戦争
正直、異世界の戦争舐めてた。
人間軍は大きく分けて2つに分けられている。
直接敵陣地に乗り込み敵を叩く突撃部隊と魔法を使い戦況を動かす魔法部隊だ。
僕達奴隷兵は突撃部隊だ。
その中の盾部隊に僕達は編成されている。
というか戦争の乱戦の中で奴隷が暴走する恐れがある為武器が与えられないのだ。
僕達奴隷兵に与えられた物はこの安そうな大盾と体力回復ポーション3本だけだ。
ポーションは致命傷は治せないが少しの怪我やへばった時に使えと渡された。
この世界の戦争は元いた地球の戦争と全然違う。
僕達の奴隷兵は必要ないんじゃ無いですか?ってレベルだ。
魔法。これが凄すぎる。
戦場の至る所に雷や火の砲弾が降り注ぐ。
当たれば数十人が吹っ飛ぶ威力だ。
それを互いの陣地に打ち込み合っている。
ここまで来ると魔法の撃ち合いで良いのでは?
前に出て接敵する必要は無いのでは?と思えてしまう。
だが違う。
魔法による攻撃は威力は強く、燼滅力に優れているが同時に対策されるのだ。
なので互いに高威力魔法を打ち込んでいるが互いに着弾数は0のままなのだ。
互いに魔法攻撃を敵陣に放ち、それを魔法の障壁で防ぐ。
これでは埒があかないので僕達突撃部隊が編成されるのだ。
僕達の部隊の狙いは敵魔法師団を直接叩く事だ。
この世界の戦争は敵の魔法師団をより潰した方が有利に展開出来る。
それに魔法師団は攻撃だけでは無い突撃部隊へのバフや味方の回復なんかも受け持ってくれている。
なのでこの戦争の勝敗は如何に敵魔法師団を削るかが互いに勝負になる。
そして今、何故僕がこんな落ち着いて解説しているかというと・・・
少し時間を遡る。
号令の少し前
「お、おい。お前ら俺にちゃんと付いて来いよ!」
「バルトさーん、嫌です、死にたく無いですぅ。」
「うるせぇ。フラウ!黙って付いて来い!」
さっきから完全に上がってしまっているバルトと完全にビビっているフラウこの2人と組んで戦うように僕は言われている。
そして、ついにその時が来た。
「行くぞ!第一軍出撃だ!」
その言葉から僕達の戦争が始まった。
「うぉぉぉー」
周りの人たちが雄叫びを上げながら魔族軍に突撃していく。
対する魔族軍側も突進をしてくる。
僕達も一緒に走り出す。
「ひぃ〜。やっぱ無理です。助けてバルトさーん!」
「黙って付いて来い!転けたら味方に踏まれて死ぬぞ!」
そして衝突の瞬間。
「ぶつかるぞ!気張れぇ〜!!」
味方からの怒号が響く。
「ひぃ〜い」
あっ。
フラウが吹き飛ばされた。
てかヤバい冗談抜きで死ぬ。
この盾と出撃前にかけられたバフのお陰で耐えられたがヤバい。
一人一人の突撃がトラックにぶつかられた様な威力だ。
この一撃を防ぐ為に僕達が召集された様な物だ。
後は終わるまで生き残る事が任務だ。
だがこの衝突でさっきフラウが飛んで行ったのだ。
「おい!ルイ!生きてるか!?」
「あっ、はい!なんとか!」
バルトは生存できた様だ。
だがバルトと離れないと僕の必殺技は使えない。
「バルトさん!フラウ先輩が!」
「あぁ!分かってる!でも今は目の前の敵に集中しろ!」
その通りだ。だがこれを言えば恐らくバルトの性格上助けに向かうだろう。
「バルトさん!見捨てるんですか!?」
「あぁん?」
「僕は大丈夫です!行ってください!」
「・・・」
「もしかしてこの乱戦の中入っていくのビビってます?」
「テメェ!そうじゃない!持ち場を離れられねぇだろ!」
なるほど上の命令に逆らえない奴隷根性が邪魔してるのだろう。
なら逆転の発想だ!
「分かりました!バルトさんが行かないなら僕が行きます!」
バルトを動かすのをやめて自分で動く。
これで1人になれる。
「ふざけるな!お前はここにいろ!俺が行く!」
バルトが半ギレで行ってしまった。
まぁ結果オーライだ!
これであとは隙を見て死んだフリをすれば良いだけだ!
そして今に至る。
その後隙を見て必殺『死んだフリ』を使用して僕は今戦場の真ん中で寝ているのだ。
こうして目線だけ動かして観察しているといろんな事が分かってくる。
魔法の他にも面白い戦いが多い。
特に魔族軍は様々な種族やその特性がある為戦術の幅が広い。
最初の突撃も馬や牛の獣人達による突撃だ。
その後の戦いを見るにあの威力は助走が必要なのだろう。
他にも羽根が有り飛べる種族は上空から攻撃を仕掛けてくる。
それを撃ち落とす魔法も飛び交っている。
そういった種族の差が有りながらも均衡を保てている1番の要因は互いの戦い方が大きく影響しているのだろう。
人間軍は倒れた仲間や敵を時に蹴り飛ばし場所を確保し、踏みつけて前進する。
対する魔族軍は倒れた仲間にも気を遣い避けて戦っている。
人間軍には倒れた魔族軍の者達を盾にして戦う者もいる。
そうした者達に魔族軍は攻撃出来なくなってしまうのだ。
そう言った事が影響して均衡を保てているのだ。
暫くして日が落ちてきた頃合いに人間側が先に引いて行く。
その後、魔族軍も動ける負傷兵や倒れた仲間を担いで撤退していく。
そこに火球が炸裂した。
人間軍が救助活動中の魔族軍の隙を狙い、そこに目掛け魔法を放ったのだ。
生き残りの人間兵をも巻き込む様な攻撃は魔族軍も予想していなかった様で防壁が張られるまでの間一方的に攻撃を喰らってしまっている。
魔族軍はその後、障壁を張りながら撤退して行く。
そして夜になり、僕は現在やっと起き上がり、どこに逃げるか思案中だ。
後は人間軍まずこちらは却下だ。
僕は戦死した事にしないといけないのだから。
前の魔族軍の方も人間がどう扱われるか分からないので出来れば避けたい。
そうすると横から逃げ出すしか無いがどうやればバレないで逃げられるのかをグラムから教えられたここらの地形を思い出し、必死に考えていると、
「・・・んん゛」
誰かの呻き声が聞こえて来た。
そちらへ向かうと1人の男が倒れていた。
人間ではないそれは
額に赤い宝石の様な物が5つ埋め込まれているので一目瞭然だ。
「大丈夫ですか?」
「・・・ゔぅゔ」
取り敢えず支給されていたポーションを飲ませてみる。
1本目・・・
変化がない様だ。
2本目・・・
少し表情が柔らかくなった気がする。
3本目・・・
「ガフっ」
咳き込み出した!?
ヤバい失敗した?
「・・・人間!?グハッ」
目があった瞬間戦闘態勢を取ろうとして出来ずに片膝をつく。
「さっきまで意識が無かったのに無理しないで下さい!」
「・・・なぜだ!?」
「なぜ?」
「この状況。お前が助けてくれたのだろう?
なぜトドメを刺さなかった?なぜ助けた?」
「僕はあなた達のことをもっと知りたい。それにあなたが助けを求めていたから?ですかね、」
魔族の男は少し思案しそして、
「助けてもらった事は感謝する。だが今は戦争中だ。敵に味方の情報は渡せん。自分達の陣地に戻れ。」
「・・・無理です。」
「どういう事だ?」
「僕は奴隷です。そこで出会った仲間達がいます。そいつらと約束したんです!・・・。」
僕はさっき会ったばかりの魔族の男に語った。
僕の境遇やそこで出会った仲間達の事、そして仲間達との約束のことを。
男もちゃんと聞いてくれていた。
「・・・それで、お前はどうするんだ?」
「分かりません。ですが、」
「魔族領に来るか?」
「・・・良いんですか?僕、人間ですよ?」
「だが命の恩人だ。それに猫人族の女の子とスライムの女の子を助ける為に強くなりたいんだろ?」
「はい。」
「じぁあ付いて来い!他の弟子と一緒に鍛えてやる!」
「はい!僕はルイと申します。
これから宜しくお願いします!」
「おう!バン=グリージオだ!バンでいい。」
こうして新たな師匠と共に魔族陣営に向かう事になった。