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日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
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思考

 爆発音が幾つも鳴り続け、空気が破裂するような音が続くように鳴る。


 空気が破裂するような音の正体は源氏の術。

 空間が入れ替わる際になる音だ。


 荒木寺は石の杭の投擲と爆発を中心に攻め、源氏はそれを回避し続ける。

 互いに決定打に欠けるが、互いに妖力は減り続けていた。


 宙を蹴り、荒木寺は源氏の背後へと回り込む。


「薄氷」


 荒木寺がそう言った瞬間、源氏の両足は薄い氷、術名通り薄氷によって膝下まで包まれる。


「まさか、この程度で止まるなんて思っちゃいねえよな?」


 言う源氏に、荒木寺は歯を剥き出して笑みを見せる。


「当然、終わらねえよ。|氷柱、八連槍《つらら はちれんそう 》!」


 瞬間、足を包む氷の内側には氷柱が八本ずつ。

 全てが源氏の足を貫いた。


「傷口は凍って血液は漏れねえが、ゆっくりと体内を凍らせる。チンタラやってると、死ぬぞ」


 荒木寺は言う。

 すると、突然源氏はつまらなそうな表情を浮かべる。


「どした、死ぬのが怖くなったか」


「いや、ちげえよ。ただ、この戦いがそろそろ終わると思うと、少しつまんねえだけだ」


 瞬間、は宙の足場からビルの屋上へと移動。

 そして足に妖力を込め、言うのだ。


「怪現、傷心我転( しょうしんがてん)


 その直後だった、荒木寺の足に、片足四つずつ穴が空いたのは。


「て、てめえ。何しやがった」


「言うわけねえだろ。話したがり屋じゃああるめえしよ」


「ちげえねえな」


 言って、荒木寺は石の杭を三本飛ばす。


 内二本は爆札付きで、その両方の爆発が直撃。

 爆札の付いていない一本は、源氏が眼前で掴んでいた。


「返すぜ」


 源氏は杭を槍投げのように投擲。

 荒木寺が回避しようとした瞬間、源氏のすぐ側の空間と荒木寺のいる空間が入れ替わる。


 行き着く間も無く源氏は荒木寺の腹を狙って蹴るが、石礫を瞬時に杭へと変えて防御する。


「腹立つだろ、これ。俺はやられたことねえから知らねえが、戦った奴らは皆苛立ってた」


 源氏は気分良さげにいう。

 先の爆発で負傷はしているが、気にもしていない。


 何故か、簡単だ。

 怪現しているから。

 それだけだ。


 源氏の怪現は空間ではなく入れ替えることが本命。

 さっきから使う空間入れ替えは、源氏がそれを勘違いさせるために使う常套手段だ。


 そして、荒木寺も薄々そのことを分かりつつあった。

 その上で、足の傷のこともだ。


 荒木寺はこう考える。

 この男の怪現は特殊なタイプなのではないか。

 そして、通常怪現とは一箇所に妖力の全てを纏わせるが、この男はその妖力の場所を移動させて、その場所の傷を相手の同じ箇所の傷の状態と入れ替えているのではないかと。


 その上で相手の策を探る。

 まず荒木寺が思いついたのはちまちまと傷を入れ替えていくというもの。

 これはいつか入れ替える箇所がなくなり、互いに傷の状態が酷いまま入れ替わるなんて場合も出るので即却下だ。


 自分に致命傷を与えて、直後に傷を入れ替えて自分を殺すつもりかとも思ったが、それも却下だ。

 やるならもうやっているだろう。

 何か条件があるのか度胸がないだけかは分からないが、今はそれをやらないだけ戦いようがある。


 荒木寺は考える。

 決して戦う手は止めず、考え続ける。


 思考し、熟考し、考察し。


 その末に閃く。

 源氏の狙いと、それに対する自分の取れる対処法を、思いつく。

ベテランの戦い見るの楽しいよね。




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