ここまで来れた。サクセス?彼女は昨日の髪を持つ。
誤字報告ありがとうございます
ミルドル達はモルドール領へ旅だった。
ハイド君が付き添うそうだ。
「ま、食品加工だ。知恵を貸してやってくれや。あと危なくないように見てくれよ。火傷とかさ、刃物とか。」
ミルドルをそれなりに可愛がってるアンちゃんの依頼に、
「カニをペットフードに?興味ありますが。」
ちょっと二の足を踏むハイド君。
「メリイは妊婦ですし。」
「イイじゃん。三日グライ。俺がツイテルヨ。安定
期だしさ。お土産頼ムヨ。」
「龍ちゃん。」
龍のひと声で決まったのである。
そして今日はサードさんがサリーさんを連れて龍太郎君に会いに来る日だ。
「レイカちゃんも来てよ。」
アンちゃんが上着を選びながら言う。
「なんでえ。」
「面識あるでしょ。本物かどうかね?確認。」
「そんな。偽物が来るかもって?」
「念の為だよ。本物ならすぐレイカちゃんに、以前のお礼を言うはずさ。フン、俺が脅しつけたとき庇ってあげたでしょ。」
「あー、そうだっけ。」
「助けられた方は割と覚えてるもんだよ。」
「出かけるならさ、早めに言ってよ。私も着替えなきゃ。」
もう上着を来て鏡を見ているアンちゃんに、文句を言う。
「大丈夫。ワタシもまだ準備にかかるから。コレから武器を上着に仕込むから。フフ。お出かけの前のお庭番の嗜みよ。」
ナイフをすっ、すっと袖口に仕込むアンちゃん。
もうう。そんな仕込み見たくなかったわ。
「レイカちゃんが身支度する時間くらいあるワよ。」
どれだけ仕込むんだ。あら、ナイフを研ぎ出した。
「コレ、イマイチよねー。光が鈍いわ。血糊の拭き方が甘かったかしら。」
うえええ。何の血潮?
カエルだーって、アメンボだーって、手のひらに流れる血潮?じゃなくてえ!
とにかく身だしなみを整えてネモさんのホテルに向かった。
入り口のドアのところではセピア君が待ち構えていた。
「お待ちしておりました、どうぞ。」
「まだ誰も来ていないな?」
「ええ。アンディ様が潜む時間は充分にございますよ。」
うへえ。忍びの仕事の裏側って見たくないなあ。
あれ?一瞬で二人消えたぞ。
おーい?どこ行った?
「レイカさんはこちらへ。」
「ネモさん。」
ニコニコして現れたのはこのホテルと、この国の支配者ネモさんだ。
彼がいるから私を置いて行ったのか。
ひと声かけなよ、まったく。
「ダイシ商会のお嬢さんとサードさんが龍太郎君にご挨拶に来るんでしょ。同席しますよ。」
うん、ストッパーのネモさんがいれば安心だね。
「お嬢さんが龍太郎君を怒らせたりしないとは思いますが。ま、念の為です。」
ホテルの部屋にいると、龍太郎君がメリイさんを乗せて中庭に降りたった。
「メリイの護衛だから離レナイヨ。」
それでメリイさんを連れて来たのか。大丈夫か。
おや、メリイさんが青い光に包まれている。
どの神獣の加護かわからないが、それなら平気かな。
「すごいですねえ。メリイさんへの加護。キューちゃんと龍太郎くんとで何重にもかかってますよ。
例え彼女が空中に投げ出されても、しばらく浮いているでしょうねえ。」
ネモさんが目を細めて見ている。
凄いなあ。
「レイカさん!ネモ様、こんにちは。」
「コニャニャチワ、ナノダー。」
あっハイ。バカ○ンのパパっすか。
もうね、龍太郎君が多少ケッタイな事をいっても誰も気にしない。ツッコマない。
みんなでホテルの部屋に行く。
こないだアアシュラ様が来た所だ。
もちろん、思わせ振りにカーテンがある訳でさ。
「コノカーテンの後ろに隠レテレバイイノ?
……アッ。」
龍太郎君がカーテンを元気良く開けるとそこにはセピア君がいた。
「もおお。入ってまーす。」
トイレじゃ無いンだから。
「ゴメンネエ。ノックすれば良カッタネ。」
「龍太郎君は最初からこちらに。メリイさんの肩にとまっていてよ。」
ネモさんがメリイさんにゆっくりとした椅子を勧める。
「ネエ、レイカサン。オッカサン元気?
ハイドがオッカサンの領地に行ッテ、キャットフード作ルンダッテ?」
「そうなの。協力してもらってるの。」
「龍の字。ハイドが居なくて寂しいのか?」
あれ、アンちゃん。いたの?どこから来たんだい?
「ウウン、そんな事モ……有るカナア。ヤッパリ食
生活モサ、ハイドが居ると充実スルシサ。」
メリイさんが顔を顰める。
「もう、龍太郎ったら。」
「ハハハ!お詫びにね、お土産にさ、モルドール領内のクルミを山ほど持たせるように言っとくよ。龍の字用にね。」
「ワアイ。クルミ好き。」
と、和気藹々と話していたら。
「失礼します。お客様がおつきになりました。」
ホテルのスタッフの方がノックをしてドアから顔を出した。
「どうぞ、お通しして。」
ネモさんの声にまわりを見るとアンちゃんがいない。
あら、どこへ行ったのだろう。
「失礼します。サリー様とサード様をお連れしました。」
ドアを開けて顔を出したのはジークさんじゃないか。
あらあ、こちらに来たのね。
その腕にはキラリとブレスが光っている。
金属に赤い石が埋め込まれている。
うん、ベースは銀かな。
あの煌めきはウチのルビーだ。ほら。角度によって淡く青く光る。キューちゃんの加護付きだ。
じっと見ていたら、
「レイカさん、お久しぶりです。」
ジークさんの方から挨拶してきたわ。ほほほ。
「ええ、本当に。」
「えっ!?レイカ様!…まあっ、お久しぶりでございますっ。以前はご夫君からの粛正から救ってくださって!おかげ様で命拾いしました!貴女は命の恩人ですわ!」
……そのご夫君はこの部屋にいるけどねえ。
「ふっ。」
ほら、ネモさんが笑ってる。
おや、リーリエさんも。護衛で付いてきたのね。
そして下を向いて笑いを堪えてる。
さて、良くお嬢さんを見ると。
「あら?アキ姫さま…じゃないか。サリーさんね。」
以前見たときは、黒髪ストレートのショートだったよ。今は縦ロールに巻いてる。
色白のふくよかなボディ。長いまつ毛。柔らかい笑顔。
優しい雰囲気も良く似てるな。
「本当。アキ姫さまかと思いましたわ!」
「オイラも。」
「そうだろ?メリイに龍太郎君。最初は私も見間違えたんだ。」
サードさん、ドヤ顔である。
なるほどなあ。サードさんはこないだ、アキ姫さまをとても気に入っていた。
そこにこのド・ストライクのお嬢さんと会った訳だ。
「フウン。目の色がチガウネ。そして、この髪はカツラナンダロ?」
龍太郎君が目を細める。
「……ええ、バッサリ切らなくてはならない羽目に。気に入ってたんですの。この髪型。それで、」
そこでサリーさんは頭に手をやる。
バサリ。
カツラを取る。
「 ! 」
驚く一同。
「すぐカツラだと龍太郎様にはわかったのですね。
アキ姫さまに似てると毒姫に狙われると言われて。
でも未練がましく切った髪をカツラにしていたんですわ。ここには毒姫様来ないし。」
少し涙目になるサリーさんだ。
頭にはネットをかぶっていて、それも取るとショートヘアが現れた。ヘアを固定していたピンも外していく。
「ゴメン!オイラが悪カッタヨ!女の子にそんなハジをかかせてシマッテ!」
狼狽える龍太郎君。
「いいえ!何をおっしゃいますの。私は今日は龍太郎様にお礼を言いに参りましたの。
母が病気の時、貴方様のウロコに助けられて。
それでサード様に連れてきていただいたのです。」
そして深々とお辞儀をする。
「その節は誠にありがとうございました。
母は助かりませんでしたが、おだやかな最期を迎えられたのは、貴方様のおかげでございます。」
そしてにっこりと微笑むのだった。
「やっとお会い出来ました。光栄でございますわ。」
ダウンタウンブギウギバンドかな。サクセス。




