。
「やはりこの子は虐待されていたのですね。
痩せて顔色も悪い。…パティさんと言いましたか。男と逃げてこの子を放置したと言ってましたが。
相手の男に殴られていたのですかな。
それとも。見て見ぬ振りをしていたのか。」
そこで院長先生は腕を組む。
「酷いな!酷いよ!」
ランド兄さんは涙目だ。
「本当に許せませんわ。」
メアリアンさんも怒っている。
キュウウウウ。
唸り声を上げてキューちゃんが姿を現した。
「びゃっ、白狐様っ!」
恐れ戦く院長先生。
病院自体が青い光につつまれる。
「……そうか、うん。好きにやり給え。君がすることに文句を言える者はいないよ。」
ネモさんが目を閉じて顔を左右に振る。
「な、何が起こるので?」
院長先生の声が震えているわ。
「うん、今からキューちゃんが光を放つ。多分ね?
それでねえ。この病院は光に包まれるんだ。
あるものには癒しの光となって、怪我が良くなるだろう。だけどね。」
「……あるものには粛正を、ですね。」
ランド兄がネモさんをじっと見る。
「そうなんだよ。」
ふうっ、とネモさんがため息を吐く。
「本当にヤバい人は結界に弾かれるだけではなくて、もうその場で消えてるだろ?だから……大体の人は助かるとは思うんだが。」
ごくり。
どうなるのだろうか。
あっ、キューちゃんの目が赤く燃えている。
本気モードだぜ!
「ひいい。」
あら?院長先生頭を抱えてうずくまる。
何かやましいことがおありで。
「こんな時もキューちゃんは綺麗だね。」
ニコニコしている我が兄。
流石です。
フウウ…ギュウウ…。
そして蒼き光があたりに満ちた。
湘南乃風の歌ですね。




