青春をかけた恋が結ばれる。離れない、何があっても。
「ほほほ。楽しい話って良いわね。何しろ最近血生臭い話ばっかりだったから。」
私が連絡をしたらすぐにエリーフラワー様が来た。
お子様連れだよ。
ミネルヴァちゃんとサファイア君も猫ちゃんと戯れている。
「可愛い!」「にゃんにゃん!」
流石に貸切の札をかけた。みんな安心して遊んでね。
「ねえ、カレーヌ様。今日は、ここでゆっくりなさいな。お店はぺー爺さんや、ハミルトンさん、リンさん達に任せてね?」
エリーフラワー様の提案に私も乗る。
「そうね、ショコラさんもお店手伝ってあげてくれる?」
「了解です。レイカ姉さん。」
クノイチは走り去った。
ふううううっ。
カレーヌ様が肩の力を抜いた。
「ありがとう。なんか最近忙しくって。もう少しレプトンに仕事を手伝ってもらうつもりだったけど、リード様に使われてるし。」
「ああら。いけないわねえ。リード様ったら。」
二人ともリード様には遠慮がない発言をするな。
「レプトンさんはマナカ国の言葉が使えるのでしょう?あちらの高官との意見交換に重宝されて帰れないのよ。
これから新女王への対応とかあるでしょうしね。」
エリーフラワー様はため息をついた。
そして、顔をあげて明るい声で言う。
「そうだわ、りんごのフレーバーティーを持ってきたのよ。」
マナカ国の話はここでストップ。
お土産の紅茶をみんなで戴く。クッキーは猫ちゃんの顔の形。ネコカフェの一番人気を出す。
カレーヌ様の店の物だけどね。
「ねえ、早速今度の日曜日にお式をあげるのはどうかしら?」
エリーフラワー様の発言だ。
ちなみに今日は月曜日である。
「うん。10月の最終日曜日ね。まだ寒くないからお婆様も大丈夫かも。心の臓が弱ってらっしゃるんですって。」
「あら。じゃあキューちゃん見たら驚くかしら?」
それはもう。驚くでしょうね。
想像して欲しい。
いきなりエドワード様が白馬ならぬ白狐に乗って現れる。
「ヤア、オババ様。迎えに来たでござる!」
ってね。
「まああ。天国からのお迎えでござんすか?」
ってなりそうではないか。
「うーん、じゃあ寝てる間に運ぶのは?」
「いいわね!」
誘拐騒ぎにならないといいけど。
「で、教会はこことここが空いてるのよ。ここはね、ステンドグラスが素敵よね。」
エリーフラワー様が資料を出してくる。
「うーん、ちょっと大きいかも?」
「じゃ、いっそのことウチの学園は?チャペル併設されてるわよ。」
「そうなの?」
「そうだわ。天使の声合唱団に歌わせましょうよ!」
エリーフラワー様が手をたたく。少年合唱団か。
「あら、素敵!」
「でも。」
ちょっと気がかりなことが。
「なあに?レイカ。」
「学園だとエメリンが乱入してきたらどうするの?」
「「あああー!そうか!」」
二人の声が揃った。
「簀巻きにして閉じこめても、根性で這い出てきそうねえ。」
エリーフラワー様が頭を抱える。
「呪いの言葉を部屋から叫びそう。しかも響き渡りそう。ううん、けったいな詩を書いたビラを撒かれそう。」
カレーヌ様も青い顔になる。
(でもけったいなポエムは見たいかも。)
二人ともエメリンを何だと思ってるのかしら。でも否定出来ない所が怖い。
「別の場所にしましょう。」
「ええ。ま、私はエメリンには負けないけどね。ふふ。
離れないわよ。何があってもね。
昔からのキズナですもの。」
おや。カレーヌ様が情熱的だ。レプトンさんが聞いたら泣いて喜ぶだろう。
「では、参加者はウチの家族とレイカさんの家族…はどこまで?レイカさんのお母様とサマンサさんとメアリアンさんは?」
エリーフラワー様の指摘だ。
「え、出来れば来て欲しいけど、メアリアンさんは、アメリアナさんの頃から親しくしてたし、レイカのお母さまにはとてもお世話になってるし。
それにサマンサさんだってレイカの血縁でしょ。」
「でもね、サマンサちゃんが来るとマーズさんも来る。大変になるわよ。」
「うーん、そうね。」
「うん、もう私と夫のアンディとウチの娘たちだけ。
エリーフラワー様とエドワード様とお子様二人。
これだけで。
あとはお食事会に来てもらいましょう。」
「そうね、レイカ。」
「うん、それが良いワね。」
いきなり声をかけてきたのは。
「アンちゃん?」
「ただいま。レイカちゃん。」
「あら、アンディ。いつのまに。」
「アンディ様。お仕事お疲れ様ですわ。マナカ国の件は片付きましたの?」
「はい。エリーフラワー様。まあ一応。
それにカレーヌ様。式を挙げる日取りが決まったのですか?」
「ええ。宜しくね。今度の日曜日よ。」
「「それはおめでとうございます。」」
ハモってる?
おや、後ろにセピア君とシンゴ君がいるよ。
ディックさんも。
やだ。顔色悪いわ。この人。
「ディックさん、大丈夫?土の壁みたいな顔色だけど。」
「ははは。そうですか。」
―――ふうううう、しゃあああ!
―――うわあああおおおおおん。
うん?
猫達が威嚇し始めた。ディックさんを見て背中の毛を逆立ててるぞ!
「ランド義兄さん、猫達が興奮してあぶないから子供達を奥に。それからメアリアンさんを呼んでください!」
アンちゃんが叫ぶ。
「わかった。」
ああ、これは除霊しなければって奴か。
メアリアンさんの案件か。
「ディックさん、とりあえず隣りの忍びの詰所へ。
このままじゃ猫達の興奮がおさまりませんから。」
「はい!」
そこにはメアリアンさんが待っていた。
「…これはタチが悪い。お義母さんはいますか?」
彼女の顔がみるみる強張る。
「え?」
「キューちゃんを呼んで欲しいです。
ものすごい執着を感じます。黒いモヤになってまとわりついている。」
そう言えば私にも黒いものが見える気がする。
「私が除霊しようとして活性化したのですわ。」
パン!
メアリアンさんが手を打つ。
一瞬、モヤが薄れる。
「これは、マナカ国の毒姫です。
ディックさん。貴方を自分のものだ、と。昔からずっと決まっていたと。何度も首を締めようとして…連れて行こうとしています。
離れない。昔からのキズナだと。
あの世で連れ添うつもりですって?!」
ええっ。さっきのカレーヌ様と同じ様なセリフを吐いている。
でも、危険度はMAXだ。
「…ったく。ふざけんじゃないわよ。何がキズナよ。
ただの勘違いストーカーじゃないの。」
「まったくよね。」
カレーヌ様とエリーフラワー様も怒っている。
ついて来たのか。
「花嫁」と言う歌ですね。
 




