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新入りはそこまで歓迎されない様です。

「バン様!」


「バン様!」


「御無事でしたかぁ、」


「大丈夫だ!心配するな!」


「ですがその怪我は、」


魔族軍の中をバンさんに付いて歩いていると色々な声が聞こえて来る。

その殆どがバンさんの無事を喜び、その怪我を見て顔色を無くしていく。


その理由も話を聞いていると分かって来た。


人間軍が撤退を開始し出した時魔族軍も救助活動しながら撤退を開始しようとしていた。

その時『嫌な感じがすると』自陣を飛び出した男がいた。

それがバン=グリージオである。


その後、彼の予感が当たり不意打ちの爆撃が魔族軍を襲う。

そして彼はその爆撃を全て受け止めたのだ。


それは道中バンさんに話しかけて来る兵士たちの声から察する事が出来た。


「我々はバン様の身を御守りしなければならない立場。それなのに我々が守られ、こんな怪我まで、申し訳ありません。」


「そんな事はない!お前達は俺の大事な同胞だ!顔を上げてくれ!」


「あの時1人飛び出す貴方様に私もお供すべきでした。」


「気にするな!誰も死ななかったのだ!それで良いだろ?」


「バン様が我々を見捨てない事は存じております。

ですが、防御を捨て全ての攻撃を自身に引き寄せるなどそんな危険な事もう二度としないで下さい。」


「あぁ。すまない。気を付けるよ。」


この様な声が歩いているだけでたくさん掛けられるのだ。

その一つ一つにバンさんは笑って応えて行く。


そうして歩いて行き、目的地に到着した。


「ルイ!着いたぞ!」


「はい。ってここ本陣のど真ん中ですよね?」


「ん?あぁ言ってなかったな。まぁ俺はあれだ!この軍の総大将みたいなもんだな!」


「はぁ、」


兵士たちの声や態度で薄々思っていた。

だがそんな人物が前線で人柱となり攻撃を一身に受け、瀕死になる状態からあり得ないと何度も思ったことでもあった。


そしてバンさんは目的地と言った人がぐらい入れそうな少し汚れたクリーム色のテントの中に入って行った。


僕もそれに続き、中に入るとそこには、

狼の顔をした男と蜥蜴の様な顔に翼を持つ人物、それとバンさんと同じ赤い宝石の様な物が顔に3個埋まっている男が言い争いをし4個埋まっている男がそれを仲裁している所だった。

そしてもう1人壁際に額から2本角の様な物が生えた男が腕を組み我関せずと立っている。



「なぜ旦那を1人で行かせた!」


「あの御方は止めても止まる御方では無い!それは知ってるだろ!」


「ルークス殿!貴殿の実力ならバン様にも着いていけたはずだ!」


「落ち着け。お前達!あの方は死なない!それに私には無理だ。全体の指揮を取るものがいなくなる。それで被害が出ればそれこそ彼の方に叱られる!」


「ではライベン。お前なら!」


と1人壁際に立つ男に視線が向かった。

声を掛けられた男が無言でこちらに顎をクイッとする。


「あ〜なんだ、心配かけたな。」


全員の視線が集まり気まずそうにバンさんが応えた。


すると安堵の表情を一瞬見せバンさんの状態を見て男達は慌てだす。


「すぐに回復魔術を!」


と額に3つ宝石を付けた男が手をかざすとバンさんの傷口に光の玉がフワフワと集まりだす。

すると見る見るうちに傷が癒えていった。


「すまんな」


「回復魔法じゃ傷は治せても体力や流れた血は戻らねぇからな。

これ飲んで休んでくれ旦那!」


狼の顔の男がポーションを飲ませて椅子にバンさんを座らせる。


「おう。悪いな。ウルド。それでルークス状況は?」


「はっ。万事恙無く。」


「例の物の場所は?」


「只今、陰族の者が調査中です。今夜には分かるでしょう。」


「あれだけは絶対に取り返さないといけないからな。」


バンさんは椅子に座るとルークスと呼ばれている宝石のような物が4つ埋め込まれた男と現状の確認を始めた。


人間軍側としてだが参戦していたのにこの戦争の発端や原因。

更には魔族領の住民達に関して全く情報のない僕には全くちんぷんかんぷんな会話が進んでいく。


そして話が終わろうという時に、


「では、このまま指揮は任せるぞ!ルークス!」


「はっ。それでバン様。先程からいるその人族は何でしょうか?」


「ん?あぁ。拾った。」


「拾った!?何してるんですか!」


「俺が責任持って面倒見る。」


「面倒見るって。食事の手配は誰がするのです?何かあった時に駆り出されるのは?」


なんか捨て犬を拾って来た子供と母親みたいな会話が始まったワン。


「だがこれは決定だ!弟子にすると約束したからな!」


「かしこまりまし」


「ちょっと待って下さい!師匠!」


今まで黙っていた額に角の生えた男が話に割って入ってきた。


「反対です!人族を領内に入れるだけでも危険です!まして弟子にするなど、」


「俺は大丈夫だと判断した!」


「ですが、」


「なら満足するまで監視していろ!」


「・・・」


まだ不満はありそうな顔で男が引き下がっていく。


「では、紹介する!新しく弟子にする事にしたルイだ!」


「ルイと申します。これから宜しくお願いします。」


それから他の面々も紹介してもらった。


1人目

狼人族のウルドさん。

ウルドさんはこの軍の領地グリージオ領の獣人達のボスだそうだ。


2人目

蜥蜴人族のイェルクさん。

イェルクさんはグリージオ領の飛行部隊隊長らしい。


3人目

宝石の様な物が3個埋まっている方が魔人族のヒッツェさん。

ヒッツェさんが現場で獣人、飛行部隊を除く魔族軍を動かす将らしい。


4人目

宝石の様な物が4個埋まっている方が魔人族のルークスさん。

ルークスさんがこの軍の頭脳で今回は総司令として参戦しているらしい。

曰く、総大将はピンチになると飛び出して行くので任せられないそうだ。


その総大将のバン=グリージオさんはそんな愚痴を軽く笑い飛ばしている。

そしてこの方総大将ってだけで無くグリージオ領という所の領主らしいのだ。

因みにバンさんも魔人族らしい。


最後に鬼人族のライベンさんだ。

この人はバンさんの弟子の1人で一番上の兄弟子となる方らしい。


歓迎はされていないがバンさんの顔を立てて邪険にはしない。

そんな感じでここにいる面々が軽く自己紹介してくれた。


そんな中、何処からとも無く声が割り込んで来た。


「失礼。話に区切りがついた所で報告させてもらう。」


急な声にギョッとして見るといつの間にか黒装束の男が立っていた。


「例の物は見つかった。勇者クリスの仲間の魔法使いの女が持っていた。」


「なるほど。その女は明日どこに配置されるか分かるか?」


「本日は敵左翼後方の魔法師団を率いていたので恐らくは明日も同じであろう。分かり次第また報告する。」


「頼む。」


男は頷き、部屋から退出して行った。

すると直ぐに明日の戦いの戦略が語られ始めた。


「では、明日の軍議を始める。ルークス。」


「はっ。では明日の作戦を伝える。

まず魔法師団による魔法攻撃をこれは目眩しなので今日よりも高威力で派手な攻撃が望ましい。いけるか?ヒッツェ。」


「問題ありません。」


「その間にイェルク達飛行部隊には敵左軍の上空に待機。魔法師団の攻撃が止み次第攻撃開始して下さい。」


「了解。」


「上に意識を集中させている間にウルド達地上部隊は精鋭部隊を結成し、敵左翼軍にぶつけて敵の物理戦闘部隊を突破し、敵魔法師団を叩いて下さい。」


「おう!」


「そして障壁が薄くなった所にヒッツェの最大火力の炎魔法を叩き込んで下さい。」


「かしこまりました。」


「おいおい!それじゃあ中にいる俺らの部隊も巻き込むぞ!」


「はい。なのでウルドの部隊と一緒にライベンにも突撃してもらいます。そこでライベンにはセーフティとして周りに結界を張らせますので合図があったら集まって下さい。」


「おう!頼んだぞ!ライベン!」


「あぁ」


「その後は陸上部隊と飛行部隊で殲滅そしてアレを奪還して下さい!」


「了解。」


「任せとけ!」


作戦が告げられ、細かな打ち合わせの後3人の部隊長達は自分の隊との打ち合わせの為に退出して行った。


「あの、バンさん。明日僕はどこに居たら良いでしょうか?」


「あぁ。流石に外に出せんか、明日はここでルークスと共にいろ。任せたぞルークス!」


「まぁそれしか無いでしょうね。1人にすることもできないし、貴方はピンチな戦場に飛び出すでしょうから。」


「分かってるじゃねか!」


「という事ですルイ明日は私の側を離れないで下さい。

1人で離れて殺されてもあなたの責任ですよ。」


「分かりました。」


「よろしい。では明日は戦い方について実践を見ながら教えて差し上げましょう。」


「よろしくお願いします!

でも良いんですか?人族の僕にそんな事教えて。」


「構いません。バンさんが貴方を弟子にすると決めたのでこれも私の仕事です。」



やっと僕も強くなれる。


その事が妙に嬉しく感じながらこの日は眠った。

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