続きの話を数えましょう。誰よりも側で聞いていた人の話を。
誤字報告ありがとうございます
さて、気になるから聞いておこう。
「昨日エリーフラワー様がミッドランド邸に行かれたんでしょ。どうなりましたか?」
「ええ、まず良く効く軟膏と湿布を持って来てくださったのです。私が打たれたのはツッチーから聞いたとか。それから、」
レプトンさんは微苦笑した。
「おーほほほ。この度はおめでとうございます!私、嬉しいですわあ!」
と、開口一番言い切って下さったそうだ。
「そこで両親とも、毒気を抜かれましてね。
ハイド君やメリイや龍太郎君が私を囲んでくれて、圧をかけたのです。」
「ああ、目に浮かぶようだわ。エリーフラワー様の高笑いが。」
カレーヌ様も同意する。
「それからたたみこんで下さったのですよ。『ご両親のように、消えなかった初恋の火種!それが今燃え盛る!美しいお話ですわあ。』
『ウン、オレの初恋の火もオリンピックの聖火のように長い道筋を運ばれて来て点火されて燃えてるぜ!それとも消えずの高野山の火かな?』
『もう。何言ってるのよ、龍太郎。でもおめでとう!レプトン兄さん。』とメリイ達も応援してくれました。」
ほうほう。
「はーん、それからエリーフラワー様は爵位を譲れと詰め寄りましたか?」
「ええ。」
困り顔のレプトンさんだ。
「私もそれは気が早いと思うのですよ。」
「それに私が爵位を貰えるようになるかも知れないでしょ。」
カレーヌ様も口を尖らせる。
「まあ、リード様とネモさんとの間のお話でしょうな。」
アンちゃんが顎に手をやる。
「それで母の表情が固かったので、とりあえず私は家を出る事にしました。
やはり義父の爵位の話は寝耳に水でしょうから。」
「まあなア。いきなりな展開に驚かれる気持ちもわかりますな。
家を出るのもケジメとして、国の内外的に良いですね。ホテルに住むのですか?」
「ええ、公宮の寮には戻れませんよ。今、辞表出してますから。
ホテルからカレーヌ様の所へ通い、お仕事を覚えるつもりなんです。」
ほお。
「当初の予定では駆け落ちというカタチでカレーヌ様の家に転がりこんでもらうつもりでしたケドねえ。
そのまま住んじゃいなさいよ。」
アンちゃんがニヤリとする。
「そうよ、ホテル暮らしよりウチに居なさいよ。ご飯もちゃんと食べさせてあげるから!」
「え、そんな。カレーヌ様。……良いのですか?」
赤くなるレプトンさんだ。
「ふん、だって婚約者じゃないの。」
赤くなってツン、とするカレーヌ様だ。
「婚約者…良い響きです。」
レプトンさんのまわりに、
じいーーん。
という描き文字が見えるようです。
(漫画の)
「もう、入籍しちゃいなさいよ。」
呆れ顔のアンちゃんだ。
「でもネ、リード様のお仕事に未練はないのですか?」
「はい。」
「あんなに慰留されてるのに?まあしばらくは第三側近に格下げかも知れませんがネ。外国の言葉に堪能なレプトンさんをリード様が、手放すかなあ。」
「でも私はもともと商会の息子なんですよ。
商品を扱って、売ったりする方が性に合ってる気がします。元々はグランディで兄の補助をして、支店を任してもらって大きくしていくつもりだったんです。
…ルートも本来ならそのはずだったんですが。」
なるほど。
「えーと、王妃様は人のウワサも75日って、おっしゃってたの。だから三か月の減俸や謹慎で元通りじゃないかな。」
「レイカ、リード様のお考えはそうかもね。でも、とにかく早めに籍だけは入れた方がいいかしら。」
「カレーヌ様。」
あら、レプトンさんが赤くなってる。
「そうですね。式は後回しで。モスマンのシルクが入手出来たとして、それが出来上がったらウェディングドレスにするのかと思ってました。
でもね、横やりが入らないうちに入籍した方がいいでしょうな。」
「アンディ。私は式を挙げる気は、あまりないわよ。」
「え、カレーヌ様。」
驚きのレプトンさんだ。
「私は再婚だしね。ああでも、レプトンさんが挙げたいのなら、それでも良いけど。」
プイ、また横を向くカレーヌ様。頬が赤い。
実は挙げたいのかなあ?
「最初の結婚の時の式はどうだったの?」
「そこそこちゃんとした式だったわよ、一応王家の肝入りだったしね。母も尽力してくれたし。
ふん、あの鬼婆も最初は猫を被っていたしね。
そのまま順風満帆な結婚生活を送れるのかなと、思っていたわよ。」
「カレーヌ様。」
アンちゃんが泣きそうな顔になる。
そして、真顔になって、
「もう、その婆とは会う事は絶対にありませんよ。
ついでに、その息子夫婦にもね?」
と黒い笑顔で笑った。
「あら、そう。」
カレーヌ様も薄く笑う。
うわあ。これはそういうことよね?ざまあ?
それとも、黒魔と修羅?
春と修羅は宮沢賢治だったよな、といらん事を考えて現実逃避をする私。
「思ったより長持ちしたわよねえ?」
ああ!もう。やめてえ。
小柳ゆきさんの「あなたのキスを数えましょう」ですね。




