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ブルーウォーター公国物語(続グランディ王国物語のそのまた続き)  作者: 雷鳥文庫


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106/212

あなたにゃ、まったく敵わない。

 それでカレーヌ様の家にレプトンさんが住み込むことになった。

「気まずいでしょうから、荷物はハイドに持って来させましょうね。

おい、シンゴ、手伝ってやれ。」

「はいっ!」


「そうねえ、とりあえず二階の客間が空いていてよ。

夫婦の部屋はね、今物置になってるからね、ふふふ。」

カレーヌ様が口元だけで微笑む。

あー、元ご主人がいたとこだな。


「あ、はい。」

微妙な顔のレプトンさんだ!


「うん、隣に新居を建てたらどうですか?土地余ってるでしょ。」

アンちゃんが言う。


「あらそうね。手狭になったし。」


「お母様もいらっしゃるんだし。従業員も増える。今の住居はそのうち寮にすれば良いでしょう。

ついでに工場も大きくした方が良いですね。

新しい飴細工や氷砂糖もお作りになるんでしょ。

まあ、どっちにしろネモさんかマーズさんのチカラを借りましょうね。」

「あ、じゃあ龍太郎君に頼みますか?ネモ様というかUMAにやってもらうのですよね?

彼から彼等に繋いでもらいましょう。」

レプトンさんが顔をあげる。


「いやいや、まずやはり人が設計して、大工を雇わなければ。UMAはそのお手伝いですからね。建設関係はネモさんを通しましょう。

……サマンサ、マーズさんは今日来るか?」

「エエ、指輪を一緒にエリーフラワー宝飾店に取りに行くんです。」


「あら、ちょうど良いじゃない。一緒に行ってそこで指輪のデザインも決めてくると宜しい。いっそのこと結婚指輪を先にあつらえたらどうですか?」

「ええ、うちみたいにね。エンゲージリングは後からだったですよ。」


「あら、レイカ。そうだったの?」


カレーヌ様がキョトンとしていた。

アンちゃんは苦笑している。

「ウン。でもね、最近ウチの領内から出た良いやつを貰ったから。」


そこで母がルビーの指輪を持ってくる。

「カレーヌ様、これがレイカの指輪ですよ。」

「まあ!素敵なピジョンブラッド!」

カレーヌ様の目が煌めく。


いつのまに部屋から持って来たんだ、母よ。


「最近これと遜色ないのが採れたって聞いてるの。

まるでカレーヌ様のおめでたい話を待ってたみたいね!?」


「おばさまー!嬉しい!」

カレーヌ様は口を覆って喜んでいる。


そう。母には裏がない。思ったことをそのまま口に出している。

おべんちゃらやお愛想を言わないのだ。

そしてカレーヌ様もそれはわかっているので、感慨はひとしおなのであろう。


「すぐにサンドに持って来させましょう!」

フットワーク軽いぞ、母よ。今から兄に電話する気だな。

「あ、ではエリーフラワー宝飾店に届ける様に言った方が良いですよ。その方が話は早いや。」

アンちゃんが口を出す。


「レイカさん。やはりあのルビーのお代は私に出させて下さい。私がカレーヌ様にあげたいのです。」

レプトンさんが私を正面から見据えて言う。


あら。

レプトンさんのまわりに、


きりっ。


という描き文字が見えるようです。

(昭和のマンガの表現です。)



「えええ?大丈夫?ねえ、レイカ。」

(でも、それお高いんでしょ?

という心の声が聞こえてきます……)


そして私を上目遣いで見るカレーヌ様。

(ねええ、お勉強してよう。

という心の声も聞こえてきます……)


「わかってますよ、カレーヌ様。お友達割引きでしょ。」

微笑む私。


「うーん!レイカ!大好きっ!!」

ババン!と抱きついてくるカレーヌ様。


まったく、アンタにゃ敵わない。



その時。

ニャーニャーーー!!


猫カフェ中の猫が入り口に集まる。


扉を開けてマーズさんが現れた。


「おや、噂のお二人がお揃いだ。この度は本当におめでとうございます。」


「ありがとうございます。マーズ様。」

レプトンさんが頭を下げる。


「良かったですね、レプトンさん。貴方がカレーヌ様を好きなのはみんな知っていましたからね。」


マーズさんが微笑む。


「リード様の所のお仕事をお辞めになるとか?

良ければウチで働きませんか。

貴方のようなまっすぐなオーラをお持ちのかたなら大歓迎です。

サーカスや牧場や動物園にご興味は?

あ、それよりホテルや不動産関係の方が適任かなあ?」


ニコニコとするマーズさん。

手帳を出して、

「うん、この日とこの日が空いてます。面接は飛ばして、打ち合わせや職場見学なんかいかがですか?」

相変わらず仕事が早いお方である。


「ウフフ、嫌だわマーズさん。レプトンさんはウチに婿に入るのよ。まだどの姓を名乗るか決めてないけれども。

ウチのお仕事を手伝ってもらうのは決まってるの。

ね?」


「はい。」

また、キリッ。としているレプトンさんだ。


「そうですか。それは先走ってしまったな。」

マーズさんは頭を掻く。まったくその通りです。


「でも、それで良いのですか?私やネモ兄からとりなせば、リード様の側近に戻れるかも知れませんよ。」


ああ、マーズさんはリード様が慰留してるのを知らないのだな。

世間では処分した、で終わっている話なのだから。


「ええ、構いません。

好きな人と一緒に暮らせる。いつも顔が見られる。

話ができる。それだけで良いんです。

惚れ込んだ女性と結婚できる。

――それ以上のしあわせは、無いと思いますから。」




青空のようなからりとした笑顔でレプトンさんは笑った。

その表情に一点の曇りも迷いも無かった。




そしてみんなを赤面と感動の渦に巻き込んだのだった。


ムッシュかまやつの、バン・バン・バンからです。

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― 新着の感想 ―
確かに、こうなったレプトンさんには誰もかなわない。 遊び上手ではないが、にくい男かも。 レイカさんがいちいち「昭和の漫画のように」ってつけるキリッが面白おかしい。
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