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みんな、すごいよ

天駆ける悪魔アグマートと呼ばれる、天空都市バルスドーラについて。



魔術師たちはその祖の大恩なる四魔法王を信仰し、かれらへの祈願を力の源としている。

熱と光なる火の竜、

湿りと流れなる水の竜、

質量と物質なる地の竜、

大気と息なる風の竜。

竜である魔法王のもと、4つのエレメントは支配され、魔術師もまたこの支配を可能とする。


その四魔法王を祭る、魔法都市バルスドーラの大祭は4日4晩をかけた壮大なものである。

今年の大祭では御前試合が復活する。

そしてそれを狙って、むかしの窃盗団の名を名乗る少年が都市のどこかに潜伏している。

「尻尾なんて丸出しだったのになあ。どう見たって三下なのよ。バックに知恵者がついてる風でもなかったし」

オリィは黒い巻き毛をもじゃもじゃとかきまわした。

少年の行方は何日たっても杳として知れなかった。

「オリィちゃん。そういう知恵者がいないとして」

石工のゼムがこめかみを指す。

「頭は悪いが口は固い『集団』がバックにいるとしたら?」

「それはその元窃盗団の?」

業界内の話であるゼムは頷く。

「『ヴェードロの連中』は消えたが全員逮捕というニュースはなかったはずだ。悪さを諦めて別な仕事に就いて、しかし昔ながらの繋がりを持ち続けていたとしたら……」

その集団が偽名ダン・ヴェードロの味方として都市住民に混ざっていたら。

「悪いな。オレが石工になったのは25だったかな、親が早くに亡くなって金が欲しくてさ。『ヴェードロの連中』を詳しく知るのはオレらの先輩方で、まあ、石工ってのは太く短く生きるもんで……」

ゼムは首を横に振る。薬学専攻のリインナは険しい顔で目をそらした。

「でも王宮データベースになら当時の警察のデータがあるわ。その『ヴェードロの連中』?の個人個人のデータトレースも問題ない。本職のおじさまが後は任せてって言ってたから、あなたたちが何かする必要はもうないわ」

「お、おう」

ノスコンがこくこくと頷いたが、謎の人物を天空都市まで連れてきてしまったガチ当事者であるところのオリィはそわそわと落ち着かない。


「ゼム兄貴もリインナさんもありがとう。あたしの一世一代の大ポカ、みんなのお陰でなんとかなりそうだわ」

しおらしくミスを反省するオリィの横で

「頭が回るだけの凡人」

ノスコンは歯に衣着せるスキルが無い。

「あんたは魔力で器物破損する以外凡人でしょ」

オリィがトゲトゲしく返すのに

「あの、みんなちがってみんないい……ということで」

ウィリィがおずおずと仲裁に入った。

「みんな、すごいよ。オリィは知恵があるし、ノスコンさんには凄い魔力、リインナさんは学があって美人だし、ゼムさんも仕事できるベテラン……ボクなんかそんな特技何もないもん。普通。みんなが羨ましいよ」

「そうだな」

ノスコンが意地悪くウィリィを一瞥した。

「お前はいいな。普通で」

それは生まれた時から普通でなかったノスコンにとって大きな羨望で。

特別ななにかなんて何も持ってないウィリィにとっては欠点で。


オリィはこのバカヤロウ殴ってやろうかと思ったが、ウィリィがあまり辛そうでないのを見て一瞬行動を止めた。

そんなオリィが視界の外だったノスコンはコンボで失言。

「顔も普通に可愛いしな」

オリィの右ストレートを止める理由はもう無かった。

「あたしのウィリィちゃんを口説くんじゃないよこのロリコンがあっ!!!」

見事KOされた従兄弟がツボにはまって、爆笑したリインナは後日腹筋が筋肉痛になった。


<続>

活動報告「うちひしがれました」ございます。

小設定集が膨大になってきた予想外に、ただいま頭かかえております。しばらく小設定集はこちらで更新せず、物語のみの更新を続けます。

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