隠し球
投稿遅れました、申し訳ない。
空を覆い尽くす程の体躯を持つ龍。
それが突然空に現れたものだから、地上は大パニックだ。
不味い。
不味すぎる。
地上では大量のフラッシュが煌めいており、顔までは写っていなくても僕の姿は撮られている筈だ。
明日には空飛ぶ人型UMAとしてテレビに出演が決まっているだろう。
まあ、決まったことは仕方がない。
先ずは残りの札を貼って龍と僕の姿を消す。
「さて、こっちが本番だ」
地上の人々に見つかったことも、鉄心のことも忘れて、龍だけに集中する。
とりあえず、羽団扇から雷を飛ばしてみる。
鳴り響く轟音と共に、目を瞑りたくなるような閃光。
直撃した鱗の表面は若干焦げてはいるが、内側に衝撃が届いている様子はない。
羽団扇じゃダメ。
「なら、次はデカイのだ」
一つ大きく息を吸い、唱える。
「雷鳴轟くは我が名の下。巨石を砕くは風。大海を裂くは火。天貫くは我が雷と知れ! 攻術詠唱術式、天撃!」
先程を遥かに超える威力。
天より降る青の閃光は、龍が降臨しているようにも見える。
しかし、実際は唯の攻撃だ。
数秒間閃光が龍を焼いた後、爆発。
龍は咆哮で大気を震わせながら、大きな口を開けて、その中に小さな玉が一つ現れる。
小さなといってもそれは龍と比較してで、実際は大人一人分ぐらいはある。
玉は距離の離れた僕からでも分かるような高密度の妖力の塊で、例えばアレを炎にして術を使えば、僕の怪現である炎帝と同じぐらいの高温が生み出されるだろう。
地上に放たれでもしたら大惨事どころじゃ済まない。
僕は跳んだ。
大きく開いた龍の口の真上へと。
「彼方、若輩王の貫禄が、四つの礎となり世を砕く。蠅の君臨は世を潰し、龍の鱗を環とする」
妖力を貯めて、本日二つ目の隠し球を披露する。
「攻術詠唱術式、天譴!」
瞬間、僕の妖力で構成されて行く四本の柱。
炎柱よりも硬く、重い。
僕の身長二つ分の長さのあるその柱を、全て玉に向かい飛ばす。
自分の妖力の塊である玉に、僕の妖力で構成された柱が混ざり、操作出来なくなった妖力。
操作する者を失った妖力がどうなるのか、行き場を失った妖力がどうなるのか。
さっきまでの動きを繰り返し、正しい流れを失う。
そしてその結果、誤った流れを続けて、術は術の形を成さずに暴発する。
大爆発だ。
龍の口内で爆発が起きた龍は、先程以上にダメージを受けてはいるが、死にはしていない。
寧ろ、さっきより怒って迫力が増した。
一撃が炎帝並みで、生命力も底なし。
僕は戦闘狂なんかではないが、この戦いは唆る。
龍が不憫でならん