人間50年
「__って訳で会社辞めて来たからよ次の働き場所見つかるまで親父の元で働くよ」
帰って来て早々、先程の出来事を話し確固たる宣言をしながら片手に買ってきた大福餅を頬張る娘…判断力と行動力が凄い、これは俺には持ってないから母親似なのだろうか
「ふーんまあ基本日雇いと畑作業くらいだぞ?…あと食う前に手を洗え」
「ウェットティッシュがあるじゃん__あーあたしもそんな感じで暫く生きていくよつうかこの大福餅美味いなぁ!」
確かに人気商品らしくて試しに買っては見たけれどそんなに美味しいかったのか
「それ一時間程並んで購入してなって、九仙と俺の分は残せよ?」
「モグモグ…そういや過去のあたしは?」
食い意地はってるなあ…いや美味そうに食うからいいんだけれどそんなリスみたいに頬張って食うと喉に詰まらせないか此方は不安になるなあ
「あの娘は図書館で勉強してんだともう少しで帰ってくるだろう」
しかし学生の方の九仙は勤勉だよな…これも俺には似てないが似なくて良かったのが幸い。
「へぇあたしは勉強とかからっきし…興味ある分野しかやらんからなあやっぱりパラレルのあたしなんだねぇ」
あ、そこで認識するんだしかし
「俺も勉強はからっきし頭悪いから身体で覚えることが多かったな…興味ある分野は覚えることができたな」
「親父は昔から要領悪いんだな んでもって興味ある分野になると途端にIQ上がるよな」
うるせぇ要領が悪くてもまわりに恵まれていたから生きてこれたんだ
「まあそうだな思春期の頃は嫌なことから逃げて暴れて入院させられての繰り返しだったからなあ当時の方々や弟妹や母さんには頭があがらねえよ…」
「え、親父って少年院あがりなの?」
それは入所って云わねえか?
「失礼な病院だよ病院!精神科にぶちこまれてた…(あれ、少年院と変わらんか?むしろ精神病で暴れていたとなるとそっちのほうがたち悪くないか?)」
「??親父…あたしもあまり頭よくないからあれだけどよ長期の精神科に入院と少年院へぶちこまれるのってどちらも更生目的じゃん」
あー!俺が思っていた事がこいつに言葉にされたぁ!
「と、取り敢えずこんな時はGoogle先生に聞いてみよう」
そういって俺はスマホで調べた取り敢えず更生とはなんぞや
「…うーんあんまり変わんないな物理的に罪になるレベルの危害&精神異常なら少年院、法律的な罪は犯してないが放置すると危ないので措置入院が精神病院というところだろうか」
どちらも全うに未来を生きるための更生なんだなぁ
「で、でも親父はしっかり治療して今を生きてるじゃねえか」
娘に気を使われた~!
「…そ、そうだな よしこの話しは終わりな?」
「お、おうそういやあたしは60年後から来たって言ったじゃん?」
そういや一度50年後の未来へ帰ってから10年後に此方へ戻って来たんだっけ
「親父が還暦はとっくに過ぎた爺なのにあんまり変わってないんだよ」
なんだそんなことか…
「そりゃあ今の俺はアラサーだろう?でもおっさんの前に一応仙人だからね不老長寿なの」
「いやそれはそうだよあたしも金丹飲んだからもう不老長寿だけれどさそんなに見た目変わらなくなるものなの?」
未来の俺の姿が分からんが、…話の流れ的にはどうやら頭は禿げてはいないようで安堵の溜め息をつくおっさんの俺
「ちょっと質問に答えろよなんだその気色悪い笑みは…キモいわあ」
「うるせぇ爽やかな笑顔の間違いだろうが!…んっん、容姿についてだなそれは人間50年て言うだろう?本来の自然年齢は人間50年くらいで人生に幕を卸すのよ」
「それっていつの時代の話だよ大昔の話だろうがッ!」
俺は目の前で吠える娘にチッチッチと指を振る
「それがそうでもないんだなぁ…いくらこの国が途上国つったっても平成に入るまで幼い子供もわりと亡くなっていたし医療保険や社会保険も充実していなかったからなぁ。病でそのまま生き倒れるのもそう珍しくはなかったぞ」
「う、うぜぇ!…いや待って?でも昭和の人って結構しぶとく生きてたじゃんあたしが幼い頃もちらほら見かけたし」
へ、ヘイトスピーチ!それ俺の親世代も入りますやん!
「しぶとく生きた大半の人は戦争経験者と戦後の復興とベビーブームの世代でしょ、ん?いや待てよ平成中期迄なかなか…いやいいかなんの話だっけ」
「人間50年の例えは古い」
そんな話だった?
「…えーあ!そうそう俺の見た目があまり変わってないって話だろうが未来のことは良く知らんが医療技術はもちろんのこと古代から長生き出来るものには決まった習慣があってだな__」
「つまり親父は科学医療に助けられたんだな」
話かいつまみ過ぎやしませんか?
「科学医療もそうだろうけれど若い頃から疲労を溜め込まない事と食生活じゃないか?仙人とて人だし超越するのにも己の身体の構造を理解した上でだな__」
「話が長い!要するに飲んで食って寝て動いて學んで休んで糞してまた寝ろって事だろ!」
そうなんだよ確かにざっくり纏めるとそうなんだけれど…
「お前さぁ淑女の嗜みとか學んでみたら?外では完璧に猫かぶり出来てるんだからどうだろう茶道とかアロマ教室とか通ってみるのは」
習い事の類いの広告はよく投函されるからな
「はあ?堅苦しいのはごめんだねあとアロマはたまに自分でやってるし!」
そういやわりと淑女…乙女チックだったわ
「最近部屋がいい匂いにまみれてるよなそれはいいんだけれど物が多くなってないか(主に少女漫画系統と推しグッズ)少し片付けてくれよまともに寝れないから…」
俺、押し入れで寝かされてるんだぜ唯一である俺一人の空間も娘の私物に侵食されつつある
「親父もあの骨董品とエロ本何とかしろよ埃とカビ臭いのはいいとして二束三文にもならん物が多くて嫌になる少しは財産になる物くらい所有してみろよ!」
「なんだと?お前とどっこいどっこいだろがい! _それよりお前も物と者を結ぶ橋渡しの付喪仙流の端くれだろうが あの匂いがたまらん…じゃなくて、資産価値なくても俺にとっちゃあ大切なんだよ!つーか、一部マニアに売れば高値になる物だってあるっての!!」
刹那二人に殺気が流れた互いの大切な物を貶されたゆえの口論、どちらの拳が先にとんでくるのかにらみ合い間合いをとる__




