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二つの影

「風侍くんどうするの?」


「死体は細切れにして魚の餌にする」


 その発言を聞いてドン引きした。


「冗談だからね!」


「冗談でもちょっと……」


 紫萄は距離を取り、 ゴミを見るような目で風侍を見つめる。 それほど、 嫌だったのだろう。


「発言撤回するのでお許しください!」


 風侍は土下座し、 許しを請う。 ため気をつき呆れた表情を浮かべた。


「……はい」


「死体は僕が処理しますので紫萄さんは職場に戻ってください」


「そうさせてもらいます……」


 紫萄はその場を離れた。 彼女は気づいて無いが()()()()()()()()


「さて……()()()()回収しますか……」


 そのままどこかへ向かった。 その頃、 カラボックルでは緊急会議が行われていた。 けつもちの否ン苦魔宇素(ピンクマウス)の構成員がやられた事についての会議だ。 皆、 険しい表情を浮かべている。


「たかがカスの構成員が死んだだけでこれ程の会議を?」


 金髪ツインテの女がリーダー格の女に問う。 彼女はB子という名前で北海道出身。


「今回の会議は()()()()にまつわる情報を手に入れたわ……」


 女は風侍が営んでいるカフェの写真を提出した。


「カフェ?」


「そうよ、 でもただのカフェではないわ……このカフェは()()()()荒川の一族が営んでるのよ」


 女は激しい怒りの表情を浮かべた。


「あの荒川が! ゆるせん! ユルサンゾ!」


 B子は噛みしめ机を叩く。


「あとこれ……」


 紫萄が会社に行くときに取られた写真も提出された。 B子がその写真を見て驚いた。


「あのクソブス生きてたのか! 今度はあいつの前で親ぶち殺してからじっくりいたぶって殺してやる!!!」


 B子は怒りの表情を浮かべた。 まるで、 ゴミカスの様に。


「今のところは否ン苦魔宇素(ピンクマウス)に任せましょ……最悪イレブンナイツを派遣させるから」


 イレブンナイツとはカラボックルの親衛隊でかなりの手練れらしい。その頃風侍は死体の処理後とある人物に電話をしていた。


雷火(らいえん)~元気してるか?」


「お! 兄か! 戦争以来だな! どうした?」


 通話相手は風侍の弟と思われる。 彼らの出身地では「()()|《・》え《・》()」と呼ぶ事があるそうだ。


「旭川女子高生殺害事件について調べてほしい」


 その事件は、 紫萄と容姿酷似している女子高生が同年代の女子高生5人に川に放り投げられ、 凍死させられたという悲痛な事件だ。 最悪な事に犯人は特定されたが捕まらず今もどこかで過ごしているが、 カラボックルに実行犯5人組がいる可能性が高い。


「いつの時代だよ……お前が高校の時に起きた事件じゃねぇか……」


「その事なんだが……被害者多分生きてる……」


「は!? それは本当か!」


「確証が無いが容姿が一致しているのと年代が同じだ……」


「北海道なら()()が行ってるハズだ」


 水迅は風侍と雷炎の弟だと思われる。 現在は北海道にいるはずだ。


「そうか! じゃあ早速水迅に連絡を……」


 風侍は何かを察したように後ろを振り向く。 すると、 警察官の服を着ている否ン苦魔宇素(ピンクマウス)の半グレ10人が拳銃を構えていた。


「雷火また電話するわ!」


 電話を切りすぐさま後ろを振り向く。その直後半グレは発砲、 蜂の巣にするが一瞬で傷口が塞がる。


『霊竜の爪』


 その刹那、 風侍の両腕がナイルモニターの様な形状となり、 爪に自身の血液が纏う。 空間を引っ掻き血液を飛ばす。 この時、 飛ばされた血液は水圧カッターの様に鋭い。 一瞬で全ての半グレを三枚におろした。


「俺の店人気だな~」


 辺りを見渡す風侍、 近くの電信柱に仕掛けられた監視カメラを見つけた。


『死桜:血閃』


 監視カメラを両断、 その場から立ち去る。その頃紫萄は休憩時間に入っていた。


「はぁ……疲れた」


 ぐったりとしていると、 そばかすの付いた丸眼鏡をかけた茶髪ポニテの同僚がコーヒーを2つ持って近づいてきた。


「おつかれさま~」


「おつかれ~めっちゃ疲れた……」


 紫萄がコーヒーを受け取ると同僚は隣に座った。


「あの店どうだった?」


「味は良かったけどマスターが積極的」


「へ~そうなんだ」


「そうそうそれでね……」


 2人は楽しそうな会話をしている中で1人の警官が来店した。


「すみません。 影水紫萄さんはいらっしゃいますか?」


 その声を聞いた紫萄はひょこっと顔を出し挨拶をした。 風侍かと思いきや見知らぬ男だ、 そのうえ異質な雰囲気を漂わせている。


「あの……なんの用ですか?」


「先ほどあのカフェで3人の警官が殺害されまして、 その事で所まで一緒に来てください」


 紫萄には心当たりがあったため、 警官について行った。 2人が路地裏に入った瞬間、 警官が足を止め銃を向けた。


「貴方はここで死んでもらいます、 影水さんいえ……」


 突如、 豹の様な影が警官の頭部を三枚におろした。 この影は紫萄に取り憑いている何かだと思われる。 その様子をカメラで撮影している女がいた。 その女は自身の承認欲求を満たすためにこの様な行為を行っている。 しかし、 それも今に終わる女の命と共に。 背後から巨大なトカゲの様な影が頭に齧り付き左右に激しく振り回す。そのうえ、 爪で皮膚と肉を何度も引き裂き赤黒い水溜りができた。 頭を離すと皮が引きちぎれ、 肉が少し溶け吐き気のするような気持ち悪い臭いが漂い始めた。その後も肉を貪り辺りには血肉と糞便が飛び散っていた。


 その近くに風侍がいたため、 恐らく影の主は風侍なのだろう。


「ああ……修理費が……」


 絶望した表情を浮かべながら店に帰っていった。

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