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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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当主

「挙動不審、前だけ向いて歩きなさい」


 昨晩泊まったホテルとはまた違う高級感の漂う邸内で居心地の悪い僕に、先生は言う。


 所々非戦闘員のような召使いらしき人物らがいるが、先生の歩みを止めようとするものはいなかった。

 それは、先生の戦力しかり、功績しかり、己が先生を超えられるものが何一つないと知っているからだろう。

 僕はその後ろを、虎の威を藉る狐の如く進む。


 先生とポールさんと共に歩いているからか僕まで恐ろしい物のような視線を向けられている気もするが、多分自意識過剰だ。


 しばらく歩き、一つ壁のように大きな襖の前。

 先生は杖でそれを突く。

 すると、焦って開けたかのような速度で、襖が開く。


「これはこれは、豪華な顔ぶれじゃて」


 そう言う、襖の奥の部屋で鎮座していた男。

 男は悪代官のイメージにぴったりな、小太りした狸のような見た目をしていた。

 恐らく奴がポールさんから事前に聞いていた柏崎家当主である、柏崎宜嗣(かしわざきのりつぐ )


 ポールさんは懐から銃を取り出し、銃口を宜嗣に向けて言う。


「柏崎景について話してもらおうか」


 突入前のふざけた様子ではなく、一切の冗談を消したポールさんの声を、僕は初めて聞いた。


 それに対して、宜嗣は不敵な笑みを浮かべ言う。


「奴のことを知りたいか、教えんよ。口に出したくもない」


 瞬間、ポールさんは発砲。

 それと同時に宜嗣は指を銃口へ向け、何かしらの術を行使した。

 すると、その術に当たった銃弾は空中で真っ二つに。

 宜嗣には当たらず終わる。


 そして今日、僕は一切の油断を絶っている。

 当然――銃弾を斬り、なお消えぬ宜嗣の妖力を見過ごしはせずに、それ目掛けて刃を振るう。


「飛斬……その術でその程度とは、衰えたな」


 ポールさんが言うと、宜嗣は顔を歪めて小刻みに震えていた。

 漫画的表現をするならば、ぐぬぬとでも書き加えたくなる。


「さて、話してもらおうか。知ってるんだろ?」


 そう言って、銃口を再度宜嗣に向けるポールさんの手を、先生が下げる。


「先生、何を………」


「見とれ」


 尋ねる僕を一言で流して、先生は宜嗣の目の前まで行く。


「喋れ。さもなくばこの家、三毛塚のようにするぞ」


 瞬間、宜嗣の表情はより険しいものとなり、さっきまでの威勢はなかったかのように。

 これではただの小太りした怯える中年だ。


 先生、恐ろしや。

百話まであと三話!

結局邸内で宗介あんま役立たんな

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