表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/103

2-13.【Side:イザベラ】憂国少女は破滅回避への選択肢を探る

 姉上の動きが、さらに活発になってきている。いや、いささか不思議な動きを始めたようだ。


 最近は、何人かの若手官僚に、粉を掛けているらしい。こういうと失礼だが、人選は意外と悪くなく、それなりに将来を見据えていることはうかがえる。ただ、ここ数日は、それとは違うパターンみたい。


 有力な支援者が居るわけではないので、行動を起こすにせよ、起こした後の処理にせよ、その立場は脆弱ぜいじゃくで、不安定なものにならざるを得ない。


 そうはいっても、強力な支援者を付けてしまう、いや、支援を仰いでしまえば、その時点で、手先に堕するのが目に見えている。跳ね返せるだけの実績も、カリスマも、血筋も、何もないのだから。いや、そもそも、かいらいにしてもらえる、つまり“看板”になるだけの社会的価値が姉上にあるかといえば、厳しい。


 だからこそ、大物を味方に付けなかったのかもしれないが、せめて、有力貴族をニ家程度、引き込んでほしかったと思う。三家だと、調整が大変だから。


 つくづく、脇の甘いお方だ。


 さて、わたくしの役目はというと。


 このままでは、姉上の身が破滅するか、この国が崩壊するか。あるいは、その両方かもしれない。それなら、わたくしは、その両方を、防ぐことが仕事になるだろう。


 本来なら、戦略の調整を含めて相談したいところだけど、姉上との関係は、相変わらず断絶状態。いえ、それでなくとも、わたくしという人間は、姉上の脇に控えることができるものではない。


 時間的にも、例の愚劣なセレモニーに突入するのは避けられないし、気が滅入るが、現時点で方向転換は無理。


 それならば、第一弾として、その場をどうにかかき回してやるしかないか。


 もちろん、それを実行すると、王家は機能不全になって、事実上壊れる。わたくしは当主でも何でもないから、この国の王家に対して、忠誠を誓わなくてはいけない立場じゃないし、壊したところで非難されるいわれはない。むしろ、自分たちがまいた種について、責任をもって刈り取ってほしいぐらいだ。


 ただ、王家が滅ぶのは構わないけど、国が滅ぶのは、よろしくない。それも、内部からの自滅が契機とはいえ、直接的には、外部からの動きによって、そうなる可能性が高い。その結果は、地獄絵図だ。


 この国の土地、文化、伝統、景観、そして何より、今生きている人々が、根こそぎじゅうりんされるかもしれない。担税能力のある部分のみが残され、それ以外は完全に消し去られる可能性もある。


 わたしくは、この国を守りたい。王権なんか、王家なんかどうでもいい。まして、王族だの、王太子だの、いくらでも代わりは用意できる。でも、国の代わりは作れない。


 貴族、特に領主貴族にとっては、自分の特権さえ維持できれば、国という単位がどうなろうと、気にすることはないのだろう。せいぜい、自分たちが使う資源としての人間や土地等々を確保してくれるなら、別の国の下に入ったところで、痛くもかゆくもないのだから。


 でも、ここ王都に住んでいる人は、領主が治める領地という地域ではなく、王が治める国という地域に支配されている。この人たちは、国の下にあり、国が保護すべき対象なのだ。しかし、王家が崩壊することを考える人はあっても、“国”が崩壊することを念頭に置く人は、ほとんどいない。それこそが人を守り、そしてまた、人が作る、そういう存在なのに。


 確かに、国が存在する、国が権力を保有することで、人が不幸せになることも多いし、それは軽減できても、絶対に解消できないだろう。国境線を引いて、その内側だけに独自の世界を作るという行いが、道義的に正当化できるのか、それもわからない。わたくしには、哲学的な思索ができる頭脳はないから。


 でも、人を人として生きさせるための権力主体なしに社会を作るには、人間は、知恵と財産を作りすぎた。


 進化の果てに文明が分裂して退廃へと向かうのは、宿命なのかもしれないけど、それに抗する程度の権利は、人間にだってあるだろう。


 持つ者には持つ者なりの責務が発生するけど、それは、文明に触れてしまった人間という存在にも、当てはまるのかもしれない。人間は、生物界の貴族なんだろうから。


 だからこそ、そういう知恵と財産を伝えるためにも、わたくしは、この国を壊したくない、守りたい。


 この手が血にまみれようと、この体が泥にまみれようと、わたくしのルーツがどうあろうと、そんなことは関係ない。


 ただ、それに加えて、姉上の身の無事だけは、守りたい。ささやかな望みだと思う、それ以上は求めない。


 地獄へ堕ちるのは、わたくし一人で十分なのだから。

この娘さんは十五歳です、年齢は詐称していません。転生者などじゃなく、転生者とかから教えを受けたわけでもありません。この世界で生まれて初めて自我を持った、ごくごく普通の女の子です。……普通?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ