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勝利への布石

ただ星喰らうのみで大地にその影を示す、天空都市バルスドーラの夜。



パステルカラーでソリッドながら、それはちょっと見は拳銃に似ていた。

オリィ・ザッテはその銃口を伸ばした鼻の下に当てて引き金を引いた。

「きゃははははは!」

少女の変顔にリインナは腹をよじる。PiPiPiと電子音が響いて拳銃の小窓にErrorの文字が出た。

「先にこうするとちゃんと測れるのよ」

両手で銃口を左肩に当てなおし、両方の指をかけてもう一度引き金。今度はPiとだけ鳴って小窓に88という微妙な数字が表示された。

「ね?」

簡易魔力値測定機だ。生まれつきで決まってしまうこの才能の理想値は100。オリィはどう測ってもこの微妙な数字しか出すことができない。

「むしろもうちょい低かったら障害年金で湖上農園暮らしで諦めもつくけど、バルスドーラでこのくらいの才能で何かやらかせるかというと、とても微妙」

「というのはやらかすつもりなんだ。貴女、ほんと、面白い娘ね」

オリィはすっかりリインナのお気に召したようで、少女はふふんと笑うともう一度鼻の下に測定機をくっつけて鳴らしてみせた。

「きゃはははは!やだ!やめてってば!」

涙が出そうになりながら、リインナは右手で右の肩を指さした。

「ピッとこれでいいじゃない」

「ふーん」

オリィはその指を真似しながら

「ノスコンはどうする?」

と聞いた。

「あいつはレアケースのデータ源だから、品のいいやつで毎朝測らされてるわよ。測り方は……」

リインナはもう一度、右手の指で右肩をつつく。

「やっぱり、こうだな」

「へえ、イトコだから似てるのかな」

オリィは呑気に鼻の下で測定機を連打して、奇妙なリズムを作曲しはじめる。


「ねえ」

笑い転げていたリインナはいつしか真面目な瞳で少女を見据えていた。

「魔力値90の人が、100の人に明らかに遅れをとることは知ってるわ。貴女はなぜかそれを下回る値で、倍を超えるノスコンに立ち向かおうとしてる」

クッションをぎゅっと抱えてウィリィがさらに体を小さく丸める。

「あいつは怪物よ。杖なし無詠唱で爆発的なエネルギーを間髪入れず叩き出すわ。あいつに一矢報いようとするなら速度が絶対必要。貴女は杖とサークレットを補助に無詠唱であいつより先に撃つしかない。それができてもエネルギーが違いすぎるから、衝突すれば貴女の無詠唱魔法は蒸発。運良く相対するエレメントだったらあいつの魔法を無効化できるかもしれないけど、それはほんとに運だし、しかもその次の手が無い」

ウィリィは震えあがる。

「無理だよオリィ……」

オリィは変わらず呑気な様子で、とりあえず測定機を机に置いて

「それだから、ぶっとばしちゃったら面白いでしょ?」

リインナのはしばみの瞳を見つめながら、すっきりと微笑んだ。

「勝つよ」

それはもう自信満々に。

「ただひとつ、オリィちゃんが勝つために必要な条件があるとすれば……」

不敵にもこの平凡な少女は言い切るのだ。

「ノスコン・ダークが、『本気』できてくれること」


<続>

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