表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/205

十二月二十四日。

 今日は十二月の二十四日。

日本だったらクリスマスイブというやつである。

もちろん、この世界にはそんなものはない、無いのだが。

「やっぱりねえ。ケーキが食べたいのよ。プレゼント交換もしたいしねえ。」

と言う王妃様の要望で、最近、年末サンクスデーという日が出来た。なんと祝日なのである。

商店街のイベントのような名前だが、その日はみんなでケーキを食べましょう、という謎の習慣が少しずつ広まっている。


「それって。バレンタインを広めたお菓子屋さんや、恵方巻きを広めたコンビニみたいなものかしら。」

王妃様が扇子で口元を隠してほほほ。と笑ってらっしゃる。


 そして今日はコンサート当日なのだ。

私とカレーヌ様は連れ立って王妃様にご挨拶に来た。

カレーヌ様の手にはホールケーキがある。

「王妃様のイラストでのご注文通り、マジパンで家やら、トナカイやら、赤い帽子のおじいさんの人形をつくってあしらいましたわ。何か意味がございますの?」

「おほほほほほ。このおじいさんはサンクスさんと言って、皆さんに一年間ご苦労様といってねぎらいのプレゼントを配ったり、みずから店頭でケーキやチキンを売る、働きものの御方なのよ!」



サンクスさん。ギリギリのネーミングである。


「まあ。そうなんですの。」

「この時期にだけ何人もいて、ピザを配達してくれたり、ショッピングセンターで会計をしたり、水族館で赤い服を着たまま、イルカとショーに興じたりしてくれるのよ!

このトナカイはペットでね、このお家はおじいさんの家なの。」

王妃様はしれっと嘘の設定を、述べること、述べること。

「サンクスさん一族なのですか。お家とペットは成功者の印なのですね。」

頷くカレーヌ様。


ええ。ウチにも来ました。サンクスさん一族。


ピザの配達にサンタの格好したお兄さん。

近所のスーパーのレジ打ちのおばさまたちは、サンタ帽やトナカイのカチューシャをつけて。

シーパラではサンタガールがショーをしてましたね。


「ところでカレーヌ。お母上が来られたようじゃな。

ジャスティンも久しぶりじゃの。」

「はい。グランディの華の中の華にご挨拶申し上げます。」

「ありがとうございます。王妃様のおかげで母を連れて来ることができました。」


カレーヌ様のお母様とお兄様が頭を下げていらっしゃる。

後ろに控えていらっしゃったのだ。

王妃様がお声をかけるのをお待ちになっていたのね。


「おお、それは重畳。娘御のところでごゆっくりなさると良い。」

王妃様の扇子越しの視線は優しい。


「はい、御前失礼致します。」

私もいっしょに、はけることにする。

横目でアンちゃんを見ると、アラン様と楽しそうにお話をしている。

警備のうちあわせもあるだろうし、放っておこう。


ラーラさんやウチの母達の所へ行って座る。

「このコンサートはリード様がメインなんでしょう。」

母がプログラムを見て話しかけてくる。

「そう。だからもうリード様もヴィヴィアンナ様もご準備でいないの。」

あら?アンちゃんも踊るだろうに。

準備はいいのかしら。


と、思って後方中央のロイヤルボックスをみたらもういなかった。

チラリとその周りをみると、ロイヤルボックスの右側の席にエリーフラワー様ご一家がいて、メリイさん達がいる。

龍太郎君は小さくなって肩に乗っている。

おお、ハイド君は黒髪のカツラか。

おでこの感じをみるとバンコラ○ではなく、ハ○だな。

バン○ランだったらおでこの生え際がハートっぽい切れ込みだからね。

まあ。似合ってはいる。


(金髪ロングの伯爵ヘアだとリード様に似ちゃうからね、今日は避けるよね。)


キューちゃんはどこかに隠れているのだな。

その隣にミッドランドご夫妻がいた。さらに端の空席はレプトンさんのためか?

準備で忙しいのか姿が見えない。


そのロイヤルボックスを挟んで反対側にはカレーヌ様がお母様たちと座っている。


そして前の方へ目をやれば。

あら、最前列にフィフィ・ヤーン先生ことエメリン先生がいるわ。

…うん、今日も奇抜でキテレツな独特のファッションセンスである。

首から下げているのは多分造花である。大きなひまわりの花が下がっている。円盤のようです。


それとお揃いのイヤリング。

うん、季節感、ないね?

それがターコイズブルーのワンピースに映えること!

肩には真っ赤なショールを羽織っているのね。


派手だ。ド派手だ。警戒色だ。

自然界にいたら、捕食者が、

「こいつ、毒もってんじゃね?食うのやめとこう。」

となるタイプだ。


黄色の花、赤いショール、青いワンピース。

まったくもって、信号機のような配色だね。


メイクだって思いっきり派手である。アイシャドウは青く塗りたくられて、口紅は真っ赤。

ディズ○ーの悪役っぽいっす。


1番近いのはリトルマー○イドのアー○○ラである。

髪は何故か紫色に染めてある。

確かに彼女は、脱色していた。そこにまた紫を入れたのか。痛んじゃうよ。


まあコレで彼女がバーバラやロージイに似ているとは思うまい。

 

最前列だからか、

彼女を振り返って見るものもいないので安心か。

あら、隣はオー・ギンさん夫婦じゃないか。

そのまた反対の隣は三婆のグリーンさんだ。

脇を固めているのね。


さて、そろそろ始まる。


二年前のコンサートは鎮魂と再生のために行われた。

今回はあの時、大好評だったリード様の歌をまた聴きたいと言う国の内外からの要望によるものだ。


一応マナカ国のゲストも歌ったりされるが、リード様がメインなのだ。

会場は満員だ。チケットは即完売したと聞く。

私はアンちゃんが踊るから家族一同、チケットが貰えたようなものだ。

ランやアスカも連れて来てるよ。父や母やミルドルもいる。もちろんラーラさんもね。

最前列なのよ。下手の方だけどね。

(だからエメラーダさんを見れたんだけどね。

彼女はど真ん中にいる。)

うん?ミルドルは熱い目でエメラーダさんを見ているぞ。

「ああ。やっぱり素敵。目が眩んでチカチカするよ!」


…ド原色のせいだと思うけど。


あの化粧や服装にも恋心は萎まないのか。

流石だなあ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ