表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/66

2人の王子

<前章までのあらすじ>

魔術師住まう天空都市バルスドーラ。復活した大祭の御前試合、かつて魔術師を貴族から解放した革命王の末裔・バルスドーラ王の前に現れたのは、15年前の王太子一家崩御事件で唯一生き残ったロワ・アグマータテア王子(18)だった。ロワは両親を殺害したのは叔父の現バルスドーラ王だと信じていたが、何者かが王、王子両方を殺害しようと動いている。全てを知るノスコンの父、書記官ジェノの助力を得るも、結局ノスコン・ダーク(24)が都市最凶っぷりを発揮し大惨事。一方オリィ・ザッテ(13)は隠れ育った現バルスドーラ王の王子とそっくりなことが判明する。

天空都市バルスドーラに王子。


はるか昔、そんな言葉を聞いたことをオリィ・ザッテは思い出していた。あんまり小さかったから、もうそれが本当だったか夢だったかもわからない。

家は暗くて、ポートに近い。火の聖霊を熱なく踊らせて、オリィは合わせ鏡をのぞきこんでいた。黒い巻き毛に囲まれた瞳はいくつもの鬼火に照らされて満天の星の輝き。わたしってなんてかわいいんだろう!


(わたしがお父さんだったらこんなかわいいオリィをずっとずっとぎゅっとして離さないのに)

お父さんはいつでもオリィをぎゅっとしてはくれない。「汚れるから」なんて気にしていないのに。時々お父さんがこんなにかわいいオリィよりおっかないグライを可愛がってるように感じて、幼いオリィはたいへんご機嫌ななめだった。

(わたしはグライよりかわいいし、小さいし、やわらかくって、きれいで、シャボン草の匂いがするのに!)

何より

(本当のお父さんのむすめなのは、わたしだけなのに)


バルスドーラに王子。

バルスドーラに王子。


暗い家にリフレインする言葉。

合わせ鏡の向こう。お父さん。お父さんの向こう。赤い手の男。あの男の手が赤かったのは、わたしが。


「ザッテ、逃げろ。翼あるお前は」

そう言ったのはたしか赤い手の男。

「バルスドーラに王子は2人いてはいけない」

そう言ったのは……


「……あれ?何のラジオドラマだったかな?それともどこかの小説だったかな。誰が言ってたんだっけ……」

13歳のオリィはねぼけまなこで、最上級のベッドのど真ん中。

掛け布団をひきずったまま、ベッドサイドの小さな鏡をのぞき込んだ。ブリーチかけた金髪の巻き毛。鏡の横には太陽学者の使う黒いゴーグル。

「あら王子様、おはようございます」

侍女の言葉が軽くからかうように降ってきた。

そうなのだ。

「あたし王子様の影武者だったわ……」

オリィ・ザッテはぐったりと顔面をベッドにめりこませた。



広い世の中には顔がそっくりな人が3人いるとかいないとか。

バルスドーラ王子フェイニ・アグマータクストと並んだオリィを見て誰もがどよめいた。

「色 違 い!!」

吹き出して大笑いしたのはロワ・アグマータテア前王王子。

「で、でもいざ並べてよく見ると違う!同じかっていうとかなり違う!」

「別々に見るとわかんねえなこれ」

王太子一家崩御事件より王族の露出は極端に少なくなった。現王も若い顔しか知らないという庶民の多い中、守られて成長した王子の素顔を知るものはほとんどいない。

「はい、フェイニは私です」

父親に輪をかけて温厚なフェイニ王子は、さまざまに騒ぎ立てる周囲に対しておっとりと微笑んだ。

「そんなに、似てますか?」

くるくるの巻き毛は父親と同じ金髪で、瞳はバルスドーラの浮かぶ空の色。不思議そうに首をかしげる。これは天然謹製お坊ちゃまだ。

「似てる。髪染めてサングラスかけたら並んでもわからない」

「っていうか年下男子なのにオリィちゃんと同じくらい身長があるの生意気」

「うん」

ノスコンが妙に実感をこめて頷いた。このころの子供の成長は女子の方が早い。成長期前の自分も年上の従姉妹にはずいぶん小馬鹿にされたものだ。

「父も身長がありますから似たのでしょう。将来貴方くらいは伸びますよ」

2m近いノスコンに平気でのたまうときた。

「大物だね」

「ロワと大違いだね。湖上農園で会った時もっと子供だと思ったもん。父親が双子とか珍事だよね」

「やるかてめえ?」

庶民育ちの方の王子様には敬語とかもうない。


「そう、あの後……」

こんなに似てるなら影武者できるよね?面白そう!とか盛り上がってしまって。

この朝オリィ・ザッテは王宮の王子の部屋のベッドで起きてしまうハメになったのだが。


夢の中のリフレイン。


バルスドーラに王子。

バルスドーラに王子。

『バルスドーラに王子は2人いてはいけない』


つまり現王の王子フェイニが隠れる天空都市バルスドーラに、死んだと思われていた前王の王子ロワが現れたということは。

「あれ?つまり、これ、やばくね?」

誰が言ったかまだ思い出せないその言葉の意味に、フェイニに扮するオリィは人知れず青くなった。


<続>

執筆意欲が貧血治療により生還いたしました模様です。

りはびり……とはこれいかに?鉄剤飲んだだけで寝付きが改善するってなにごと??

現実も謎に満ちているものなのですな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ