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決闘

星喰う悪魔アグマートとも呼ばれる、天空都市バルスドーラの夜は更けていく。



「青年会へ決闘申請済。長老会議堂、午前4時。ノスコン・ダークよりオリィ・ザッテへ。両者同意済。これは名誉をかけた決闘であり私闘の罪には問われません。立会人はリインナ・グロースが勤めます」

凜とした声が、宵闇の中に壁がほの白く照る長老会議堂ホールに響いた。

この場所で長老たちの様々なテストに応じていたノスコンは、ここが丈夫な建材を芯に作られた少々の爆発ではびくともしない施設なのを知っている。

長老マルクによって若者達にスペースが与えられたが、マルクは「若いのだけでやってなさい。年寄りは寝不足がキツくてな」と寝室にひっこんでしまった。くっついてきたのはオリィの妹弟子のウィリィ・リネンで、未明の冷え込みの中、ここに居るのは4人だけだった。


ノスコン・ダークは暗がりの中でさらに白く、長身から見下す険しく冷たい瞳は、白い幽霊、白い怪物と形容されるのもまったく無理ないなとオリィは納得した。

(さて、リインナさんが言ったとおり……)

背丈とほぼ同じ、銀色の杖を左手に握りなおしつつ

(都市最強の魔力を持つノスコン・ダークとまともに当たれば力負けは当然だ。さらに杖無し無詠唱で爆発的なエネルギーを一瞬で放てるときた。それだけの才能をこいつは生まれつき持っている)

顔は呑気を装いながら、オリィの頭の中ではずっと情報の嵐が渦巻いていた。

(生まれつきそれができるから、その他の方法は必要ない。絡め手ではこない。そしてそれがどんなに桁違いな力でも、あたし達が使う魔術と同じものだ。つまり)


魔法王への祈願と詠唱が頭部で宣言され、首、肩、手へパスを通り、握った杖の先に出現する。

(杖無し無詠唱であっても、この現象は変わらない)

リインナは右手を高々と掲げた。

「この手を下ろしたら勝負開始。両者用意はいい?」

ノスコンは険しい顔で頷き、それを見てオリィはへらりと笑ってみせた。

「オッケー!えっとノスコンさんだっけ?都市最強だかなんだか知らないけど……」

その黒い瞳はあの日と同じ不遜さに満ちていて

「あたしの敵じゃない」

ノスコンの頭にカッと血がのぼった。

「はじめ!」


勝負は一瞬。


リインナの声が響くとほぼ同時に爆発が起きた。

オリィの脚が地面を離れている。

火花は

「あっ……!」

ウィリィが叫んだ。ノスコンの右手が一瞬で燃えた。

バルスドーラ最強の魔力が、本人の掌の中で燃えて。

「……!!」

防御魔法を一瞬で重ねがけしたがしかし。

バルスドーラ最強の魔力が至近距離で爆発したエネルギーは、容赦なくその主の体をもっていく。


多分、一瞬だけ気絶かなにかした。

ノスコンの視界は、白かった。

10年前のあの日と同じ、白い床。

体を捻って転倒していた。強く打った脇腹に痛みがあった。なのにノスコンの指は顔を触った。顔を打たなかったから鼻血は出ていない、のに。


「勝っちゃったかなー?」

うそぶくオリィの片足は、裸足。

「まあ、魔力をぶつけ合ったらパンピーなオリィちゃん負けるのわかってるから。じゃ『物理』だったら、どうかなって」

先ほどまでノスコンが立っていた場所には、焼け焦げたサンダルが落ちていた。

「力が足りなかったら頭を使う。当然でしょ?」

オリィにウインクされて、リインナはこらえきれず吹き出し、笑いころげた。


<続>

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