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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
94/164

正気

PV5000突破!

ありがとうございます!

 部屋が、広いなんてものじゃない。


 ポールさんの会社から車で移動して、都内のホテル。

 ロビーには華やかな飾り付けが決して邪魔にならないように繊細に、緻密な計算の上で飾り付けられている。

 その飾り付けは屋根から吊るされてロビー中を照らしているシャンデリアにまで施されており、どこに目を向けても埃一つ見当たらないような、美しさにとことん妥協を許さない様子だった。


 本来僕がそんなホテルに泊まれるだけでも贅沢に過ぎるのだが、ポールさんのもてなしはそれだけでは終わらず、部屋までもがスペシャルだった。

 なんと最上階のスウィートルーム。


 部屋に入ってすぐにロビー同様美しい飾り付け。


 風呂は当然のように露天風呂付きで、そこからの景色は大都会を一望出来る絶景だ。

 ベッドルームも正面の壁は窓になっており、そこからの眺めは当然のこと、朝はかつてない程間近の朝日を浴びることだろうと容易に想像出来た。


 リビングには大きなテレビやグランドピアノ、絵画などがあり、それらにもある設備を見て回るだけで一日使い切りそうだ。


 ゆっくりこの部屋を満喫したいところだが、明日のため今日はやるべきことだけを成す。

 露天風呂に浸かりながら右腕を軽く動かしてみると、包帯を巻く以前より断然動かしやすい。


 また、包帯の表面に書かれている模様から妖力を感じることから、これは爆札などのような札同様、準具形術式だということがわかる。


 札以外にも準具形術式の物があったのかと少し驚きながら、ホテルに来る前先生に言われた右腕は極力濡らしたりしないようにとの言いつけを守りながら、風呂から出る。


 服を着替え、リビングへと向かうと、そこには一人見覚えのある幼女が。


「許してあげるから、端蔵を探して欲しい!」


 そう、幼女は言う。

 ゴスロリ金髪の、以前端蔵の元にいたシェリー・ストゥルルソンは言うのだ。


「えっと、なんでここに? てゆうか許すって、僕が何をしたっていうんだ」


 尋ねると、シェリーは頰を膨らませて言う。


「忘れたの? あなた私のおでこに石ぶつけたでしょ! 私怒ってるんだから」


 まあ、敵同士で戦って、優しさで気絶で済ませたのを怒り続けているだなんて、子供らしいといえば子供らしいが、恐ろしくもある。

 端蔵の元にいたということは多少戦闘経験もあるだろうに、未だこの無邪気さを保っていられるのは、正気の沙汰ではない。


 ただでさえ奴は、人を平気で殺す。

 今の状態の僕は端蔵に三度しか会っていないが、その内二度奴は人を殺している。

 更にそのうち一人は仲間だ。


 そんな端蔵の作った環境で暮らしていて、こんな子供が正気を保つのは、最早正気ではないのだ。


「私おでこのこと許してあげてもいいと思うの、でも代わりに端蔵を一緒に探してよ!」


 シェリーはそう言うが、端蔵はもう死んでいる。

 いや、この言い方は良くない、責任から逃れている。

 端蔵は、もう僕が殺しているのだ。


 彼女は子供だが、端蔵の仲間。

 この残酷な事実を伝えなければならない。

 この責任は、逃れられないのだ。


 僕はそれを伝えると、シェリーは表情ひとつ変えずに、言うのだ。


「うん、知ってるよ!」


 そう、当然のように言うのだ。

 やはり、どこか狂っているのだ。


 人を殺した罪悪感が薄れて、消えつつある僕のように、彼女も狂っているのだ。


百話達成まであと六話!

PV5000も突破したし、幸先がいい!

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