友達でしょ
バルスドーラの十字の大通りの先は四魔法王の神殿。神殿前広場を中心に施設が揃う。
病院が近くてよかった。オリィは深く息を吐いて、待合室の椅子に腰掛ける。
「……もちろん、そんなのは、ダメだ」
誰にともなく呟いて、目頭を押さえた。ダメだ。ダメだ。13歳だってトラウマのふたつみっつくらいある。
横に腰を下ろした病人はまるで平常で、むしろ回りが気になってしまう。
「俺は大丈夫」
根拠ゼロでノスコンはのたまう。
「帰れよ。明日御前試合決勝だろ」
「……なんで帰れるかよ!」
オリィは吐き捨てた。
「友達が再起不能になっちゃうかもしれないってのに、試合とか気にする場合じゃないでしょ!!」
友達。
その響きがノスコンの胸に刺さる。
生まれつきの険しい目つきが、滑稽なほどきょときょとと、居心地悪そうな、恥ずかしいような、なんとも落ち着かずに、やがてそっと瞼を閉じた。
「……ともだち、か」
噛みしめるように呟いた。
あんた友達とかいなかったもんね、という追い打ちはさすがのオリィも今は気が引けた。
「ともだちでしょ……あんた。一緒に手羽先食べたでしょ。大通りから広場まで歩いたでしょ。毎日人探ししたでしょ。シャトル乗ったでしょ。ラジオドラマの話したでしょ……」
「……そうだな……」
生まれた時から特別で、普通じゃなくて、醜くて、危険で、母親にすら捨てられたこの白い怪物は。
人通りの無い外壁沿いの道で夜中、白い月のようにひとりぼっちだったこの男は。
「あたしだけじゃないでしょ。ゼム兄貴いなかったらやばかったよ。ウィリィも酷いこと言われたのにあんたのこと心配するのよ」
光満ちる天空都市で、誰も見向きしない四等星の星座達が、いつも月の側に居たことを知った。
「兄貴に感謝してよ。ウィリィにはちゃんと謝ってよ。とっとと治療してまたふてぶてしくてさ、無駄にでかくて偉そうな、天空都市最強のノスコン・ダークでいてくれよ」
「……はは」
弱々しく笑って、孤独だったけものは顔を覆った。
「……死んでもいいかも」
「病院で言うなよ?!」
「……うん……そうだな、うん……」
この男はひどく口下手でしばしば失礼だが、嘘は言わない。
「失礼、君がノスコン・ダークだね?」
壮年の男の声が降ってきた。
医者か。ノスコンはフードをあげて男を見上げた。
深いフードをクリップで留めて視界を確保している。色の白い痩せぎすに黒い怜悧な瞳が目立つその男の、ローブはしかしそうそう見ない豪奢な金刺繍。3人、いや、もっと多いか、看護師らしき人々を後ろに控えさせている。
「ネルだ。今は地竜の神官を任されているが、本職は医師になる」
「神官?!?」
突然のことにノスコンもオリィもびびりあがった。
四魔法王神殿に詰める地水火風4人の神官。
それは魔法都市バルスドーラの最高権力者である。
<続>




