3-22.【Side:???+???】ヘマやっちまったい
「もーっ! 大失敗しちゃったじゃんかよー!」
「ルナ、うるさい」
「だからって、どうしようっていうのよ! まっさか、こんなクソ頑丈な地下牢があるなんて、思ってなかったって」
「ん。それは同意。でも、もともとクラウスナー家は武闘派の一族。確かに、あってもおかしくはなかった」
「うううー。下見したときは、外側の警備も施錠も甘かったのに。サラも、そうだって言ったじゃない」
「否定はしない。でも、それ自体がわなだったのかも」
「わな?」
「侵入はできても、逃走できない仕組みになっていたのかな、って」
「ぐあーっ! 何じゃそりゃー……でも、確かにつじつまが合うなあ。急ぎすぎたかねえ」
「ん。姉様は、あらかじめ準備して、観察して、分析して、結論を出して、それから実行するんだ、って言ってた。それでも成功するかはわからないけど、最低でも逃げられる確率は上がる、って」
「そうね、姉御の言葉には間違いはないんだけど、ここんとこ手持ちも心細かったし」
「ルナがばらまきすぎたのが悪い」
「わーってるわよ、そんなこと! ううっ、事務室にはすんなり入れたし、あからさまな金庫には触らないで執務机だけを絞って調べたのに」
「出てきたのが、パーティーの招待状とか、そんなのばっかりで、役に立たなかった。謎の文字で書いたメモが気に掛かったけど」
「もうっ、あたいの嗅覚はそれなりのもんだと自負してたんだけどな」
「必死に探しすぎたのは、まずかった。ルナが探して、わたしが見張っておくべきだった」
「結果論だけど、そうよね。大して時間をかけたつもりもないのに、いつの間にか使用人が集まってきて、しかもあいつら、やたら強いでやんの」
「さすがは武闘派」
「忍び込んだ先を褒めてどーすんだよ! でもさあ、この待遇、いくらなんでも、ひどくね?」
「侵入者の立場で言う権利はないけど、両手両足を鎖というのは、ちょっと辛い」
「サラはまだいいよ! あたいなんか、両手と腰を、壁にベルトで固定だぞ! これ、何とかならんかね」
「ん……届かない……何とか外せないかと思うけど……これは、ちょっと……」
「ダメかー。サラの手先をもってすれば、この程度チョイチョイっていけるかと思ったのに」
「でも、あれだけ捜索して、何も見つけられなかったの、意外。何だか……」
「そっか! この貴族サマって、貧乏なのか! 外側だけ立派で、実はすっからかんとか! そっか、あたいたちの前に、もう先にお宝を盗ってった奴がいたのか」
「そんなわけない。多分」
「……なんだか、随分と楽しそうなお話をなさっておいでですわね」
「何だあ? ああ、アンタがここの貴族様のお嬢さんかい。何だかいい身なりのモン着やがってよう、その服を買うだけで、あたいたちが何人分のメシを食えるんだかねえ。へっ、何の苦労も知らないで、いいモン食って、いい思いして、明日の心配なんか、なーんもないんだろうね」
「ルナ、挑発するの、意味ない」
「いーや、この際だから、言っておきたいね。どうせ、明日なんかない身だしよ。あたいらみたいな下々のモンが、めったにお目にかかるモンじゃないしね。特に、位の高い貴族サマなんざ、お上に盾突かなければ、子供も孫も安泰だって、姉御も言ってたしよ。どうせ、働く奴からは税を取って、王様からも金をもらって、きれいな服着てオーッホッホッホッなんてやって、毎日毎日お茶でも飲んでるのが生きがいなんだろ。そんな奴から金を取ったところで、何が悪いってんだ」
「……」
「だいたいよ、お貴族様のお屋敷ってな、外側だけ守りをガッチリしてるだけで、こんなだまし討ちみたいなことはしねえよ。こんな、入れさせないんじゃなくて、入れさせて捕まえるなんて、根性の悪さがにじみ出てるじゃねえか」
「いや、捕まえることを目的としてるなら、情報を聞き出すのが狙いだと思う」
「……」
「チキショー、こんなところでくたばってちゃ、姉御に顔向けできねー! せっかく、世のため人のために頑張るって誓ったのによお、こんな貧乏貴族にとっ捕まっちまうって。こんなんじゃ、姉御の助けになんかなりゃしねえ」
「!」
「ふっ……そうですか。こちらもお聞きしたいことがありますので、明日、またうかがいますわ。ひとまずそこで、ごゆるりとお過ごしなさい」
「……へ? お、おい、ちょ、ちょっと待てよっ!」
「る、る、る、る……」
「る?」
「ルナー! 何てことするのよ! どうして、姉様のことを口にするのっ! このままだと、わたしたち」
「消される、ってか? はん、どうせ縛り首上等のことやってきたんだ、今さらジタバタするもんかい」
「そうじゃないの! これだけの地下牢があって、しかもきれいに整備されてる。それって、いつでも使えるってことよ。つまり、確保した侵入者を“料理”できる屋敷、ってわけ」
「料理?」
「平たくいえば、拷問による情報収集でしょうね。例えば、薬を飲まされて、知っていることを全部吐き出されて、本人は廃人にされて、とかかな……」
「お、おい! こら、サラ! 遠い目をするんじゃねえよ! おいったら!!」
「あああ、せめて、姉様のことは何も言わないように……でも、耐えられる自信ない……今のうちに、舌をかみ切る方がいいのかな……」
「おいっ! サラ! 戻ってこーい!」
「あーあ、正気を保っている間に、もう一度、姉様に頭をなでてもらいたかったな」
「こらあーっ!」
ここまできて新キャラが登場。3-6.末尾に前振りがありますが、出てきたお嬢様とはフリーデ、屋敷とはデリンジャー伯爵家王都屋敷です。




