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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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致命傷

 思い立ったら即行動! とはならず、荒木寺はタイミングを待つ。


 思いついた策を実行に移す絶好のタイミングを、待っていた。


 荒木寺はひたすら離れた位置からの杭と爆札の攻撃を繰り返し、源氏はそれを躱したり受けたり。


 源氏は機動力を失わぬよう足の負傷だけは絶対に避けているが、まずその位置を荒木寺が狙うことはなかった。


「随分とボロ雑巾っぽくなったじゃねえか。見間違えたぜ」


「そっちこそ、その足でよくまあ走れるな」


 言葉を交わしながら、互いに己の策実行への道筋を探る。


 宙を蹴って加速してからの荒木寺の蹴りを源氏は回避し、自分と荒木寺の背後の空間を入れ替える。


「見え見えだぜ」


 言って、荒木寺は杭を背後の源氏に突き刺す。


 その瞬間だった。


 源氏が足を除く全身の傷を荒木寺と入れ替えたのは。


 そして、荒木寺が自分の胸を直接手で突き抜いて、心臓を潰したのも。


「てめえの負けだ。潔く死んでろ」


 そう、心臓が潰れた源氏に荒木寺は言う。


「あとは任せたぞ、宗介」


 そう独り言を溢して、荒木寺も倒れる。

 心臓は源氏と状態が入れ替わったとはいえ、全身の傷が大きすぎたのだ。


 荒木寺は龍のことを宗介に任せて、しばらくの眠りにつく。

 これ以降、荒木寺が宗介を小僧と呼ぶことはなかった。




 ****




 あれは、荒木寺さんか?

 もう一人近くに倒れている男がいるが、鉄心と同じ格好をしている。


 奴の仲間か? 

 だとしたら荒木寺さんは龍と戦う僕を何故か邪魔しようとする奴らを足止めに来てくれたってところか。


 荒木寺さんはまだ息がありそうだ。

 近くにミアさん達の妖力を感じるから、恐らく治療目的の筈だし大丈夫だろう。

 もう一人の男は、完全に死んでるな。


「さて、僕も僕の仕事を終わらせなきゃな」


 しかし、どうしたものか。

 炎の玉はどうにかなったが、龍の鱗は相変わらず硬い。


 怪現を使えばまあ消滅させられるとは思うが、何しろここは上空。

 怪現なんてしてしまえば足場を作る妖力も無くなって即落下死だ。


 羽団扇ならば斬れるらしいが、まずあの巨体だ。

 近づくだけで危険。

 難易度が高すぎる。


 いくら身体能力を妖力で強化されてるとはいえ、あの体で押し潰されたら、まあ当然だが死ぬ。


「よし、決めた」


 策とも言えないような策。

 しかし脳裏に一つ、とある昔話が浮かんだ。

 やってみる価値はあるだろう。


 思い立ったが吉、即行動だ。


 作戦会議で聞いた話だと、たしか龍は自分の名が入った術を無駄で使われるのが腹立たしい筈。


「なら簡単だな。手龍!」


 瞬間、左の掌か小さな龍。

 僕はそれの尾に捕まり、宙を移動する。


 すると、術の発動に気づいた龍は大層御立腹のようで、龍の眼前に躍り出た僕を丸呑みにしようとする。


 これで良い。

 もしかしたら、龍は頭が良くないのかもしれないな。

今日誕生日なので、プレゼントに感想ください!

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