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思い過ごしも、思い込みも恋のうちかもね。

誤字報告ありがとうございます

 師走。ウチの前を走る男子たち。

「さあ!もう一周でござる!」

「はい!エドワード様!」

「どう?いい汗かいてるか?」

エドワード様とミルドルとアンちゃんである。

有り難くもミルドルを鍛えてくれてるのだ。

「私も混ぜて下さいな。」

「おう、マーズさん。いらっしゃい。」


久しぶりである。マーズさんはアンちゃんの筋トレ仲間なのだ。


後の方で、シュッ、シュッと音がするのは、シンゴ君たちが鍛えてるみたいだが、

速すぎて良くわからない。


母が見学したいというので付き合ってるのだ。

ううっ寒いぜ。

垣根の曲がり角で落ち葉焚きをして待つ。

あたろうか、あたろうよ。なんである。


(ここは異世界です。みなさん、野焼きはしないで下さいね。)


「焼き芋が焼ける程の時間はないよね。」

やった事がある人ならわかるだろうが、焚き火で焼き芋を焼くのはなかなか難しいのである。

割と時間かかるし、焦げる。

昭和の昔。冬休みに九州のおばあちゃん家に遊びに行って、従兄弟が焼き芋焼いてくれたが焦げていた。

焦げを剥がすように食べたものだ。

アルミホイルは使ってなかったな。まだそこそこ高価だったから。

ここにアルミホイルが有れば良いんだけどね。

やはり、石で焼くのか。いーしーやーきーいもーか。

冬、スーパーに入ると入り口あたりに置いてあって。いい匂いがするんだよねえ。


「あー、おばあちゃん、レイカ叔母さん。おはよう。」

ミルドルが来た。

「おはようございます。」

アンちゃんや、エドワード様達も来た。

簡易テーブルに保温ポットが置いてある。

あったかいコーヒーをみなさんどうぞ。

保温ポットはもちろん、メリイさんとエリーフラワー様の共同開発なのである。

メリイさんの知識でエリーフラワー様が制作の指揮を取った。

バカ売れしてるらしい。

(特注品には龍太郎君のウロコのカケラが埋め込まれてる。これもそうだよ。毒消し効果もあります。)


「あー、あったまるう。」

「ミルドル、そう言う時は五臓六腑に染み渡ると言うのでござるよ。王妃様がそう言ってござった。」


おい、エドワード様。悪気なく何を教えてるんだ。


「ハイ、エドワード様。」


「おい、エドワード。そんな事いうからさあ、初等科の食堂で、スープを飲むたびに、

ゴゾーロップ!ゴゾーロップ!とガキどもが叫んでるそうじゃねえか。」

アンちゃんが呆れ顔である。


「ミルドル君も来年、中等科にはいるんだろう?」

「はい、マーズ様。受かれば。」

そこで大人たちは目をそらす。

実はエリーフラワー様の一言で、ミルドルの推薦入学はほぼ確定なのである。

知らぬは本人ばかりである。


「そうでござるな。エリーフラワーから問題集を預かってござるよ。ちゃんとやっておくように。」

「はい。」


マーズ様が目を見開く。

「なるほど。このあと剣の稽古もするんでしょ。

入学前から剣術はエドワード様。お勉強はエリーフラワー様が見てくれるなんて。キミ、凄いね。」

「まあ、入学したらあまり構ってもやれないでござる。」


そこでミルドルは頭をあげる。その目はどこまでも澄んでいる。

「はい。立派な騎士になってヴィヴィアンナ様をお守りしたいです!」


マーズ様は微笑んだ。

「なるほど。強くなれば王族の警護もできるよ。

ここには第一騎士団はあったっけ。」


「必要なときはグランディの騎士団が来てくれてますが、この国独自のはないですね。ま、貴族の方は個人的に雇っていらっしゃるようですね。」


「ああ、動物が守ってくれるからか。」

マーズさんの薄荷色の目が煌めいた。

動物を使役できる一族の目だ。

「そう言うのも考えなくては、いけないのか。

兄に言ってみるか。ミルドル君、励みたまえ。

健全な精神は健全な肉体に宿るという。

筋トレ続けてね。」


「はい!鍛えておばあちゃんや叔母さんや、ランやアスカを守ります。」

「えらいぞ、坊主。」

アンちゃんも優しい顔でくしゃっと微笑む。


「そして!フィフィ先生とお付き合いして結婚したいです!」


うん?


「それは、フィフィ・ヤーン先生ですかな?」

固まるエドワード様。

「はい!」


「ええと、君はヴィヴィアンナ様に憧れていたのでは?」

マーズさんもびっくりだ。

「はい!あの方を先日お見かけして、その素晴らしさに心を打たれました。あの気高い美しさ。

お仕えしてお守りしたいとは思います。

まさしく女神像のようでした。」


「あー、そうか。では、フィフィ先生は?

高嶺の花ではないのか?」

アンちゃんは無表情になっている。


「あの人はドジっ子お姉様です!血肉が通った人間です!」


ヴィヴィアンナ様を神聖化したのか。それはわかる、わかるけども。


「…はは、そうなんだ。うん。恋とは思い込みから始まるのかも知れないね。

まあ、彼女は素晴らしい先生だ。

頑張って、勉強して自分を磨くんだよ。

…長く見てると色んなことを知る機会もあるだろう。

キミの心が折れないことを、切に願うよ。」


奥歯に物を挟みまくってマーズさんは帰っていった。


「 ? 」

「まあ、蓼食う虫もナントカと言いますからな!

ミルドル、拙者は反対はしないが応援もしないでござる。文武両道を極めるのですぞ。」

「はい!エドワード様。」

「さあ!ひと休みしたら、剣の打ち込みを見てやるでごわす!」

「はい、お願いいたします!」


二人は室内へ剣を取りに行った。


「…アンディ義父さん。」

後にシンゴ君が立っていた。

「…何も言うなよ!俺も混乱してんだ。」

「ミルドルって。一度ぶつかっただけのフィフィさんがそんなに?気にいったの?」

母も大混乱である。

「だって、あの子はサンドんとこの跡取りでしょ。」


サンド兄は私の長兄である。ランド兄は次男。

(こないだまで、あーだ、こーだと、やってたサードさんはメリイさんの方の兄さんだ。)

ややこしくてごめんなさい。でも、あんまりサンド兄は出ないから。多分。



「お母さん。多分ミルドルは弟か妹が産まれるから自分は跡取りにならなくてもいいと思い始めたのでは。」

「そんな。」

「まあなア。でもさ、レイカちゃん、お義母さん。アイツがどこまで剣を使えるようになるかわからないよ。

やはり天賦の才能ってものがあるんだ。

騎士団が出来ても入れないかもしれない。

そしたら、腕っぷしの強い跡取りになるだけさ。」


「それもそうね。」

母は切り替えが早い。

「それにフィフィさんは5つか6つ年上でしょ。洟もひっかけてくれないんじゃない?」

ケロリとして、カラカラと笑った。


うん。そうだね。きっと。


まあ、学生のときに若い先生に憧れる生徒は沢山いた。

心配することは無いのかもしれないなあ。



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