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ステイウィズミー。貴方の背中をたたき。すぐに行かないでと。

誤字報告ありがとうございました。

 そこにシンゴ君が入ってきた。


「おお、シンゴ。ご苦労様。まあ、お茶でも飲め。」

「はっ。」


任務が忙しいのか。しばらく見なかったな。ラーラさんは1人だから母の家にお泊まりしていたようだ。

ラーラさんがお茶を運んできた。

「シンゴ、お帰り!」

「おお、変わりないか?」

「……うん。」

ラーラさんの目が潤んでいる。寂しかったんだな。


二人の甘いムードをぶっちぎるように声をかけたのはアンちゃんだ。

「シンゴ、アアシュラ様をこちらにお連れしたんだな?」

「ええ、マナカ国から今戻りました。アンディ様。

ディックさんとも一緒でしたよ、先程まで。」


うわ、それは大変だ。ずっとマナカ国に潜伏してたのか。

それにお仕事バージョンのときは『アンディ義父とうさん』じゃ無いんだな。


「今ごろアアシュラ様はアキ姫さまとご対面か。

ディック君も一緒にな。」

「ええ、まもなく王妃様もグランディからいらっしゃるようです。」

あら。じゃあ。

「近々、多分今日の夕飯。王妃様がコチラにいらっしゃるだろうな。

お二人を連れて。」


うわお。アキ姫さまならともかく、アアシュラ様まで来るのかよ!ここに?勘弁してえ。


「多分、ははうえー!と言ってリード様も来られますね。」

シンゴ君も頷く。


それはそう。的中率100%の予言である。


「で、あちらはどうだった?」

「ええ、マナカ王はミイル王太子の廃嫡を決めました。

ルーデンベルク氏を暗殺した件で。井戸の中から彼の遺体が出てきましたから。彼は王とは仲が良かったのです。学生時代からの親友を殺された王は怒り狂いました。」

「そして次の王はマキ姫さまになるんだな。」

「はい。ミイル王子はアアシュラ様に泣きつこうとしましたが、アアシュラ様はそれを拒否。コチラに逃れて来られました。」


「フン。」

アンちゃんが鼻で笑う。

「まあなア。マナカ王やミイル王子はブルーウォーターには入れないだろうからな。」


「ディックさんは明日にでもマナカ国に帰るそうです。毒姫との決着をつけに。父上の仇を討ちに。」

「そうか。忙しいことだな。」

「乗り掛かった船だ。私も付き添いますよ。」


「シンゴ、また行っちゃうの。」

ラーラさんが現れた。頬を膨らませている。

「すぐに行かないでよっ。」

シンゴ君の背中をたたくラーラさんだ。


「あ、ああ。すまない。ちょっとだけ、なっ?」

新妻の怒りにタジタジだ。


「ラーラ、大丈夫だ。今度はセピアもつけるよ。すぐ終わるさ。」


「えっ。」

素っ頓狂な声を出すのはセピア君だ。


「なんか、とばっちり。イエ、アンディ様のお言いつけでしたら何でも。」


「フン。調子のいい事だ。」

「ちゃっかりアンディ様の養子に納まってるアンタに言われたくないねえ。」

「何だと?」


おお?アンちゃんラブの二人がにらみあっている。


「あら?やだ。二人は仲が悪いの?」

そこに来たのは我が母だ。

明るい声でハッキリキッパリ忖度無しで聞いている。

そんな事を言えるのは貴女だけですよ。


くっ。


吹き出すのを堪えてるのはアンちゃんです。


「いいえ!そんな事は。なっ?ハハハハ。」

「もちろんデスヨ。御母堂様。仲良しですよ、俺ら。ふふふ。」

とってつけたように笑いあう。そして肩をバシバシとお互い叩き合っていますよ。

二人とも母には弱いんだな。


「ねえ、お母さん。そのうち王妃様やリード様。アキ姫さまやディックさん。

も、もしかしたらアアシュラ様もいらっしゃるの。急いで仕込みをしましょう。」

「えっ!大変!ラーラさん手伝って!ショコラさんも。」

「あっ、俺も手伝いますよ。」

セピア君が腕まくりをする。

「まあ。助かるわ。」

アンちゃんが何処かに連絡をしているようだ。

「大人数だ。ハイドを呼びだす。護衛も沢山くるからな。」

「じゃあ海鮮を持ってくるように頼んで。」

「OK。龍の字に獲ってもらうんだね。」


うーん、マナカ国にいたのは(多分)前世福岡人だ。とりあえずまた、梅ヶ枝餅は出すとして。

伝え聞いたのは筑前煮っていったな。サトイモの代わりにジャガイモにするか。ごぼうはある。にんじんも。しいたけも。

ん?ジャガイモ?


「レイカ義母さん、何かオレに出来ることは?」

「シンゴくん。ジャガイモむいて。お願い。ここにあるのみんな。ありったけ。」

「はい?」

「いらっしゃるでしょ。ポテトが好きな王子様が。」


リード様はフライドポテトがあれば御満悦なのである。


さあ、大忙しだ。




「おほほほほ!レイカ!久しぶり。」

夜、王妃様が貴人達を連れていらっしゃった。

いつものリード様。

アキ姫さま。ディックさん、

そしてやはりいらっしゃったか!アアシュラ様。


「ヤア、王妃サン。お久シブリ。」

「王妃様。ご機嫌うるわしゅう。」

「あら、龍太郎君。メリイさんも。」

龍太郎君はエビだの、イカだの、鯛だのとってきてくれたのである。そしてメリイさんを連れてきた。

「ハイドもオイラもコッチダモン。メリイも連れてキタヨ。」

との事だ。


さあ。お造りの盛り合わせに、鯛の塩焼き。

リクエストされた筑前煮。

アキ姫さまがお好きなイカ天。梅ヶ枝餅。

リード様がお好きなポテトフライ。


「あらあ?これは伊勢エビ?ロブスター?」

顔を綻ばせる王妃様。

「どっちかと言うと伊勢エビに近いですね。」

「フフン。オイラが本気だせばコノ通りサ。」

「鯛もあるのね!」

「ウン。ジャパニーズなら喜ブ、ラインナップでショ。ネエ、メリイ。」

「ええ、美味しそう。伊勢エビ?のテルミドールなんか懐かしくおめでたいですわね。」


龍太郎君、得意そうだ!いや本当に助かったよ。


「神獣様自ら獲ってこられたのでございますか?」

目を見開くアアシュラ様。

「ソウダヨ。エエト、アナタはアキ姫サンのお母さん?アアシュラ様ダッケ?」

「はい、いつも遠目では拝見しておりましたが。

ご拝謁できて光栄でございますわ。」

「ウン、コンチワ。」


流石のアアシュラ様も龍太郎君には丁寧だな。


「ウチのアキがお世話になっております。」

「ナンカネ。ソッチニ昔、転生日本人がイタンダッテ?話がアッテネ。」

カカカ、と笑う龍太郎君だ。


「レイカサンが、アキ姫サンの好物ノお餅ヲ作っテクレタヨ。」


うわお。私に振らないで。


「ホホホ。私の転生仲間で、側近でしたのよ。」


……王妃様あ。


「ええ、私にも良くして下さいましたのよ。アンディ様の奥方ですの。」


――アキ姫さま、お願い。私を放っておいて。


「まあ。確かアラン様の腹心ですわね、アンディ様は。」

「ハイ。左様でございます。アアシュラ様。

妻のレイカ共々お見知りおきを。」


アンちゃんが綺麗な礼をして私をさりげなく隠してくれる。後ろで頭を下げる私。


ふうっ。


「美味しいですね。」

ニコニコとしてディックさんが食べている。

確かにレプトンさんみたいな髪と目の色だなあ。


……でもなんか、シンゴ君を思い出す。


「 ? レイカ義母さん。私がどうかしましたか?」

また、口から出てたか!

「アッなんかね。ディックさんってさ、シンゴくんに似てない?」

「えええ?そうですかあ?」

眉尻を下げるシンゴくんだ。

「うん、背格好とかさ。口数が少ないとことか。あと、笑い方。」


「あ、それね。俺もそう思いましたよ。ディックさんがジャックって呼ばれてた時から一緒でしたからね。素直じゃねえガキっぽいとことかさ。」


セピア君が口を出してくる。


「フン。お前みたいな軟派な軽薄なヤツと一緒にすんな。」

  

たちまち二人の間に火花が散る。


「ハイ、そこまでよ。」

アンちゃんが二人の間に割って入った。

「おまえらもういいぞ。明日からのマナカ国潜入に備えてもう寝ろ。」

「はっ。」「ハイ。」


「シンゴ。ちゃんとラーラと話せ。」

「はい?」

「昨日さ、メアリアンさんがラーラを呼んで、なんか言ってたぞ。」


「……?」


あら、ニブイ。このパターンは。

あらあらあら。


「ラーラさん、もうあがって。シンゴ君と帰りなさい。」

「レイカ義母さん。」


ごめんねえ、気がつかなくって。

情緒不安定なのはそのせいもあったのねえ。



……身体を大事にするのよ、ラーラさん。


松原みきさんの「真夜中のドア」ですね。

タイトルネタ。

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― 新着の感想 ―
はい、おめでたですね。 情緒不安定は当然、しかも夫が長期出張。 そのお仕事がお仕事なだけに、なまじ理解できるがためによりつらい。 ラーラさんの甘えにちょっと驚いたけどそういうことなら。 たたくのは真夜…
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