私の手を引き寄せて、テーブルの上で重ねる貴女。無理して微笑まないでね。
次の日。カレーヌ様がビレイーヌちゃんとやって来た。
猫カフェにクッキーの納品である。
「ニャンニャン!ネコちゃあああん!」
ビレイーヌちゃんがネコを押さえつけるように撫でる。
ああー、小さい子にありがち。
相手の猫は三毛猫のミイサンだ。耳をヒクヒクして耐えている。これは引きはなさないと猫パンチ出るな。
「ぶにゃおおおん。」
ぶっとい声を出してクロネコのクロタが、ミイサンを押し退け自分が入れ替わった。
……さあ。私を撫でなさい。幼な子よ。
ネコは優しく撫でるのですよ……
その様な言葉が伝わってくるようである。
「わあ。大きなネコちゃん!」
ビレイーヌちゃんが、撫で始める。
「ネコちゃんにはもっとやさしく、よ。」
「こうね。こんなかんじ。」
ランとアスカが出て来て教え始める。
うん、これで安心だ。
「カレーヌ様もお茶でもいかが。ひと息ついていったら。」
紅茶をいれて、私も付き合う。
子供たちにはジュースだよ。
「ありがとう、レイカ。ふうっ、なんか忙しくって。」
「あのエメリンのリップクッキーや、薔薇の角砂糖やら売れてるらしいわね。」
「そうなの。それなのにレプトンがリード様に呼び出されて忙しいの。」
……ああ。
それにもう呼び捨てなのね。まあアンちゃんのことも呼び捨てだしね。
「側近は辞めたつもりだったんだけど。リード様にね、力を貸してくれたまえよ。なんて言われてね。」
「うん。」
「私には良くわからないけど、マナカ国絡みね?アンディもシンゴ君もいないじゃない。」
「そうなのよ。」
カレーヌ様に相槌を打つ私。
「なかなか大変みたいでね。」
詳しいことは言えやしないが。
話を変えよう。
「ね、カレーヌ様のウェディングドレスも出来たんでしょ?サマンサちゃんとマーズさんとこもドレス出来ていて、来月式挙げるって。」
「ああ、そうね。」
カレーヌ様は複雑な顔をする。
「もう入籍もしてるし、一緒に暮らしてるし、今更と思うんだけど、あのモスマンのシルク。
凄いわね、あの光沢。素晴らしいドレスが出来たの。
身内だけで式はあげたいわね。」
そこで私の手をテーブルの上でギュッと握るカレーヌ様。
「何を差し置いても、レイカだけは来てね?
万障お繰り合わせの上ご出席を賜りますよう、お願い申し上げます。」
じっと上眼使いをし、往復ハガキに書く文面みたいなこと言って圧をかけてきたよ、この人。
「わかってますよ。」
そっと握り返す。
「いつですか?」
「それがね、森の小さな教会に打診したんだけど、年内いっぱいだったの。」
「アッハイ。なるほど。」
「どうせこんなにレプトンが忙しいなら。年明けでいいわよねと思ってたんだけどさ。」
「うん。」
「彼のお婆様ね。マリー義母さんのお母様。高齢なんだけど。レプトンのことを可愛がってたらしいのよ。
その方があんまり良くなくって。」
「あら。」
「それで教会をキャンセル待ちしてて、空いたら結婚式なんてレプトンが言うの。」
「いやいや、それは違うでしょ。空いてる教会を探して式を挙げるべきよ。この際規模は置いといて。
それにリード様やネモさんは苦労した女性に、特に年配の方に弱いから、式を挙げるからレプトンさんを解放してって言えば大丈夫よ。」
「レイカ…。」
「もうドレスも出来てるし、指輪もあるわよね?
ビレイーヌちゃんの晴れ着もある?」
「うん。」
「お食事会はウチでやればいいし、招待客はご家族とウチの家族とエリーフラワー様ご一家くらいかしら。」
「うん。最小限にしたいから。」
「これはエリーフラワー様に話を通さないと。メリイさんは妊婦だから来られるか微妙よね。
サリーさんは婚約がまだ確定してないでしょ。」
だんだんイメージが固まってきたぞ。
「アンちゃんも予定では今日か明日帰ってくるわ。
うん、ご家族とエリーフラワー様達のご都合がつけば、来週にでも出来そうよ。」
「レイカ、ありがとう。」
カレーヌ様が目を潤ませて抱きついてくる。
「とりあえず、今からエリーフラワー様に連絡するわ。彼女は顔が広い。教会だってすぐ押さえられるかも。
それにエドワード様がいれば、病身の?お婆様をキューちゃんに運んでもらえるわよ。」
「凄いわ!レイカ。仕切りがアンディみたい!
夫婦って似てくるのね?」
……アッハイ。
それって褒めてるんですよね?
森川由香里さんの、「Show me」。
懐かしい。あのドラマ見てました。




