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2-10.【Side:ギルベルト】召喚術をいろいろ調べて

 いったい何なんだろう、あの姉ちゃんは。


 最初に声を掛けたのは、単なる偶然だ。所在なく、特に用事も目的もなさそうに見えたから。理由はそれだけ。これといった特徴とか、魅力とか、そういうものを感じたわけじゃない。


 いや、ピンクの髪は目立つし、おっぱいでかいし、それでいて腰のくびれもいい格好だし、なんか、そそる姉ちゃんだったのは確かだけど。


 だけど、少し会話をしてみたら、とんでもない。


 話術が巧みというわけじゃないし、話の引き出し方も普通。ヘタではないにせよ、誘導尋問みたいなことができる人じゃなさそう。


 でも、少しの情報から、いろいろな可能性を引き出して、それを選別して、どうするか、どうすべきかを想像して。発想というより、対応がものすごく素早い。


 これは、兄上に引き合わせるべき人だな、と思ったよ。


 警戒されるかと思ったけど、すんなりついてきてくれたのは、ちょっと意外だった。貴族の世界なんて薄汚いものだし、彼女ならそれはわかっているだろう。何らかの魂胆があるんだろうとは思ったけど、それなら兄上が見破って、たたき出すはずだ。彼女に腕っ節がないことは、体形ですぐにわかったからね。


 それで、自己紹介で驚いたのは、今話題のあの令嬢だったこと。


 うわあ、とんでもないのを拾ってきちゃった、と思ったよ。後で兄上にゲンコツもらうことを覚悟した。


 それ以上に驚いたのは、彼女が、兄上と同じ、ニホンという場所で過ごした記憶がある、ということ。


 しかも、彼女の体はあくまでも男爵家令嬢のもので、肉体の中に二つの魂が入っているという。


 召喚は呪術の一種で、この世界とは全く異なる世界から、召喚者が指定した条件に該当する人間を呼び出す、というものらしい。らしい、というのは、それができる術者に求められる条件自体が明らかでない上、召喚術自体が門外不出なので、あまりにもわからないことが多いから。


 兄上には、いろいろ積もる話もあるみたいだけど、それでなくともこの不穏な情勢で、場合によっては強力な仲間になりうる人間が、中途半端な状態になっていることは、やはりまずいと思われたのだろう。


 ボクは兄上の命を受けて、呪術に関する資料を探すことになった。


 探すといっても、秘術について触れた書籍が、そうそうたくさんあるはずもない。


 少なくとも、召喚術士が、術の理論や方法を直接書いたものなど、術者本人やその一族でしか持ち得ない。いや、そもそも、秘術であれば口伝が基本だろうし、文字の記録を残すかどうかも怪しい。


 でも、召喚術を行った後の様子について、それを見た第三者や、被召喚者と話した第三者や、被召喚者本人が記録したものなら、あるかもしれない。


 ひとまず、それらしき書物を出して、片っ端から調べていくけど、流言のもとにさえならない、勝手な妄想程度の記述ばかりが続き、いささか気がめいる。


 それでも、わかったことは、いくつかあった。


 これに続いて、召喚術以外の、呪術に関する資料を探す。これについては、いくつかのものが出てきた。


 不思議なことに、この呪術を使える、あの呪術を使える、という具合に、術士は分野ごとにばらけているのではないようで、強力な術士は各呪術を高い水準で使い、非力な術士は各呪術を低い水準でしか使えない、ということらしい。原理はさっぱりわからないが、術士になれる条件自体はごく単純で、特に何が強い、というわけではないようだ。


 つまり、召喚術のような高度の呪術が使えるなら、他の呪術も使える可能性が高いという。


 そうすると、レオノーラ嬢は、他にもいろいろな呪術を行使できる、と見ていいのかな


 それとは別に、気になったのは、調べた結果を報告した時の、兄上の顔だ。


 いつも通りの、あまり表情をうかがわせない顔が、ボクの話を聞いた途端に、顔色が青を通り越して真っ白になり、ガタガタ震えだした。


 何だか、思い詰めているような、暗い表情。


 あんな顔を見たのは、初めてだと思う。


 義姉上に聞いてみたところ、気分が落ち着いたら、兄上から話してもらえると思う、と言われたけど、気になるな。

レオノーラはピンク髪でした。婚約破棄ヒドインの典型ですね。

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