名声の王
「先生がなんでここに」
「おんしと荒木寺の治療と柏崎家への面会の手伝い。その最適解が儂よ」
確かに、先生ならば一人で全ての条件を達成できる。
一人で全て熟すポテンシャルを持つ先生も凄いが、敵が柏崎家だと気づいて直ぐに先生を呼んだポールさんの判断力も流石だ。
「どれ、右腕を見せてみなさい」
言って、先生は僕の右腕側へと回り込む。
「これは酷い。芯まで焼かれとるな」
先生はミアさんに言って自分のキャリーバッグを持ってこさせ、中から一つ瓶に詰まった液体を取り出す。
「この薬は少々痛むが効く。耐えなさい」
そう言って先生が僕の腕に薬を掛けた瞬間、酷い痛みが襲う。
それと同時に、傷口からは赤い煙。
「これは、中々ッ」
「龍傷、龍の術は少々他とは違いな、残る」
「残る? 一体それは」
「通常、術で攻撃したとして、妖力が原因でその後傷が酷くなることはあり得ない。術の効果などは別としてだがの。しかし龍の妖力は他の人間や妖とは少し仕組みが違い、後にも傷が広がり続ける」
「それは、中々えげつない」
煙が止むと、先生は僕の腕にキツく包帯を巻きつける。
「これで明日にはマシになっておる筈。攻撃を受けるのはともかく、羽団扇を振るう程度ならば可能じゃ」
「さて、治療も済んだところで明日の話をしよう」
ポールさんが言った。
「まず、門番は屋比久さんの存在で黙るだろう。中に一族の末端の奴らがいたとしても、同じ方法で黙らせられる」
中々先生の存在に頼り切った作戦だ。
正面突破というやつだ。
「次に当主だが、最悪どんぱちやらかすことになるから、常警戒体制が必要だ。死角から護衛が飛び出す可能性があるから、目に見えない位置の妖力は常に探り続けた方がいい。少し骨が折れるかも知れないが、頼んだよ」
ポールさんが言い終えた頃、僕の口から欠伸が漏れる。
「今日はボディーガード業のあとに己龍家と龍と謎の男との戦いだ。疲れただろうし話はこれで終わりにしよう。今日は昨日よりいい部屋を用意してあるから、ミアに案内してもらってくれ」
「すいません、話の途中に」
「いや、もう終わる予定だったし気にしないでくれ。僕も今日は疲れた。明日のために、今日は休むとしよう」
言って、ポールさんは部屋から出る。
それに続き先生も部屋から出て、残りは僕だけとなると、ミアさんが僕の右腕を気遣って羽団扇を持ってくれる。
そのままミアさんに部屋まで案内してもらう。
ポールさんはいい部屋を用意したと言っていたので、楽しみだ。
それにしても、今日は疲れた。
百話まであと七話!
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