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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
一章   古本屋篇
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八冊目

最近サボりました

ごめんなさい自分


 意識が戻る。

 どうやら鏡に写った瞬間僕は気を失い、そのときの夢と言う方法で記憶を戻したのだろう。


 月はあまり動いていないので時間はそう経っていないようだ。


 この破片では両親の声、自分の名前が思い出せた。

 両親の顔は何故かモヤがかかっており見えなかったが別の破片に写れば思い出せるのだろうか。


「宗介」


 一言自分の名を呟く。

 名字は分からなかったが宗介という名だけでも思い出せて少し安心した。


 やはり自分の名前が確かに分かると言うのは心が落ち着く。


 それになんだろう、この感覚は。

 戻った記憶の自分の姿を見た限り記憶が無くなってからそう時期は経っていないはずだ。

 しかし僕は今懐かしさを感じている。

 不思議な感じだ。


 ふと欠伸がでる。

 そういえば未だ窓の外の景色は暗い。

 僕は自分の名前が分かった感動をしっかりと握りしめて布団に横になる。


 明日は九尾苑さんに名前を伝えなければ。

 僕はそう思いながら深い眠りに落ちた。




 ****




 実は僕にはちょっとした特技がある。

 それは自分がどれ程の時間寝ていたか分かるという物だ。


 例えば今は三時間半ほど寝ていた。

 これは何か理由があるわけではない唯の勘なのだが今まで一度も外した事がない。


 僕は布団を畳むと、借りた部屋から、かちゃかちゃと物音のする昨晩食事をした部屋に向かう。


「お早う、まだ五時半だけど眠くないのかい」


 そう言ったのは恐らく僕よりも早く起きていたであろう九尾苑さんだった。


「おはようございます、僕って基本四時には起きるのでいつもより寝すぎたぐらいですよ」


「四時からかい、そんな早起きして何をするってんだ、そんな時間だと空いてる店はコンビニくらいだろうに」


「ジョギングに出るんですよ、僕結構太りやすいので」


「なるほど、そりゃあ納得のいく理由だ」


 九尾苑さんはそう言うと棚から粉末茶を取り出してお湯を注ぐ。


 一口啜ると、九尾苑さんは椅子に座り僕も椅子に座るようにと手で促す。


「さて、昨日話だ名前の件だ、僕がつけるかどうか、返事は決まったかい」


 僕が大丈夫ですと言うと九尾苑さんはニヤリと笑う。


「鏡を使ったんだね、教えちゃくれないかい、君の名前を」


「僕の名前は宗介と言います、名字はまだ思い出せませんでした」


 言うと僕は一度椅子から立ち上がり深く頭を下げる。


「どうかこれから僕の記憶が戻るまでよろしくお願いします」


「いいね、主人公の自己紹介っぽいよ」


 そう言うと九尾苑さんは再びお茶を啜る。


「宗介、これからよろしく」

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