王妃様は無敵でダイターン過ぎである。
その後、王妃様は年末コンサートの話に戻られた。
「リード、あの【幸せであるように】は大評判だったわよ。
みんな貴方の歌を楽しみにしていてよ。」
「母上、ありがとうございます。アンディ、キミもまた踊るのかい?」
「え?いや予定はございませんけども。」
アンちゃんがびっくりしている。
「おほほほ。【幸せであるように】はヴィヴィアンナが踊るのでしょう?」
「ええ、練習していますよ。途中にうちのエドガーとフロルも乱入して盛り上げる予定でいます。と言っても私たちが抱き上げて回るだけですけどもね。」
「まあ素敵ですわ!」
「本当に!」
私とカレーヌ様が声をあげる。
「ほほほ。ウチの孫は天使のように可愛いもの。」
「それは同意いたします。」
「まあ、ランちゃんとの縁談はともかくとして。」
王妃様はにっこりとなさる。
私とアンちゃんの顔は強張る。
リード様は目を伏せて微笑まれる。この件についてはみなさん保留にして下さるようだ。
ふうっ、嫌な汗をかいたぜ。
「だから、アンディも踊って盛り上げてよ。」
だからって、何すか?
「ええっ。あと二十日しかないですが?」
慌てるアンちゃん。
「振り付けは任せるわ、ソロで踊ってね?」
「ええええ。」
「曲はこの中から選んでいいから。」
「ええええええ。」
頭を抱えるアンちゃん。
「大丈夫だよ、アンディ。キミならできるさ。」
にこやかに応援なさるリード様。
人ごとだと思ってさあ。
「私達も振り付けは自分でやっているんだよ。」
それはすごい。
「さて、カレーヌ。」
「はい。」
「また、各国の要人がいらっしゃるのよ。そこへのお土産に貴女のところのクッキー詰め合わせを使わせてもらうわね。」
「まあ!有難き幸せにございます!」
「キノコ、たけのこのお菓子にはどちらが良いか、アンケートの応募ハガキをつけるわよ。」
「なるほど?」
「それで抽選で一名様に特製金貨をプレゼントするわ!」
「それは面白いですわね!」
「あとは、ハシビロコウクッキーのシークレットパンジーちゃんも一枚ずつ入れておいて。
一部の方には大人気ですからね。恋がかなうというふれこみなんでしょ?」
カレーヌ様は満面の笑みで微笑む。
「ええ、ハシビロコウのパンジーちゃんクッキーの五十枚に1枚の確率でパンジーを咥えたパンジーがはいるのですわ。」
「クッキーは三十枚入りだったかしら?」
「そうです。ランダムですから、入っていないことも、二枚入っている事もありますわ。」
カレーヌ様の顔が商人のそれになっていく。
「某・公爵令息様は毎日お買い上げ頂きましたけど、一枚も入っていなかったそうですわ。
そんな運のないお方もいるんですのねえ。フフフ。」
うわあ。怖い。
「サードくんかい?彼、くじ運もないんだねえ。」
リード様あ。バッサリですねえ。
「ところでね、カレーヌ。お母上を引き取りたいんだつて?」
「はい、リード様。」
「今度ね、コンサートに兄君のジャスティン君とご招待しよう。何、私からの指名なら横やりも入るまい。
二人とも私と面識があるのだからね?
そのまま母君はこちらに残られると良い。」
リード様はコーヒーの湯気の向こうから微笑まれる。
カレーヌ様が目を見開いて口を手で覆う。
その顔は感謝で溢れている。
「リード様……。」
「お母上をこちらに引き取るのに、腕のよい用心棒を雇うお金が必要だったのだろう?
後は家の改築か。それはもう済んだらしいね。
君の父上は愛人を何人も持ちながら、母上にも執着して外に出さないと聞いた。
母上は今は君のアニキのジャスティン君の所にいるけどさ、」
そこで真顔になって、
「居心地が悪いらしいと聞いた。」
カレーヌ様は唇を噛み締める。
「ご存知なんですのね。ええ、義姉と折り合いが悪いのですわ。」
カレーヌ様の父上は愛人というか、第二第三夫人がいる。
そして、引退して領地の奥に引きこもったあとは、
妻妾同居を強いたのだ。それに嫌気がさしてジャスティン様の所へ行かれたのだと聞いている。
「あの馬鹿亭主に使い込まれて、あまりお金が自由にならなかったのは本当なんですの。
でもここのところ盛り返して来ましたわ。
母は父の監視が厳しくて以前は、ちょいちょいコチラに来れたのに来れなくなってしまいました。
だから用心棒と一緒に行って、コッソリ連れ出してもらおうとしたのですわ。」
「言ってくだされば!奥方様は私がお連れしましたのに!」
アンちゃんが叫ぶ。
昔カレーヌ様の家で働いていたから面識があるのだ。
「いや、アンディ。王家のお庭番が動くと勘ぐられるから。」
リード様が真顔になった。
「そうね。リードの言う通り。王家が今のカレーヌに肩入れする、影のものをつけるとなると、」
王妃様の言葉にカレーヌ様も苦笑する。
「…私は今独り身。リード様かアラン様の側妃候補と勘ぐられてしまいますわ。」
なるほど。
「私も兄上も側妃は要らないのに。時々まだ話が来るんだよ。」
ため息をつくリード様。
へええ。あんな美しいヴィヴィアンナ様がいるのに。
身の程知らずがいるものである。
「だからせめてカレーヌにできることはお菓子の大量注文ぐらいよ。」
「王妃様、ありがとうございます!とても助かっております。」
「カレーヌ、母上ご自身はこちらに来たいとおっしゃってるんだね?」
「ええ。リード様。こないだブルーウォーターに来た時。こんな所でのんびり孫と暮らしたい。と言ったんですの。」
カレーヌ様の目は潤んでいる。
「では、それで良いね。ふふ。ジャスティン君はともかく、お父上は多分、キューちゃんに弾かれてここには入れないと思うから、連れ戻されることも無いだろうね。」
リード様は優しく微笑まれた。
「良かったですね、カレーヌ様。」
「レイカ!嬉しいわー!」
カレーヌ様は私に抱きついてきた。
「では、年末のコンサートについて詰めなくてはね。おほほほ。
アンディ、警備は任せるわ。要人リストはこれね。」
「はっ。」
そして目を丸くした。
「あ、これは。ええと。この方も呼ぶのですね。」
そこにあったのはフィフィ・ヤーン女史の名前だった。
「おほほほ。それはそうよ。【幸せであるように】の作詞者ですもの。およびして讃えなくては。」
「あー、そうですね。ちなみにレプトンさんは?」
「そりゃ、私の側近だからね、手伝ってもらうよ。」
「ですよね。」
アンちゃんの眉間にシワが。
「まあ、とりあえず席を離しましょう。
後はさりげなく、クノイチを配置して彼女がレプトンさんに突進したら抑えるように…。」
「まあ。猪じゃないでしょうに。」
王妃様。近いものはあるかもです。
「あ、忘れてたわ。レイカ。コレ。」
王妃様が目配せをするとスケカクさんが現れた。
「今度ね、メリイ達にあったら渡して?私からのプレゼントよ。」
結婚祝い?
スケカクさんから渡されたそれは。
「カツラですね?」
「ええ!龍太郎君が、ハイドのカツラをみんなダメにしたんですって?」
そう。結局ハイド君のカツラを全部、龍太郎君が可愛い?ジェラシーストームで水浸しにしたのだ。
「ハイド。被っているウチに乾クヨ。ククク。」
「うっうっ。生乾き臭がっ!龍ちゃあん。ひどいよー。」
という事があったとメリイさんから聞いている。
(こないだの話合いで、ハイド君がカツラを被っていなかったから
冬なのにと思って聞いたのである。)
それでエリーフラワー様に頼んで手配中と聞いたのだか。
ちらっと見るとスケカクさんが頷いている。
そうか。王家の影が王妃様にチクッたのだな。面白そうだからか。
「ほほほ。私がね、デザインしたカツラよ。見て見て!?」
バーン!
出されたそれは。
「この黒髪の長いのは!」
「おほほほ。バンコラ○モデルよ!」
「……ではこちらの豊かに長い金髪はマライ○モデル?ですか。」
「違うわよ!それだと片目が見えなくてキケンでしょ。
それはねえ、ドリアン・レッド・グロー○○伯爵モデルよ!」
「まさかのエロ○カ!」
ではこちらの短めの黒髪は少佐?
「ちっちっちっ。この黒髪ストレートボブは鉄のクラ○スではないのよ!」
「あ、確かに少し短い。」
「千と千尋のハ○よ!」
「まさかの少年!そしてドラゴンつながり!」
「あとはね?この茶色は速水真○モデル。」
「後ろで、真澄様……!!と見守る秘書の水○さんも欲しいですね。」
「あとはね、これ。少佐は少佐でも、シャ○少佐!
もちろん、ファーストガン○ムの時のよ!」
「あっ、ハイ。わりと普通の?髪型で良いと思います。」
王妃様。面白がっていますね。やれやれ。
とりあえず届けたら、ハイド君にものすごく感謝された。
「北風しみる季節ですからね。」
「ワーイ。知ってるキャラがイッパイダー。」
龍太郎君も喜んだ。めでたしめでたし。
タイトルは「無敵超人ダイターン3」からです。
実際昔にキノコタケノコのお菓子で小判が当たるキャンペーンがありました。面白いですね。




