選ばれるのは結局、お嬢様か。何にも知らないわけでは無いけど。
さて、次の日。王子様達のバースデーだ。
カレーヌ様が千歳飴を届ける予定である。
昨日、王妃様やリード様に、カレーヌ様がお菓子を届けるって話をしておいた。
スムーズに行くだろう。
……カレーヌ様はまだ知らないのだから。
アキ姫さまとレプトンさんの事は。
「レイカさん。おはようございます!」
エリーフラワー様が朝一番に顔を出された。
「おばさま、こんにちは。」「こんちは。」
ミネルヴァちゃんにサファイア君だ。
可愛いなあ。ミネルヴァちゃんはおめかししてるよ。
エドガー王子様の婚約者としてのご招待されてるからね。
「おほほ。パーティは午後からでしょ?それまで子供達を遊ばせて?」
「ええ。」
「それに、情報をすり合わせたいの。レイカさん、ここ何日か大変だったわね。」
才女様の言葉に頷く私。
「ええ、疲れました。気疲れかしら。ここ二、三日めまぐるしくて。」
やはりその話をしたくていらしたのね。
「さ、お子様達はこっちでね。」
母とラーラさんとサマンサちゃんが見てくれる。
「何を飲みますか?りんごジュースが良いかな。」
「積み木で何かつくりますか?」
楽しそうです。
エリーフラワー様とリビングの端に移動する。
アイスコーヒーをリクエストされた。
「まさかねえ。カレーヌ様がねえ。おほほ。あの人も、随分と素直になったこと。」
うわあ。ガムシロップをドバドバ入れてらっしゃる。
「エリーフラワー様、どこまでご存知なんですか?」
「そうね、メリイさんから聞いたと言うか、龍太郎君経由でキューちゃんに話が通って、それをダーリンが聞いて私に話してくれたの。」
すごい伝言ゲームだな。
間違って伝わってないといいが。
(昔パタ○ロで、伝言するうちに内容がめちゃくちゃ変わってるってあったな、プリンスがプリンスメロンになったりとか、田楽がなんとかって。)
「リード様がレプトンさんに、告って振られておいで、っておっしゃったわね。私もその場にいたでしょ。」
「ええ。」
「次の日龍太郎君がカレーヌ様の所に行ったら、レプトンさんがプロポーズしていて、カレーヌ様がツンデレで、でも、結婚を了承したと。」
まあ、そうね。
「レイカさんのお母様にカレーヌ様が懐いていたと。」
「ええ。そこが重要なポイントかどうか分かりませんが。」
「龍太郎君が憤慨してたの。オイラのオッカサンなのに。って。」
「なんかそれ、いつも思うんですけど。母の子はワタシなんですけどね?」
「それで龍太郎君はアキ姫さまが可哀想になって、慰める為にイカを取りにいった。ドラゴンビーム!でイカ達をフラフラにさせて、ドラゴンブレスで吸い上げたと。」
「え、そうなんですか?」
「イカを見てレイカさんが泣いて喜んだと。」
…うん?
「まあ、喜んだでいいです。美味しかったし。」
「それで王妃様やリード様、アキ姫さまとお食事会で丸くおさまったと。」
「概ねその通りです。」
「レプトンさんは、リード様にキツく怒られてクビになったとか。カレーヌ様のところに転がりこんだとか。
ミッドランド夫妻もキツく怒って追い出したとか?」
「え、そうなんですか?リード様はレプトンさんを引き留めてると聞きましたけど。」
「あら、そう。」
エリーフラワー様は薄く笑う。
「リード様が激怒してレプトンさんを処分したと言うことを国の内外に知らしめることが必要なんですわね。
すこし尾鰭が付けてね。アンディ様と龍太郎君がせっせと広めてるってことですわね。」
「なるほど。」
「そしたらレプトンさんもカレーヌ様と結婚しやすくなる。」
そこでエリーフラワー様はため息をつく。
「ミッドランド夫妻は、学園では私の部下。明日にでもお話をしましょう。この縁を壊さないように。
夫人の方がカレーヌ様に拒否反応があるみたいだから。」
「ああ、サードさんの件で?」
「そうねえ。息子二人が彼女にコロリとまいってるから。微妙な気持ちなんでしょう。
初恋にこだわるのはグローリーの血筋かしらって。言ってるみたいよ。」
「ふうん。でも初恋にこだわったのはミッドランド夫妻もそうでしょうに。」
「そうよね。自分のことはわからないものなのよ。
指摘されたらわかるんじゃない?
まあ、その辺から攻めていくわ。」
うん、エリーフラワー様が説得されたら百人力である。彼女に口で勝てる人はそういない。
「カレーヌ様も散々苦労された。お友達だし幸せになって欲しいのも本当なの。
でもね。本人が知らないところでアンディ様にもヴィヴィアンナ様にも、リード様にも、もちろん私にも守られてる。
レイカさんにだって、レイカさんのお母様にだって。
何かしら。末っ子気質かしら。みんなが構って守っちゃう。
……良いわよねえと。あの子ばっかりって。ちょっとだけ羨ましく思っちゃうわあ。」
エリーフラワー様は毒を吐く。
更にガムシロップ追加だ。甘いもので心を落ち着けようとされてるのか。無意識か。
「まあそうですね。彼女には色々巻き止まれてきましたが、嫌いにはなれませんね。」
エリーフラワー様の反応はまったくもって普通なのだ。ヴィヴィアンナ様が出来すぎなんである。
「ま、彼女も義実家でとても苦労された。レプトンさんとしあわせになって欲しいのも本心なのよ。
どっちかと言えばレプトンさんが落ち着くことでエメリンも諦めるだろうし、」
そこでチョコクッキーも口に入れて話を続ける。
「アキ姫さまとレプトンさんの噂で、エメリンがアキ姫さまに突っかかってたのも頭痛のタネだったのよ。彼女達、寮では隣室でしょ。」
「ああー、そうでしたねえ。」
エリーフラワー様も大変だったなあ。
「それでね、こっそりと騎士とか影とかを増員してアキ姫さまを守っていたんだけど。
でもねえ、カレーヌ様ならエメリンに負けないでしょ、肩の荷がひとつ降りたわ。」
それにカレーヌ様の護衛ならほっといてもアンちゃんが手配するだろうし。
「まあ、色々あるわねえ。後はミッドランド氏に侯爵位を将来レプトンさんに譲るかどうか、確認しなくては。」
「え?ミッドランド氏は侯爵でしたか?」
エリーフラワー様は笑った。
「そう言うのに無頓着なのがレイカさんの良いところよ。貴族の学園の学園長でしたでしょ。高位貴族に決まっていてよ。」
「そうでしたか。」
「本当はね、ローランド氏のお兄様が侯爵位を継いだのだけど、未婚のまま夭折されて。
まだ、ローランド氏がマナカ国で働いていた頃ね。
それで戻ってきて爵位を継いだの。それからグランディの学園長になったのよ。」
「知らなかったですよ。」
「ただね、お兄様が継いだ時はもう名ばかりの侯爵家だったらしいのよ。ご両親が戦争で亡くなったあと色々騙されたみたいね。だから領地もほとんどないから、ブルーウォーターにすんなり移住されたのよ。」
「はあ。」
「で、ミッドランド氏には実子がいないから、レプトンさんに継がせる。そうすれば、カレーヌ様のお兄様も納得するでしょ?」
「将来の侯爵夫人だからですか?」
「そう。この結婚をスムーズにするために、そこは念押ししなくては。
カレーヌ様のご実家のヴィトー家はそう言うのに、うるさいですからね。」
「なるほど。」
面倒くさいなあ!貴族の結婚って。
しかも根回ししてくれるエリーフラワー様!
優しいぞ、素敵だそ。偉いぞ。
「ねえ。カレーヌ様、その辺わかってるのかしらねえ。」
エリーフラワー様はため息をついて、甘いアイスコーヒーを飲み干すのだった。
「夏が来る」の歌詞からですね。大黒摩季さんの。
タイトルネタ。




