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【10年前の真実】

神官権限。


広義には『バルスドーラ最高指導者である神官のみに許される権限』がそう呼ばれる。


今回においては

「当事者であるあたしと、神官引退者による『長老会』だけが知ってることだ」

その組織のことをオリィはいつも『じーさんの老人会』と茶化している。

(真剣だ)

ウィリィは息を呑んだ。

オリィはポシェットからノートと鉛筆を取り出すと新しいページをめくってはじめにこう書いた


◆24年前 ノスコン誕生


「でもノスコンが化物だってわかったのは、大祭の御前試合予選で広場に大穴をあけた時だ」


◆16年前 ノスコン8歳 大祭で大惨事をおこして『発見』される


「『発見』。」

その単語には『珍獣発見!』みたいな響きがあってノスコンはわかりやすく口をへの字に曲げた。

「そりゃあ世紀の大発見だよ、前例がなかった。それまで子供の魔法なんてたかがしれていた。杖と詠唱が必要なものを子供がうまく使えるわけなかったからだ。子供のはじめての魔力測定は『10歳児健診』と決まってた。そんな常識を8歳児が変えた。しかも大人以上の破壊力でもってだ」

さらに、とオリィは付け加えた。


「当時の魔力測定機でノスコンの魔力値はError。そもそも200を超える魔力値とかバルスドーラで想定されてなかった。改良には長老マルクが相当苦労した。たっぷり3年かかった」


◆13年前 ノスコン11歳 新型魔力測定機で不安定200+の魔力値を確認


「……っていうところまでは、バルスドーラの人間はだいたい知っている話だ」

つまりこの先が

「『神官権限』。長老会だけにこの情報は限定されている。市民が知ったり漏らしたりすれば相当のペナルティがある。最悪、長老会が敵に回る」

天空魔法都市の実質上の最高権力者集団が敵になる。


オリィは鉛筆の先でこつんとノートを突いた。

「止める?それともノスコンの右目を奪った奴の真実に近づく?」

その瞳は友を殺そうとした敵への怒りに燃えていてノスコンの胸を打った。

二人の心は決まっていた。隻眼の男が言葉なく頷くだけで気持ちは全部伝わった。

他の2人も去ることなく無言で見守り、オリィはもう一度鉛筆の先を鳴らした。


「……長老会はノスコンを調査観察しながら、他にもそういう子供が現れる可能性について議論していた。当時『バルスドーラ人は過去2回魔術師の種族として進化している。これは3回目の進化なのではないか』という仮説があった。その説に基づいてそういう子供達を『第三世代』と呼んで、探していた」

ノートに『第三世代』と書き

「そしたら……『いた』どころじゃなかったのよ」

二重丸で囲んだ。

「魔力測定を新生児に行うようになったら、もうゴロゴロと出てきたわけよ。ノスコン・ダーク並のバケモノが」

「待て」

あまりの話にノスコンが呻いた。

「待て待て待て……そんな……そんなわけが……」

8歳の時から16年間、長老会におよそ拘束されつづけていた男の経験が否定する。

「だって……だってそんな奴は今まで一人も……」

「うん。長生きできなかった赤ちゃんもいたし、育つにつれて魔力が落ちて普通になっちゃった子もいた。それでも高い魔力をもったまま育った子供は1ダースはいた。それを全員、長老会は隠匿した」

オリィは肩をすくめてみせた。

「ノスコンは目立ちすぎてバルスドーラ中の知るところになっちゃったからどうしようもなかった。そして発見された新しい1ダースの『第三世代』はそれ以上の強大な魔術師になりうる素質を秘めていた。そのことはあんたにすら知らされなかった」


『バルスドーラ最強で唯一の突然変異』。天空都市で16年間ノスコン・ダークにかぶせられていたものは虚像。


「わかった?」

オリィは綴った。


◆10年前 ノスコン14歳 『第三世代』の一人、3歳のオリィ・ザッテに敗北


書かれた文章と。13歳のオリィ・ザッテを見て、ノスコンは固まった。

真実。

10年前にノスコンの前に現れたオリィは、まさしくいま友として目の前に立つオリィであり

「この時のあたしの魔力値は、200を測れるようになった新型魔力測定機でもErrorを出していた」

『怪物以上の怪物』だったのだ。


<続>

リハビリじゃなくなったのでペンネーム変えました

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