③
酒と肴を楽しんでいた勝久に異変が発生する・・・。
-③ 見た目とのギャップ-
辣油をドバドバに入れた干焼蝦仁炒飯を完食した酒井勝久警部は自分の為に特別に用意された青島ビールを一気に煽った(※ここからは「勝久」と表記します)。
龍太郎「おい酒井、1本しか用意してないんだから大事に呑めよ。」
勝久「すみません、好きな物はどうしても我慢出来なくなってしまいまして。」
龍太郎「お前確か・・・、そうだ、紹興酒も頼んでいたな。用意するよ。」
勝久「恐れ入ります、それとお手洗いをお借りしても良いですか?」
龍太郎「勿論だ、あっちにあるから行ってこい。」
勝久は急ぎお手洗いへと向かった、酒特有の利尿効果がかなりの割合で発揮された様だ。
勝久「ふぅ・・・、ん?あれ?」
スッキリとした気分になった勝久はある異変に気付いた、かなりまずい異変だ。
勝久「財布・・・、忘れた。」
衣服のどのポケットを探しても見つかったのは先程タクシー代の支払いに使用したゴールドカード1枚のみ、勝久は顔を蒼白させながら席へと戻った。
龍太郎「ほら、紹興酒だ。ゆっくりしていけや。」
店主の笑顔を見て罪悪感を感じているのはその場では勝久だけであった。
勝久「あの、警視・・・、いや龍さん。1つお聞きしたいのですが。」
龍太郎「ああ、何でも聞きな。」
勝久「ここってカード大丈夫ですかね?」
龍太郎「いや、うちはニコニコ現金払いのみだ。」
龍太郎の答えにニコニコなんて出来る訳が無い勝久。
龍太郎「お前、まさか・・・。警察の人間が食い逃げなんてしないよな?」
勝久「すみません、財布をホテルに忘れました。タクシーもいつも通りカードで払ったんで大丈夫と思って油断してました。」
焦る勝久に近付く文香、因みに勝久は顔を赤らめた目の前の女性が刑事だという事をまだ知らない。
文香「あの・・・、立て替えておきましょうか?」
勝久「良いんですか?恐れ入ります。」
龍太郎「文香ちゃん、大丈夫大丈夫。ありがとう。」
龍太郎は文香を止めた後にテーブル席や座敷席の方向を見廻した。
龍太郎「丁度客も増えて来たから働いて返させるよ。酒井、そんなに呑んでいないから注文位は取れるだろ?食った分、働いて行け。」
勝久「はい・・・。」
勝久は龍太郎から予備として置いてあった注文用の伝票用紙を受け取ると座敷席へと向かった、普段はハンディターミナルを使用しているが流石に初めて触る機械をすぐ使いこなせるとは思えない。
勝久「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか?」
客①「お兄さん、顔怖いんだけど。」
勝久「すみません、不器用者でして。直そうとは思っているんですけどね。」
客②「癖なら仕方ないのかもね、えっと・・・。」
センスや筋が良いのか、初めてとは思えない位にてきぱきと注文を取っていく勝久。
勝久「通します、唐揚げ②!!餃子③!!瓶②にグラス②、紹興酒②です!!お持ち帰りオーダー待ちでお願いします!!」
龍太郎「あいよ・・・、と言うかお前、バイトでもしてたのか?」
勝久「俺の実家の近くで古い友人が拉麵屋をしていたんで、ちょこちょこ手伝ってたんですよ。あ、あそこの注文聞いて来ます。」
龍太郎は文香たちと勝久から手渡された伝票を見て笑っていた。
龍太郎「あいつはあんな見た目なのに何でこんな好美ちゃんみたいな筆跡になるんだ?」
文香「か・・・、可愛い・・・。ラブレターみたいな丸文字じゃん。」
文香は改めて勝久に惚れた様だ。