空を駆けるハヤブサ。
脱字報告ありがとうございます
マナカ国では色々大変らしい。
「ほほほ。アアシュラ様。ブルーウォーターのマーズがサーカスに出ますのよ。ご一緒にいかが?」
今日は、王妃様がリード様と一緒にアアシュラ様とアキ姫さまを連れ出したそうだ。
「気晴らしになりますわよ。ディックさんのことが心配でしょうけど。」と。
確か、サードさんやサリーさん、リーリエさん達も行ってる筈だ。
そしてサマンサちゃんも。マーズさんが自分の勇姿を見せたいんだな。はは。
「内緒だけどね、貴人達の接待だからとネモさんがサプライズで出るみたいだよ。」
アンちゃんが言う。
「アンちゃんは護衛には行かないの?」
「一応、ヤー・シチやロイドが行ってる。リーリエもいるしね。でもま、ネモさんがいるんだ。心配はあまりない。それに、」
アンちゃんは続ける。
「マナカ国からの連絡を待ってるんだ。セピアとシンゴから。」
……ああ。
「とりあえず、ディック君は毒姫と対峙するらしい。
毒姫は離宮に幽閉されてるんだ。側妃、ジルと言うんだが、彼女と一緒にね。
王太子は毒姫を王の子供と偽って、それを指摘したルーデンベルク氏を殺したとジルに罪をなすりつけようとした。」
「……ええー。」
「だけど、マナカ王は自分の子ではないと知っていた、と言い放ったんだ。」
なんかこんがらがる。
「つまり昔、マナカ王はジルとその婚約者アーリンを引き離そうとした。
それで二人は駆け落ちした。そして毒姫を身ごもった。ここが元々の始まりさ。」
そんな。つまりマナカ王の横恋慕から始まったのか。
「それじゃ、ジルさんが側妃になったんなら、捕まったということなのね?」
「そうだよ、レイカちゃん。」
アンちゃんがナイフの手入れを始める。
「それでアーリンを殺されたくなければ、自分のモノになれと言ったのさ。」
酷いな。
「これが微妙なところでね。王の方から見れば、側妃としての打診をした。ジルの親たちは名誉な事と喜んだ。二人の婚約は速攻解消された。」
「王命に逆らって逃げたという事になるのね。」
「そう。見方によっては。連れ戻されたら二人とも切って捨てられてもおかしくなかった。」
そこでアンちゃんはナイフをしまって伸びをした。
「そこでね、口を出したのがルーデンベルク氏さ。
彼は王の良心と呼ばれていた。
ま、エドワードみたいな役割りさ。」
なるほど。
「ルーデンベルク氏はアーリンを自分の領地に引き取って平民に落とす。それなりの重労働をさせるし見張りもつけるから助けてあげて欲しい。…同情の余地はあるでしょう、と。
それで王も聞き入れた。
ジルが側妃になるのと引き換えにね。」
へえ。良かった?のか。
「彼にとっては。アーリンはそのうち現地で知り合った女性と結婚して子供も産まれたとか。
ジル様のことは青春の思い出だと語ってたそうだ。」
えっ。ちょっとだけクズ?
「アンちゃん、シンゴ君たちから連絡って。電話や手紙なの?」
ふっ、と笑うアンちゃん。
「今回はね、事態が急を要するかもしれないから。手紙を鳥にくくりつけてもらった。
…そら、きた。」
窓から鳥が入ってきたよ。
「うわ、伝書鳩?じゃないね?」
キリッとして可愛いぞ。
「ううん。ハヤブサ。ネモさんが仕込んだのを貸してくれた。」
「へええ。」
「護衛としてモスマンを付けたらしいよ。彼、姿を消せるらしいから。」
いや?それは初めっからモスマンで良いのでは?
「うーん、モスマンは紙を食ったりするんだ。オヤツにね。」
アンちゃんは私の心の声が聞こえてたらしく、生返事をしながら手紙をハヤブサからとった。
ええっ。しろやぎさんたら読まずに食べた?の世界なの?
「ご苦労様。ハヤブサのハヤーくんだっけ。茹でたササミを食べていきな。ネモさんに宜しくな。」
茹でたササミは猫カフェの猫ちゃん用に常備してる。
ああ、ハヤー君は肉食か。ペロリと食べた。
そして、くるりと輪を描いて飛んでいった。
「ネモさんにも同じ手紙がいくの?」
「いや、ネモさんにはモスマンが口頭で伝える。俺らにはシャーとかキキーとかにしか聞こえないが、彼にはちゃんとわかるんだ。」
「なるほど。」
すごい。
手紙を読むアンちゃんの顔が強張った。
「フン、思ったより早いな。とりあえず毒姫と王太子は亡くなったそうだ。」
ええっ。
「空を駆けるよだか」から。読んだことも見た事も実はありませんけど。
ウチのまわりにはトンビは沢山います。
ピーヒョロロと本当に鳴くんですね。




