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念願の異世界転生したら、勇者じゃなくて聖剣(幼女)でした  作者: きびだんご
1章 私、勇者に会う
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1-☆ 夢の中へ いってみたいとおもいませんか♬

「あ~れ〜。助けて、勇者さま〜」

「ぐはははは! 王女さえいなくなればこんな国、容易く攻め滅ぼしてくれるわ!」

「あ〜れ〜!!」


暗闇の中響き渡る、女の子の悲鳴?といかにも悪役の笑い声。


はっと気づくと、そこは豪華絢爛な大広間だった。


「こら、勇者シア!王の御前だぞ、姿勢を正せ」

「は??」

頭をコツンと叩かれて、何のこっちゃとそちらを見たらやたらごっつい鎧に身を固めたアレンがいた。


せっかくのイケメンが台無しの、やたらごっつい肩からトゲが生えた鎧(大人用)の首元から、鼻から上だけが見えている。敵が攻撃したら多分4分の1くらいダメージ受ける感じのやつだ。


…兜、かぶれなかったんだ…。


「どうしたんですか?ぼーっとして。寝不足ですか?」

「だめよ、シア。寝不足はお肌の大敵よ」


反対側からからかうような声がかけられる。


「うわぁお」

そちらに目をやると、ニコニコ笑顔のカイルとラエンがいた。


2人だって立ってるじゃん、とか言う前に。

2人の格好もなんだかおかしい。


カイルは魔法使いのおじいさんが持っていそうな先端がクルンとなった大きな杖を持っている。クリスマスの飾りにあるキャンディケーンの枯れ木バージョンみたいなやつだ。

着ている服は真っ白のローブで、袖口やフード周りに金糸で草木模様が縫い取られた仕立ての良さそうなローブ…なんだけど、それ、女物じゃない?って感じのやつだ。


聖女様とかが着ていそうなローブ。

またそれが似合っているのがかえってチグハグ感がある。


さらにラエン!


なぜここに、と思うより先に、何故ほうきに乗ってプカプカ浮いているのよ、貴女…。


見事なゴージャスボディを惜しげも無く見せつけるかのように布地の薄い服(というかもう「あぶな◯水着」だよこれ)にロングブーツ、とんがり魔女帽子にマント。


誰が見たって魔法使いのお姉さんにしか見えない出で立ち。


「お前たちも姿勢を正せ。ラエン、ほうきに乗るな!」

意外や意外。

こういうときには我関せずを貫きそうなアレンが皆を注意して回っている。けどアレンも鎧がブカブカすぎて膝をつけていない。


ツッコミどころ満載なパーティーメンバーにしばし時間が止まってしまったけれど、ハッと我に返り己の姿を見下ろす。


鎧…は急所を守る程度の、それもどこにでもありそうな、ザ・革鎧。兜も盾もなく、どこぞのゲームとかで賢者とかがつけていそうなサークレットだけ。

ただ、剣だけは立派で…あ、これ私(聖剣)だ。ちゃんと剣の大きさになっている。


よかった、成長したのね。

あれ、でもこれ、私が持ってて良かったんだっけ?


なんて思ってると、ごほん、と咳払いが聞こえた。


しまった、ここ、王様の前とか言ってなかった?


前を見ると、キンキンキラキラした豪華な玉座に、王様(多分)が座っていた。


いやもう多分どころか、こちらも笑えるくらいにザ・王様。

トランプのキングだった。


「王様だ…」

「だからさっきからそう言っているだろう」

アレンに頭を押さえつけられてようやく姿勢を正した私。

指先までもれなくカバーする優秀ごっつごつ鎧のせいでむちゃくちゃ痛かったけど、文句を言うと話が進まないのでそのままにする。


「おほん。よくぞ参った。勇者シアとその仲間たちよ。」


王様今なんて言った?


勇者シア。


勇者、シア??!!!

ほら見て、やっぱり私勇者じゃん!


おおー、と感動していると、王様の隣に立っていた大臣らしい人が真面目な顔で説明をし始める。


「先日、南の魔の森に巣食う暗黒竜王に、我が国の宝である王女殿下がさらわれてしまいました。勇者殿にはぜひとも魔の森にある竜王城へ向かい、王女殿下をお助けいただきたい。」

こちらは旅の支度金です、とずっしりと重そうな革袋をお盆の上に掲げている。


金貨でいっぱいの袋をすごいなぁ、と見ていると、脇腹をツンツンとアレンにこづかれた。

「シア、早く受け取って何か言うんだ。」

「え、何かって何を?!」

善良な一市民でしかない私、王様と話したことなんて当然ない。

一体何を話せばいいのかさっぱりわからないわよ。


でもまあ、くれるというならいただきましょう。

ははー、とか言っとけばいいかな。ははー、って日本だけだろうか?ははー、って一体何なんだろう?

あ、あと何か喋れって?よくわかんないけど、私は今勇者で、これからさらわれたお姫様を助けにいくのよね。

「お任せください。必ずお姫様を助けてみせます!」

王女殿下です!とか大臣が訂正していたけれど、謁見は無事に終わってくれた。


そうして私たちはお城の長い廊下を並んで歩く。

中庭に面した廊下は、竜王がどうとか言っている割にいたって平和な風景だ。

鳥は歌い、木々は風に揺られて・・・といったのどかさは、お姫様がさらわれてバタバタしている、という様子すらない。

「さて、それじゃあ旅支度をすませて、魔の森へ向かうか。」

アレンががっちゃんがっちゃんならしながら言う。

聞こえづらいったらないわー。


「アレン、その格好で行くの?戦えなくない?」

「何を言うんだ!これは由緒正しい聖鎧ブリュンケンワールだぞ。精霊王ブリュンケンがわざわざドワーフの国へ赴いて…」

「はいはい、これ話し出すと夜になるからまた今度ね。」

長くなりそうな話をし始めたアレンをカイルがサッとあしらう。

誰だブルンケンとかって・・・。


「でもねえ。私たち、戦ったこともないのに、いきなり竜王とか、大丈夫かしら?」

とりあえず最大魔法ぶっ放せば大丈夫かしら、とにこにこ笑顔ですさまじいことをのたまうラエン。

きれいなお姉さんは好きですが、こわいです。


「んー。でもラエンさんが最大火炎魔法放っちゃえば、黒焦げになってくれそうですけどねえ。」

トカゲだって丸焦げになるんだから、竜も似たようなもんでしょう、とカイル。

「え・・、竜とトカゲ、一緒にしたらまずいんじゃない??」

「でもどっちも尻尾あるし。大きさだけじゃない?」

「そうねえ。大きさに合わせて魔法も大きくすれば、いけるんじゃない?」

私の突っ込みに、カイルとラエンは首をコテンと傾けながら答えた。

可愛いな、おい。


「行ってみればわかるんじゃないか?」

アレンまで何てことなさそうに言う。

「ちょ・・・ちょっと・・・。」

竜王だよ?ラスボスだよ??

なんでそんなに平気そうな感じで喋ってるのこの人たち???


ぐるああああああああああああああ!!!!!!!!!!

「ぎゃあああああああああ!!!」

と思っていたら突然けたたましい咆哮とともにあっつい空気が私向かって吹いてきた。

レディにあるまじき汚い悲鳴をあげてしまう。

あっついどころじゃない。豪風だし熱風だし変なにおいするし!

「任せて!」

カイルの声が聞こえたと思ったら、急に春真っ最中みたいな暖かい風にかわる。

臭くもない。

私たちの周りにバリアのようなものを張ってくれたようだ。

円状に境界線みたいな淡いもやもやが見える。

ほっとするんだけど、同時にどうしてこうなったのか全然わからなくて思わずキョロキョロしてしまった。

「え、さっきまでお城に・・・・。って、はい??!」

ついさっき王様のいる広間から退出して、お城の廊下を歩いていた気がするのに、目の前には巨大な竜がいた。

竜っていうか、恐竜。ティラノだわ。


頭に王冠を載っけたティラノが、こっちを見ながらもう一度雄たけびをあげた。

「生意気な勇者め!王女もこの国も俺様のものだ!」

「お助けを~勇者さま~~」

ティラノが、巨大なかぎづめ付きのごっつい手で、お姫様?をつかんでいる。

・・・あれが王女様かな。遠すぎてよく見えないけど、ピンクっぽいドレスと、金の長い髪が見えるから、多分王女様なんだと思う。


「おいたが過ぎるトカゲちゃんね!これでもくらいなさい!!」

真横でラエンが何か唱えていると思ったら、ゴウンゴウンと音を立てて炎の球が大きくなっていく。


「えいっ。」

自分の体ほども大きくなった火球を、バレーボールでもするかのようにティラノに向かって投げつけると、ごひゅううん!というなんか聞いたことのないような音を立てて私の真横を通り過ぎて行った。


「ひええっ!!」

思わず目も耳もとじてうずくまってしまう。

ラエンったら、本当に丸焦げにするつもりみたいだ。

「こらシア。丸くなってないで戦え!」

「いや、無理でしょうこんなのっ!」


アレンはごっつい鎧をものともせずに立ち回り、ティラノの咆哮によってこっちに飛んでくる岩みたいな何かを剣で吹き飛ばしている。


っていうか、さっきまで優雅なお城だったのに、なんで急に洞窟の中?みたいなところにいるのかがわからない。

洞窟といってもすっごく広い。

そりゃそうだ、ティラノが入って自由に暴れまわっていられるんだから。


ここはいわゆるラストダンジョンなんだろうか。

私たちがいる場所より後方には、細長い真っ暗な通路が続いているから、多分あそこを通ってここまで来たんだろう。

ティラノのはるか後ろにあるは岩の壁には、にあちこちにまるで窓のような穴が空いていて、どうやらあれがティラノの家というか、城というか・・・・住処??なんだと思う。


それにしても、どうして急にいる場所が変わってしまったんだろう。

まるで映画やドラマの中で、場面がかわったのを、見ているのではなくて、実際に体験しているかのよう。それなのに、変に思っているのは私だけで、ほかのみんなは何も思わないのか、普通に戦っている。

いや、普通に戦うっていう表現もおかしい気がするけど。

でも誰も違和感を覚えていないようだ。

それはアレンたちだけでなく、ティラノや王女様も同じだった。


相変わらず飽きもせずティラノはごうごうと炎の息を吹き飛ばしてくるし、カイルは涼しい顔をして、バリアを張り続けている。ラスボスの攻撃が、まったく痛くもかゆくもないなんて、そんじょそこらのバリアじゃない気もするけど・・・。

ラエンは相変わらず嬉々として炎の球を投げつけているし、ティラノの攻撃だけでなく、ティラノに当たらなかったラエンの炎が、天井とか壁に当たって、岩とかががんがん降ってくるのをアレンが剣で弾き飛ばしている。

よく剣が欠けないなあ、さすがなんとかって妖精王の剣。いやそれは鎧だったっけ?


そして私はというと、頭の中ではやけに冷静に周りをみていることができているんだけど、目の前で繰り広げられる戦闘に、足が震えてしまって剣を構えるどころか、抜くことすらできずに突っ立っていた。


「シア!」

「シア!聖剣でぐさっとやっつけちゃって!」

「シア!結界もいつまでもはもたないよ!!」

攻撃や防御の合間に仲間がこちらに向かって声をかけてくる。

「・・・・っ!!」

それでも私はまったく動けない。

震えも止まるどころかさらにひどくなる。


いやもうこれ、無理でしょう?!

だって私、素振りとかはやったことあるけど、実戦経験なんてまるでないのに・・・・。

経験値ゼロでいきなりラスボスに向かえって言われても、戦い方も知らなければ、戦う、という意味すら実感がないのに。


大体私は聖剣なはずで、戦うのは私じゃないんじゃ・・・・。

いや、私剣だから・・戦うといえば戦うのかもしれないけど・・・・。

でも私、剣の中じゃなくて、剣の外にいるから・・・あれ??私って、どうやって戦うの?

剣も私も戦っちゃったら、私、二人分になるんじゃない??!


「シア?!」

「シア!!もうもたない!!」

頭の中でぐっちゃぐちゃに考えている間にも、戦闘は繰り広げられていて、みんなが私に叫んでくる。

「いやいやいやっ無理だってむりむり!!大体戦うったって、いきなりラスボスじゃなくて、まずはスライムとかから順をおってこう・・・・っ!!!」

実はあなたが勇者でした、ハイだから竜王倒してくださいね、なんて無理ってもんでしょう?!

こういうのは、村の周りの魔物から始まって、少しずつ装備を整えていってだんだんと強敵に向かっていく、そういう流れになるもんじゃないの?!


「なあんだ。勇者になりたそうだったから叶えてあげたのに、全然じゃないですか。」

「え??」

急に頭の中に、聞いたことのない声が聞こえてくる。

そんな声の人いなかったはずなのに、と思うのと同時に、まぶしい光に包まれた。

白いを通り越して痛いくらいの輝きに、目を開けていられなくてぎゅっと瞑る。


しばらくすると光が落ち着いてきたので、おそるおそる目を開けると・・・・。

「いやもう、今度は何・・・・。」

さっきまでの洞窟や戦いはどこへやら・・。

真っ白いだだっ広い空間。

アレンたちやティラノも誰もいない。

「どこみているんです?こちらですよ。」

くすくすと可笑しそうにかけられる声の方を見ると。

「でた、次は天使・・・。」


輝くような金の巻き毛。笑みをたたえた神々しいまでに透き通った青い瞳。

体には天の羽衣みたいなふわふわした布を巻いて、自身もふわふわと浮いている。

ざ・天使みたいな顔立ちのまだ幼さの残る美少年が、浮いていました。

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