これで、いいのだ。
誤字報告ありがとうございます
とにかく、王子様達のパーティは終了した。
色々と修羅場だったが、お子様達はどうしていたのか。
ミネルヴァちゃんが、気をきかせて子供たちを中庭に連れ出して遊んだらしい。
「みなたま。シャボン玉を飛ばしましょう。立派なのが、できるのを考えたですわ。」
持参したシャボン玉液を出したと言う。
付き添ったピーターさんの話によると、
「ふふ、大きくできて、しかも割れにくいのをかいはつしたのですわ。」との事。
ああ、砂糖を入れたりすると丈夫なのができるって聞いたことがある。すごいね、自分で気がついたのね。
きゃっきゃっと、喜ぶ子供たちを見て、
「シャボン玉のはかなさは、じんせいの、ようですわ。」と、つぶやいていたという五歳児。
「今、むこうでは色んな話がくりひろげられてるみたいねえ。ふう。」とも付け加えられていたとか。
すごい。
あなたにしか王子様の妻は務まりませんよ。
さて、カレーヌ様とビレイーヌちゃんは私とエリーフラワー様とでウチのレストランに連れてきた。
運んでくれたのはキューちゃんだよ。
「もう遅いのですから。皆様泊まって行って。」
「ありがとう、レイカさん。」
「そうですな!アンディ様と語るのもいいですな!」
「エドワードオオ。大変だったのよー、話聞いてー。まずリード様のところに行ってさ…」
「さあ、お子様達はこっちへ。」
「こにちは。いえ、こばんわ。
ラーラしゃん。ショコラたん。おせわになりますわ。」
ペコリとするミネルヴァちゃん。
お利口である。いや、お利口過ぎる。
いや、本当に中の人いない?背中にチャックついてない?
……時々の舌たらずもわざとだったりしないよね?
「ううう、もう。何がなんだかわからないの。レイカあっ。
私何か悪かったのかしら、でもね、レプトンさんを手放すのは嫌なのよ。」
さて、混乱しているカレーヌ様。半泣きだ。
「そうよね。ヨシヨシ。」
抱きしめて背中を抱いてやる。
「こんな時にねえ。レプトンさんはまだグランディみたいだし。」
私がボヤけば、
「多分、自分でサードさんに話を通したかったんでしょ。」
エリーフラワー様が頬杖をついて続ける。
「とにかく、ホットミルクでも。お子様にも出しましたから。」
母が運んできた。
「ありがとう、おばさま。」
「ねえ、カレーヌ様。取りあえず入籍だけしちゃったら?叙勲は後から付いてくるとして。」
エリーフラワー様の爆弾発言だ。
「そうね、それが良いかも。」
おや。カレーヌ様。前向きじゃないの。
「再婚だしねえ。余計な横槍が入るまえにねえ。特に私は式も挙げなくてもいいわ。」
ゆっくりとミルクを飲んで気を落ち着けている。
「ほほほ、そうね。断れない縁談を押し付けられそうになったレプトンさんが、カレーヌ様と駆け落ちした。
そして、失脚した。
ま、そう言う筋書きで良いんじゃない?
王妃様にそういう風に漫画にしていただければ完璧ですわよ。」
「そうよね。レプトンさんに工房を手伝ってもらって、二人で発展させていきますわ!」
燃える瞳のカレーヌ様。
前向きで宜しい。
「そうだ。アイデアがあるわ。あの紅白のアメでね、恋しい人の名前をテーブルかどっかにかけば恋が叶えられると。そう言うのはどうですか?」
梅ヶ枝餅以来、さだ○さしさんの歌を思い出す私。
中学生の私が甦る。
「又は宙に書くと指揮者ゴッコみたいでいいかもですわね!」
エリーフラワー様も頷く。ジェスチャーで指で字を宙に書いてる。
あら、エドワードと書かれてる。
にくいねえ、熱いネエ!このォ。ヒューヒュー!
(私の中にど根性○エルの梅さんが降りてきた。)
「うん、そしてその時にはバラの形の角砂糖をシナモンティーにふたつ入れるのを忘れないことですよ。
そうするとおまじないの精度があがります。」
パンプキンパイにはちょっと早い。
残暑真っ只中の九月なんである。
「まあ!良いわねレイカ!そのアイデア。
王子様お誕生月フェアとして早速売り出すわ!
それにバラの形の角砂糖っていいわね?」
あ、そうかこちらにはなかったか。
昔、よく慶事のときに角砂糖セットを貰ったものよ。
お花の形もあったよ。名前が書かれてたから子供が産まれた内祝いかな?
赤と白の砂糖の花で。両方食べてどっちも同じ味かー、と思った昭和の子供の私だよ。
楽しい女子会トークで夜は更けていく。
私も客間にきて三人でのパジャマパーティと洒落こんだ。
子供たちはサマンサさんやショコラさんが寝かしつけてくれたし。
リビングではアンちゃんとエドワード様が飲んで語っているらしい。時々笑い声が聞こえる。
秘蔵のナッツを摘んでいるようだ。乾き物なら手がかからないから、適当にやってくれたまえ。
「でもまあ、アキ姫さまには気の毒だったけど、これで良かったですわよ。」
「そう、カレーヌ様に未練を持って結婚したら、グローリー前公爵の二の舞になっていたわ。」
「そうなの?エリーフラワー様、レイカ。ありがとう。」
「おほほほ。貴女みたいに厄介なワガママ娘にそこまで惚れ込んでくれる物好きはそうそういないわよ。」
「ま、ひどぉい。」
いいなあ。気がおけない人達の会話って。
「アキ姫さまにはもっと良い人がすぐに現れますわよ、ほほほ。貴女と違ってね?」
「ふん。言ってくれるわね。エドワード様みたいな善人じゃなきゃ、貴女の相手はつとまらないわよ。毒舌女。」
「まあ、ほほほ。ダーリンが最高なのはわかってますわよ。」
文字に起こすとギスギスしてると思われるが、本人たちは上機嫌である。
「良いわねー、こう言う仲間って。貴族社会の陰湿さとは大違いだわ。」
カレーヌ様がアンちゃん秘蔵のナッツに手を伸ばす。
「おほほほ。噂を追加して広めれば宜しいわ。
いつも花の形の角砂糖を溶かして飲んでいた。その恋のおまじないが叶ったってね!」
「うふふ。黙っていれば私、乙女チックなキャラですものねえ。」
カレーヌ様が口元だけで笑う。
「違うわよ。レプトンさんが毎日願掛けをしていたって広めるの。その方が信憑性があるわよ。」
エリーフラワー様が目を細める。
「あはは!」
思わず声を立てて笑う私。
「ひどおい、レイカ。」
「だって、恋の願掛けをするレプトンさんって。ヒーヒー。ハマりすぎ!」
ああ、可笑しい。
金髪のどちらかというと線の細い美青年が、
「ああっ、カレーヌさまっ!」
と呟いてシナモンティーをすする。
似合う、似合いすぎる。
「ふん、それならあの恋が叶うクッキーを一緒に食べてたって付けくわえなきゃ。」
「ああ。ハシビロコウのパンジーちゃんクッキーね。」
「そそそ。サードさんはね、一回もシークレットクッキーを引けなかったの。
でも、レプトンさんは3回もゲットしたのよ。」
「あら、凄い。」
「…という話を広めるのはどう?」
カレーヌ様。あなた立派な商人ですわ。
お気張りやす。




