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傷のあるデートスポット

いつも雨雲の上、天空都市バルスドーラはいつでもご機嫌な晴天だ。



「デートじゃん!こんなんデートじゃん!」

成人男性との身長差に浮かれながら13歳がキャッキャと騒ぐ。

「絶対交番前とか通れないね!未成年となにやってんだであんた職務質問だね!!」

「うるせえわ!」

本日も舌好調なオリィに、つっこむノスコンもだんだん慣れてきた様子。

「というわけで本日のデートコースはオリィちゃんが決めてますよ。一度水の大通りに出て、そっから魔法王神殿を見て、裏通りに行く」

「…なんで神殿?」


ほどなくして2人は大通りに出る。

天空都市バルスドーラを平面の地図にするならその形状は真円だ。そこに正確に十字を引くとこれが大通り。中央が王宮。円と十字の交差点が、4つのエレメントの魔法王に捧げられた神殿の位置となる。

2人の家はこのうちの、水の魔法王に捧げられた神殿から近いやや外壁沿いの住宅地にある。

市街を立体で見るならば、逆さにした傘の形。王宮は傘の柄であり、神殿は傘の縁。中央区から走る大通りは、ゆるい傾斜を登り、その上に神殿がある。

「この大通りからの眺めがデートスポットって知らなかったか童貞」

「ううううるせえわ!」

24歳が顔を赤くしてぷんすこしてるのを、軽くスルーしてオリィは勝手に坂道を登る。長老マルク宅から水の魔法王神殿へはシャトルを使うほどの距離ではない。


「ふむ」

何度も来たことがある神殿前広場。それなりに施設もひとそろいあり、都市条例で緑地こそないが下界を見渡せる展望台などもあり、休日の昼、家族連れやカップルが楽しそうに談笑している。

「デートって……」

ノスコンはそんなカップルに目がちらちら行ってしまい、すっかり茹で蛸になっている。なお向こうもこちらをちらちら見ている。もちろん未成年連れの不審者としてではなく、長身と珍しい髪色がどうしても目立ち、都市最強の魔法素質所持者であるところのノスコン・ダークは嫌でも有名人だ。

この視線が嫌だった。子供の時からずっと。彼は宵闇に紛れ人通りのない外壁沿いの道を歩きながら暮らしてきた。

なのに

「おーい、ノスコン!こっちこっち!」

相方にはデリケートな思いやりというものがないらしい。小走りに近づいて声をひそめて叱りつける。

「……呼ぶな!人が見てるだろ!」

「見られたって減るもんじゃないでしょ?それとも何?減るの?バルスドーラ最強、見られると見られるほどハゲるの??ごめんあたし、あんたの毛根の葬式代を払わなきゃ」

しおらしくなるオリィに

「ハゲねえよ!!!!」

大声で反論してしまい、皆様の視線がぐわっと集まってノスコンの神経が一瞬ぴやっと悲鳴をあげた。


「で、ここでしょ?色が違う」

オリィは平然と広場の地面を杖でこんこんと叩いた。

「……なにの???」

ノスコンにはさっぱりわからない。そもそもオリィがなんでデートだの広場だの言い出したのかまったくわからない。一方のオリィにとってはデートだの広場だのはそれほど意味はないのだが。

「あんたの一番近所の神殿前広場はここでしょ?」

色の違うブロックを叩いて、それでもピンとこないらしいノスコンに直球に語る。

「16年前の御前試合予選で、あんたが大穴を開けた修理後だよ」


<続>

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