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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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柏崎家

「落ち着いたかい? 大変だったね」


 ポールさんの会社の一室。

 僕の座る席の正面にある席にポールさんは座り、ミアさんの入れた紅茶を飲む。


「いえ、失敗ばかりでしたしすいません」


「謝らなくていい。確かに龍が世間に見つかったのは不味かったが、僕がなんとか隠蔽してみせよう」


 ポールさんは優しい笑みを浮かべ、言った。


「それより、君の話に出た男、柏崎景についてだ」


 早速、本題を切り出された。


「そいつは、九尾苑を殺した奴なんだね」


「ええ、ほぼ間違いなく。掌で触れた対処が死ぬ情報が一致しましたし、奴でしょう」


「そうか、見つかるのが早かったな」


 そう言うポールさんは拳を固め、静かに怒っていた。


「しかし柏崎家か、また厄介な敵だな」


「何か問題のある家なんですか? それとも知り合いとか」


 尋ねると、ポールさんは違うんだと否定してから言う。


「君、御三家を知っているかな?」


「ええ、沙耶がたしか樋口家の一人娘です。一度荷物を取りに行っただけですが、家に行ったこともありますよ」


「なら話が早い。柏崎家というのはね、その御三家の一つなのさ」


 それはまた、厄介すぎるな。

 九尾苑さんに聞いたことがあるが、御三家というのは術師界隈で権力が最もある三つの家系で、世間には余り広まっていない術師だというのにも関わらず、その権力は国をも動かすという話だ。


「それってあいつを殺したら不味くありません?」


「ああ、だから明日会いに行こうと思うんだ」


「……………」


「会いに行こうと思うんだ」


「……………」


「会いに行こうと思うんだ」


「え、そんな気軽に会えるんですか?」


 しばらく思考停止してから、思わず尋ねた。


「まあ、僕だけじゃ無理だろうね。殴り込んでもいいが後々面倒だし、権力や金で勝ち目はないから、僕は名声を使う」


 直後、ミアさんが部屋に入るや否や頭を下げて言う。


「お客様がご到着なされました。隣室でお待ちです」


「来たようだ。行こうか」


 言って、ポールさんは立ち上がる。


「必要無い。おんしらがあまりにも遅いでな、儂自ら来てやったわ」


 そう言って室外から現れたのは、僕に詠唱術式と怪現を教えてくれた、自然と敬意を払いたくなるようなオーラを放つ老人。


「せ、先生!」


 屋比久童磨、その人だったのだ。

柏崎って、近所にそんな名前の人おるんよね

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