表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日暮れ古本屋  作者: 楠木静梨
二章   龍篇
87/164

連鎖

「流石龍。内側まで強いとは」


 正直参った。

 詠唱術式では多少ダメージが入ったが、連発出来るような妖力の消費量じゃない。


 そんなことを考えていると、龍は先程同様高密度の妖力で玉を作り出す。


 天譴で暴発させるのも妖力的に後三度で限界だし、他の術で僕の妖力を混ぜたとしても量が少なすぎて悪戯に消費するだけだろう。


 とりあえず、この玉はさっきと同じ方法で対処して、次を考えるか。


「彼方、若輩王の貫禄が、四つの礎となり世を砕く。蠅の君臨は世を潰し、龍の鱗を………!」


 詠唱中、龍がさっきよりも短い時間で、妖力を集め終える。

 そして、その妖力は幾つもの炎の玉として、地上に放たれた。

 放置すれば地上への被害が莫大だ。


「火吹きの左腕、火走り五連!」


 即座に五つの炎の玉に火走りを当てて爆発させるが、命中した頃には他の炎の玉は射程範囲外に出てしまっていた。


 少し危険だが、行くしかない。


 僕は炎の玉目掛けて宙の妖力を蹴る。

 上空の冷たい空気を全身に浴びながら、空を切るように突き進む。


 さっきの火走りで衝撃を与えると危険なことは分かった。

 ここは、安全策だ。


 世界箱。

 ポールさんから借りた妖具だ。

 炎に世界箱の宝石で触れ、入れる。

 簡単な作業だが、どの程度の衝撃で爆発するか分からないため手で触れるのはなるべく避けたい。


 先ずは一番違い炎の玉を入れる。

 そこから更に宙で足場を作ってそれを蹴り、別の炎の玉へと移動する。


 一つ、また一つと入れて行き、後三つ。


 地上に近く、人も居る。

 早めに対処しなければ間に合わないが、雑にすると爆発の可能性があるため、中々精神を削る。


 足場を作り蹴って加速し、先ず一つ。

 次の炎の玉に手を伸ばした瞬間だった。


 ほんの些細な、普段なら気にしない程度の風。

 それに乗った落ち葉が、炎の玉に当たったのだ。


 瞬間、妖術を使えない人たちへの被害の次に恐れた事態。


 ほぼ触れる寸前での、ゼロ距離での爆発だ。


 羽団扇から世界箱へと持ち替えていた右腕は焼け焦げ、使い物にならない。


 妖装で守ればある程度負傷を抑えられたが、優先するべきは腕ではなく世界箱だった。

 おかげで世界箱には傷一つついていないが、しかしこの事態は不味い。

 負傷がではない。

 最後の炎の玉が地面に当たりそうなのだ。


 僕は火吹きの左腕を消して、世界箱を左手に持ち帰え、何とか手を伸ばす。


 とどかない。

 今から宙に足場を作っても遅い。

 ほんの少しの距離。

 世界箱の形が少し大きければ届いていた。

 ちょっとした風からの連鎖で、何も知らぬ人が死ぬ。


 僕の実力不足だということは分かっている。

 しかし、どうしても思ってしまうのだ。

 例えば、世界箱の形が違ったとしたらと。


 充分な長さと、操作性があれば———。


 例えば、杖のような。


 世界箱が輝いたのは、そう思うと同時だった。

 僕も忘れていた現象が。

 奇跡とでも称したくなるような現象が起きたのは。

右腕、焼け焦げる。

左腕、火を纏う。


左腕は無傷なのに、何故ぇ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ