2-12.【Side:レオノーラ】被召喚者は意外と使える女だったわね
召喚したあの女は、あたしが思っていた以上の成果を、早々に出してくれた。
あたしも、婚約宣言を急ぐあまり、有力者をバックに付けることを怠っていた自覚はあった。
でも、ことここに至っては、悪名が高くなりすぎているから、実権を掌握するまでは、有力者とはコンタクトを取ることも困難だと思っていた。有力者であれば、たといどれだけ野心があっても、どれだけ地位が高くても、守るべきものが多いから、斬新かつ危険が高いことについて、当主が独断で動くことは絶対にないから。
王太子妃の地位を射止めたとしても、権力基盤が弱い状態が続けば、すぐに足元をすくわれるのはわかっていたから、王太子婚約者となってから、個別対応で味方を作っていこうと考えていたけれど、多分に希望的観測をもとにした計画だったのは否定できない。
でも、この女は、有力貴族を、すんなり巻き込んだ。地道ながら革新的な領地経営を行っている点で、一部の改革派官僚から注目されているビルジー侯爵家の長男。そして、彼と連携して領地支配を改善し、税収増一位となっているデリンジャー伯爵領の長女。当主本人でないとはいえ、大物だ。しかも、この二人は、婚約者の関係。こんな縁をつなげるのは、能力を超えた、何かしらの運のようなものを、彼女が持っているからだろう。
それに加えて、ビルジー侯爵家長男と、その婚約者であるデリンジャー伯爵家長女と顔合わせをして、今後について協議を始めたというのは、恐れ入る。そのきっかけが、ビルジー侯爵家長男に前世の記憶があって、その時に付き合っていたのが、あたしが召喚した女だったというのだから。どこに偶然が転がっているのか、わからない。
現時点では、王太子殿下との婚約に対して批判的なのがかなり気に掛かるけど、この女なら、あたしがこの選択をしたことを、理解してくれるはずだ。
今の政治状況で、革命による崩壊を伴わずに体制を変更するには、状況分析ができて適時行動ができる人材が、外部から中枢へに入り込むしかないと。
中枢に入り込むには、手続的にも道徳的にも正当とされる手法では、困難というだけでなく、その正当性がかえってかせになると。
そして、これを実現できるのは、あの力を持つ、あたししかいないと。
あたしは、それだけ、彼女を買っている。最強の味方になっていると思う。
婚約宣言まで手を貸してもらえれば、それで十分なのだし、あれだけの知恵者なら、そう負担にもならないだろう。
しかし、あたしの意図が、彼女に余りにも伝わっていない気がする。あたしが前面に出ている時の行動など、無視しているのだろうか。それなら、随分といい度胸だが。
いずれにせよ、相当な人材を確保できたのは間違いないと思う。不運のどん底のような日々だけど、ここだけは運に恵まれたんだろう。
一番警戒するのは、やっぱりイザベラね。また例によって、姉さんにはもったいないから、とか、因縁を付けてくるかも。おあいにく様、あなたに譲ることはできない。でも、余計な事でもめるのは避けたいから、やはり、殿下との婚約が正式に発表されるまでは、会わないようにしておくのが安全ね。




